レアメタル加工の技術確立にあえて挑戦
お客様の課題解決へ
有限会社田中鉄工所
取締役 営業 兼 製造部長 田中 利隆 氏
技術確立まで苦労の連続だったレアメタル加工
社員10名という小規模でありながら、加工が難しいレアメタルを含む多様な材質の小径部品加工で着実な成果を上げているのが、有限会社田中鉄工所だ。「以前は工業用ミシン用など大ロットの機械部品を製造していました。しかし、リーマンショックもあり、当社のような町工場が特徴を出すにはどうしたらいいか考え、少量多品種体制にシフトしました」と田中部長は語る。
レアメタルの加工は試行錯誤の連続で、5年経っても売上の1%にも満たず、一時は手を引くことも考えた。「10年ほどかけて徐々にノウハウを蓄積し、ここ数年でようやく軌道に乗ってきたところです」。そこには、すぐに結果が出ない中での社員の努力の積み重ねがあったという。
品質管理のため室温25~26℃に保たれた工場。従業員について田中部長は「情報を共有し、ものづくりの喜びも苦労も共に分かち合うことが大切」と話す。
展示会で顧客のニーズをいかにキャッチしていくか
営業部門が無い同社にとって、新規顧客との出会いは展示会が重要な場になる。2011年から毎年NICOブースを利用し出展しているM-Tech(機械要素技術展)では、3日間で接触した人のうち、問い合わせがあるのは1割ほど。しかし毎年必ず1~2社ずつ新規顧客を獲得してきた。ニッチな難削材の加工に対応できる強みがあることで、単発ではなく継続的な取引が続いているという。
「展示会では『何かお困りごとはございませんか?』と声をかけます。受注云々の前に、まずはお客様のお困りごとをいかに理解するか。その上で価格や形状など、弊社が対応できる精一杯の提案をさせていただきます」。加工に要する時間やコストも頭に入っているため、相手が他の展示を見て回る1~2時間の間に詳細な見積りを出すこともある。そのスピード感は重要で、実際に話がまとまる場合もあるという。また、来場者の目を惹くよう、さまざまな材質を加工したパーツをアクリルケースで展示し、ディスプレイも工夫している。
純モリブデン、純タングステンなどのレアメタルは、高硬度で材料自体も高価な「高級難削材」。同業他社が苦労する分野にあえて挑戦することで、自社の強みにすることができた。
丁寧なコミュニケーションと日々の情報収集
展示会後はお礼メールの送信、1~2カ月後のアフターフォローの電話を欠かさない。さらに年末には、取引のあった企業を訪問し、必ず直接コミュニケーションをとる。ニーズを理解するためにも専門誌などからのこまめな情報収集も大切だという。「どんな小規模の工場も、これという技術があれば生き残ることはできると思います」と田中部長。高額で加工が難しいレアメタル。リスクは高いが、技術を確立できれば具体的な市場が見えてくるという。
顧客のニーズを取り逃さない日々の努力が、同社のBtoBビジネス成功の鍵になっている。
現状持つ生産設備をもとにレアメタルの加工技術を確立してきた同社。「ニッチかつ、今後市場が長続きするであろうニーズを掘り起こすことが重要だと考えています」と田中部長。
BtoB戦略のポイント
- 同業他社が苦労する分野で技術を確立する
- 展示会での顧客ニーズの理解とレスポンスのスピード
- 今ある機械(資源)でできる最大限のチャレンジ
企業情報
有限会社田中鉄工所
〒950-2151 新潟市西区内野西2-30-1
TEL. 025-262-2244 FAX. 025-262-1129
URL http://tanaka-seimitsu.com