パッケージを一新
デザインで新たな価値を生み出す
明治25年創業の上野は、こんにゃくをはじめ寒天やところてん、自社商品を味付加工した商品の製造を主力とする老舗企業。原材料と味にこだわった商品は多くの取引先から信頼を得ている。今回、課題となっていたパッケージのリニューアルに着手し、ブランド戦略に新しい展開が生まれている。
「美味しいと言われている寒天を埋もれさせるのはもったいないという気持ちで、リニューアルに取組みました」と上野社長(写真左)。上野部長(写真右)は、「最初のデザイン相談では厳しいことを言われたというよりも、すごくいいアドバイスをもらえたという期待感の方が大きかったです」と話す。
デザイン相談を通じてパッケージリニューアル
こんにゃく類各種、寒天製品などを製造販売する上野は、今年4月に新たな食品表示法が施行されることから、パッケージデザインの一新を計画。はじめに取り組んだのが、5種類の寒天デザートだった。
「新法に対応するためにパッケージを変える必要があったのですが、昨年1月に先代の社長が亡くなり、そのまま繁忙期に入ってしまったため、気付いたら何もできないままでした。そんなときNICOさんのデザイン・ラボを知り、自分たちで考えるには時間も少なく、デザインができる社員もいないため、相談してみることにしました」と上野社長。昨年10月、デザイン・ラボが月1回開催する「デザイン相談」を活用し、アドバイザーであるプロダクトデザイン担当の堅田氏、グラフィックデザイン担当の石川氏と面談を行った。
多くのファンを持つ「味付こんにゃく」は、調理の全てを自社で行うことで美味しさを追求。上野のこんにゃくや白滝は、大手コンビニエンスストアのおでんにも使用されている。
商品へのこだわりと歴史を伝えるロゴをつくる
同社の商品はヒット商品の「味付こんにゃく」をはじめ、県内の生活協同組合、全国の大手スーパーや高級スーパーなどで取り扱われているが、寒天製品は取引がなかなか継続しない状況だった。「展示会でバイヤーさんに寒天の試食をしてもらうと、味は美味しいけれど“顔”がね、とよく言われました。当社は無添加でシンプルな素材しか使わないので値段も安くはない。値段と顔であるパッケージがマッチしていないという指摘は以前からありました」と上野社長。「1回目の相談で、商品づくりに込めた理念をアドバイザーに説明したところ、品質も良く、販路も確立できているなかで、こだわりがパッケージに表れていないのが残念と意見をもらいました」と上野部長も話すように、15年以上変えていないパッケージがネックになっていることを改めて認識。デザインを一新しながら、寒天製品のブランド力を高めていくことになった。
まずは会社の歴史をふまえてブランドを示すロゴデザインを作りこみ、そこから商品に落とし込む方針が決まり、石川氏にデザインを依頼した。ブランドの方向性を検討する中では、昔の屋号である「えご屋」を打ち出すアイデアも提案されたという。「祖父が県内で最初に“えご”の製造を始めた歴史があることから、えご屋の寒天と謳った方が消費意欲も湧くということで、自分達には無かったその発想に驚きました」。打合せを何度も重ね、検討した結果、先代社長が商品名に使っていた「新潟うえの」を採用することに決定。堅田氏のアドバイスを受けて、創業年と素材へのこだわりを謳ったコピーも加えた。
デザインを一新したことで自信を持って販売できる
こうして1月末にブランドロゴが、2月上旬にはパッケージデザインが完成。顔となるパッケージには、これまでの「みるくかんてん」などの商品名を「牛乳寒天」などの漢字表記にすることで統一感を図った。さらに、デザインだけでなく商品の容器もアドバイスをうけて変更。「今の時代に合わせて、食べきりサイズで買いやすい値段にするため200gだった容量を130gにし、イージーオープンの容器に変えました」。
「販売はこれからですが、自信を持って販売できる商品になったと思います。当社はシンプルな素材で美味しい商品を作るというのが売りなので、こだわって作っている寒天を、ぜひリピートしてほしい。最近は100円ほどで販売されている寒天もありますが、違いを感じていただきたいです」と、話す上野社長。「味も顔も揃ったので、もう言い訳はできません。あとは販売を頑張るのみです」と、上野部長も意気込みを語る。
今回、初めてデザイナーと仕事に取り組んだことで、パッケージデザインだけではなく、企業ブランドを組立てていく発想や、モノの捉え方の勉強にもなったという両氏。「当社のメインはこんにゃくなのですが、これから『新潟うゑの』ブランドを効果的に発信していくためにも、既存商品についても検討したいです。また、通信販売やお歳暮などの贈答品などにも力を入れていければと考えています」。
新パッケージは2月に開催された「スーパーマーケット・トレードショー」に初出品し、順調に計画を進めてきた同社。デザインの力で課題を解決し、将来に繋がるブランディングも打ち出せたことから、今後さらなる展開が期待される。
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