農家がつながり「点」が「面」に。生産・企画力で他にはない価値を提供
「ある年、落ちて売り物にならなくなったル レクチエでハロウィンのランタンを作り、直売所に飾りました。それを面白がって一緒にやってくれたのが想樹の中心メンバー。そういう価値観を共有できる仲間とやっていきたい」と土田氏(写真中央)。白鳥氏(写真左)は加工食品の企画製造を担い、石黒氏(写真右)は生産のほか営業も担当する。
生のル レクチエを超える逸品を生み出したい
株式会社想樹は三条地域と果樹に強い思いのある5名が集まり生まれた農業法人。果樹生産はもちろん、加工商品も数多く展開する。その中でも「食べられる芸術品」として商談会でも注目を集めているのが「ルレクチェカービングコンポート」だ。新潟が誇る高級果実「ル レクチエ」が市場に出回る期間は、11月中旬~年明けの2カ月程度と非常に短い。県外の人も一度口にすれば豊潤な香りと美味しさに驚くが、その短さゆえ知名度は今ひとつだった。「年中味わってもらえるようにジャムなども作りましたが、生食の味や香りのインパクトをどうしても超えられなかった」と土田氏は話す。そんな状況を打破したのが、繊細なバラの花を彫刻したル レクチエだった。三条を拠点にカービング教室を主宰する伊丹氏、食品加工のノウハウを持つ白鳥氏と共に約4年前に開発し、商品化した。
商品バリエーションの拡大が商談に手応えを
この商品の評価から、生のル レクチエや他の果物への需要も急増。土田氏は梨専門の農家だったため、桃やぶどうを作る地元生産者に協力を呼び掛けた。そうしてできたのが想樹の前身である「三条果樹専門家集団」だ。メンバーについて土田氏は「変わり者の集まり」と笑う。「普通の農家ならやらない、未来のための仕事ができる人。三条の将来について、個々ではなく地域という『面』で考えられる人と一緒にやりたいと思いました」。
今年3月に株式会社想樹を設立。法人化にあたっては三条市の支援制度を活用し、千葉の大規模農業法人の経営指導を受けた。石黒氏は「生の果物や加工品など、現在約25品目を扱っています。商談ではバリエーションの多さに驚かれますし、その対応力が取引に繋がることもあります」と法人化の手応えを語る。
「米だけではない新潟」を発信
新しい発想で挑戦を続ける同社。一方で最大の課題と感じているのが物流だ。「商談会で気に入ってもらえても、新潟は米以外の大規模な物流のルートが見当たらない。個々の農家がそれぞれのルートで行っています。しかしそれでは大消費地に近い他県に勝つことは難しく、市場を開拓できないため、次の世代も育ちません。果樹でも組織として強い農業法人が現れれば、新潟の農業にも産地として残れる未来があると思います」と白鳥氏は力強く話す。
取引は国内だけでなく、海外も視野に入れている。年明けにはタイ、シンガポール、香港で商談の予定だ。また、小規模ながらも物流販売のルートを持つ企業と繋がりができ始めているという。「まずは一つひとつの営業の積み重ね。将来はセンターを保有し、三条が誇る農産物を計画的に流通したいです」。同社が新潟の農業に投じる一石は、決して小さくないはずだ。
会社情報
株式会社想樹
〒955-0094 三条市大島1442
TEL/FAX.0256-46-0531
URL http://www.soju.jp/