地元銘菓に育ったフルーティな山ぶどう羊羹
有限会社松屋
代表取締役 福原 昇 氏
山ぶどう果汁と羊羹を 掛け合わせて誕生
津南町の商店街で、和洋菓子やパン、餅などの製造販売を手がける「津南菓子処 松屋」。多彩な商品群があるなか、店の看板商品として人気になっているのが「山ぶどう羊羹」だ。北海道産小豆を練り上げた餡に、山ぶどう果汁と干しブドウを加えて仕上げた羊羹は、ぶどうの香りと甘酸っぱさが餡と溶け合い、いわゆる羊羹とは全く異なるおいしさ。福原社長は「とてもフルーティな味わいで、見た目とのギャップに皆さん驚かれますね。そこが人気になっていった理由だと思います」と話す。
山ぶどう羊羹が誕生したのは平成9年。作ったのは福原社長の父であり、創業者の福原松治会長だ。「当時、清津峡渓谷トンネルの開通に合わせて、特産品を使ったお土産を作りたいと思っていたそうです。ある日、町内の方が、自分で採って絞った山ぶどうの果汁を一升瓶に入れて持ってきてくださった。父は常に柔軟な発想力の持ち主なのですが、ふと“羊羹に入れてみよう”と思いついたそうです」。
袋タイプのパッケージの「山ぶどう羊羹」。地元の人が他所への手土産に持っていくケースも多く、GW、お盆、年末年始にはよく売れるという。
パッケージとサイズを増やし より買い求めやすい展開に
その後、問屋から山ぶどうの原液を入手できることも分かり、製品化に成功。年々、地元で人気が定着していく中、大きな転機が訪れたのが平成20年だった。ひとつは第25回全国菓子博覧会「姫路菓子博2008」に山ぶどう羊羹を出品し、全菓博栄誉大賞を受賞したこと。「受賞直後から全国各地から問い合わせや注文があり、次々取引が決まっていきました。その反応の大きさには驚きました」。
さらに、同年、福原会長はNICOの「売れる商品づくりサポート会議」に参加。そこでテーマになったのがパッケージだった。「書家でもある母が書いた文字と山ぶどうの画をデザインした化粧箱を使っていましたが、これからは袋もいいと思う、とのアドバイスをいただきました」。
そこで箱とは別に、カジュアルな雰囲気のデザインで袋のパッケージを制作。さらに、サイズの小さいものを用意した方がより売れる、との指摘もあり、新たに小サイズとハーフサイズを作った。「いま一番売れているのは袋の小サイズです。自分たちが気付かない部分を指摘していただく機会は、とても参考になりました」。
「山ぶどう羊羹の小豆や果汁も良いものを選んでいます。
全ての商品において良い材料を使っておいしいものを作ることが、創業時からの方針です」と語る福原社長。
より一層手を抜かず おいしい商品を届ける
味のおいしさに加え、他所には無い商品であること、山ぶどうが山深い津南町という地域イメージに合っていること、そして買い求めやすいサイズやパッケージであることといった、売れるポイントがしっかり押さえられている山ぶどう羊羹。地域の代表銘菓へと成長していった背景がそこに見えてくる。
現在、地元の観光物産店や新潟ふるさと村、東京のネスパスなどで販売されているほか、百貨店やスーパーでの新潟物産展などにも引き合いが多い。また、「大地の芸術祭」の公認商品に選ばれ、クリエイターがデザインしたパッケージでの販売も行われている。
「当店の広告塔的存在でもあるので、ますます手を抜かず、いい商品を作っていきたいと思っています」と語る福原社長。真摯に菓子づくりに取り組む同社の思いを反映する山ぶどう羊羹は、今後もさらに多くの人に愛されていくに違いない。
ベーカリーとしての人気も高い松屋。店内にはバラエティに富んだお菓子やパンが並び、地元客のさまざまなニーズに応えている。
企業情報
有限会社松屋
〒949-8201 津南町大字下船渡丁2222
TEL.025-765-2053 FAX.025-765-2594
URL http://tsunan-matsuya.co.jp