1956年創業の株式会社シンワ歯研では、歯科技工の技術と造形力を活かして、身体の欠損部分に装着する人工ボディパーツの製作を開始した。新規事業に挑戦することになった経緯や思い、そして今後の展望について石澤社長に話を伺った。
義歯造りのオーダーメイド技術を活かし人工ボディパーツを製作
株式会社シンワ歯研
代表取締役 石澤 亮一 氏
本物そっくりに模倣する歯科技工の技術を活用
歯科技工所として義歯や差し歯を製造する株式会社シンワ歯研は、今年4月にメディカル部門を開設。義歯造りで培ったオーダーメイド技術を活かし、乳がんなどの病気や事故によって身体の欠損した部分を補う、装着用人工ボディパーツの製造を始めた。地域密着の事業を目指し、新潟県内限定で受注を行っている。
「最初は交通事故で顔面を負傷した方の入れ歯を依頼された際に、人工の鼻も作れないかと相談されたのが始まりです。入れ歯などの義歯造りも本物そっくりに模倣する技術が必要ですから、その技術を活かせばできるのではと思い挑戦しました」と石澤社長。その後、本格的に人工ボディの製造に着手するため、担当する歯科技工士が研修などに参加して専門的な技術を身に付けたという。
最先端のインプラント技工、オールセラミック技工、義歯加工に取り組む同社。高い技術力を持つ歯科技工所として、県内外の病院・医院から信頼を得ている。
利用者のニーズに合わせたフルオーダーメイド製品
手作業で仕上げるフルオーダーメイドの人工ボディパーツは、乳房、乳首をはじめ鼻、耳、指などさまざまだ。「利用者が何を一番求めているのかが重要」と言うように、製作は入念なカウンセリングからスタート。人工乳房の場合なら「温泉に入りたい」「ドレスを着たときに胸をきれいに見せたい」など、利用者のニーズによって製品の重量や装着方法も変わってくるという。その後、型取りを行い、シリコン製の原型を患部に当てはめて仮合わせをした後、健常側に合わせて肌の色や血管などを着色して再現。肌の質感を表現するのが一番難しいというが、利用者からは「人工乳房を着けることで自信が持てるようになった」「装着してから身体のバランスがとりやすくなった」などの声が寄せられている。
人工ボディの素材は、人体に無害で安全と認められた医療用シリコンを使用。本物と見分けがつかないように肌の色や血管、毛まで再現する。
人材の育成と仕事を続けられる環境づくりを大切に
石澤社長は新規事業を始めるにあたり、NICOの「広報相談会」を活用。ニュースリリースの作成を勧められて実行したところ、新聞に記事が掲載され問い合わせが増えた。「その中で一番印象的だったのが、女性ご本人ではなく、ご主人から“妻が温泉が好きで連れて行ってあげたいので人工乳房を作れないか”というご相談でした」。また、相談会を通して乳がん体験者の会を紹介してもらい、同社の技工士が体験者から直接、悩みやニーズを聞く機会を持てたことも良かったという。
今後について「一番は人を育てること。日本の強みは技術力だと思うので、若い人にモノづくりの楽しさを伝えたい。そして、モノづくりが好きな人が仕事を続けていける環境づくりを大切にしていきたいです」と語る石澤社長。技術者を育成しながら、これからも義歯や人工ボディの製造を通して、利用者の生活の質を向上させる支援を行っていく。
「義歯も人工ボディも、その方が一番に何を求めているかで完成するものが違ってくる。そこを十分お聞きした上で製作するようにしています」と語る石澤社長。
ここがポイント
- 既存の技術を基に新規事業に挑戦
- フルオーダーメイドで高品質の製品を提供
- 技術者の育成に力を入れる
企業情報
株式会社シンワ歯研
〒950-2032 新潟市西区的場流通2丁目4-3
TEL.025-268-7505 FAX.025-268-7506
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