新潟の木と独自の曲げ加工技術で
モダンな木製プロダクトを実現
これまでなかった無垢材の小物を曲げる技術を開発し、名刺入れや万年筆ケース、メガネケースなどのオリジナル商品を生み出してきたストーリオ。「自社の武器を持ちたい」と、技術とデザイン力の向上を目指し続ける木村社長に話を伺った。
「TANZAKU Lamp」はIDS大賞をはじめ、デザインのプロの方々に評価を受けたのが嬉しい。夢はMoMA(ニューヨーク近代美術館)のパーマネントコレクションに選ばれるようなプロダクトを作ることです」。
他では真似ができない曲げ木の加工技術
木材部品の販売と木製製品の開発・製造・販売を行うストーリオ。創業時はネット通販を利用したオリジナル家具キットの販売を主力としていたが、同業他社の台頭から「他では真似のできない事業の柱を作らなければ」と模索。そんなとき出会ったのが、無垢材を使った曲げ木の加工技術だった。「大型の木材を曲げる技術はあっても、無垢材の小物を曲げる技術はなかったので、この技術があれば木製雑貨をモダン化できるのではと考えました。ただ、製品化に必要なデザインが社内ではできないので、NICOの『百年物語』プロジェクトに参加することにしたのです」。
『百年物語』のデザイナーやアドバイザーとのミーティングを通して、製品化の企画力やデザイン力を磨いてきた同社。その一方で高付加価値化サポート助成金などを活用し、製造設備や検査機器を導入するなど独自技術の確立を進めた。
里山のブナ材に着目 短冊状の木をテーブルライトに
新潟の里山に育つカエデやクルミなどの無垢材を使ったスタイリッシュで独創的な木製プロダクトは、NICOが支援する各種見本市でも注目を浴びるようになり、県内をはじめ東京のセレクトショップなどに販路を拡大。ニイガタIDSデザインコンペティションにも継続的に出品し、2019年には充電式のテーブルライト「TANZAKU Lamp」でIDS大賞を受賞した。
里山の健全化を進めるプロジェクトに賛同し、TANZAKU Lampには魚沼市大白川の「スノービーチ」というブナを採用。「里山のブナは昔は薪や炭に使われていたため、囲炉裏の灯りをイメージしたランプを作ろうと決めました。ブナは反ったり割れやすい木なので、細い板にすれば使いやすいということで短冊状にしたのです」。
蒔いた種をきちんと育て 実りを作っていきたい
同社ではTANZAKU Lampの量産化に向けて、昨年12月からクラウドファンディングを開始した。「電気部品を木工製品に使うということは、安全安心を保証するための綿密な設計・検査と、それを可能にする量産メーカーから部品を調達する必要があるのです」。
こうして曲げ木の技術シーズ、電気部品の調達や設計を行うルートもできたことから、今後は一つひとつの事業カテゴリーを大きくしていきたいという木村社長。「ここ数年である程度種は蒔いたので、きちんと育てて実りを作っていくことに集中していきたいです」。独自の技術を活かしたモノづくりで、木の可能性を広げていく。