株式会社WELCON

2017年01月04日
NICOpress135号マッチング支援新商品開発海外展開補助金等(助成金)販路開拓

中小企業にとって、新技術・新工法の開発は大きな社会貢献と市場拡大につながる取り組みであるが、そこに至るまでにはさまざまな困難や苦労もある。それをクリアする手段のひとつであるさまざまな支援策を利用して技術開発を実現し、取引拡大に結び付けている県内企業に、その経緯や成果について話をうかがった。

古くからあった拡散接合技術をいまの時代に活かす

株式会社WELCON
代表取締役社長 鈴木 裕 氏

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特別な技術だったものを一般に活用できないか

当社では、金属の接合材を加熱・加圧した際、接合面で起こる原子の拡散を利用して一体化する「拡散接合技術」を使い、これまでの加工方法では実現できなかった三次元中空構造体を企画、設計、生産しています。この技術の歴史は古く、1950年代からロケットや航空機などで実用化されていました。加工にはかなりの費用が掛かり、特別なところでしか使えない技術でした。当社が着目したのは、この技術を民生品に活かすことが出来れば、製品の小型化や高性能化に役立つのではないか、という点です。

私がこの技術を知ったのは約30年前で、面白い技術だと興味を持っていました。その後、ブラウン管製造装置メーカーの技術開発部門でこの技術に取り組むことになり、NICOの「ゆめ・わざ・ものづくり支援事業」を活用し、装置を作って、新潟県工業技術総合研究所や新潟大学大学院教授と共に実験を重ねていきました。

開発案件が順調に増えていくなか、ある自動車部品の依頼が舞い込みました。全国で当社だけが開発・製造が可能だと白羽の矢が立ち、その仕事の受注をきっかけに、平成18年に独立してWELCONを設立しました。

拡散接合だから可能なマイクロチャンネル熱交換器

拡散接合では、溝などのパターンを施した金属の薄板を重ねて接合することで、内部に微細な流路がある三次元の構造体を作ることができます。板は最も薄いもので20ミクロン。当社はその点に注目し、特に熱や流体に対応できる構造体、いわゆるマイクロチャンネルの開発に力を入れています。

仕事の多くは、大手企業からの要望に応える形で設計を行い、しっかりとした検査によるデータを出した上で、生産を請け負うケースが占めています。一方で自社製品の開発にも取り組み、「マイクロチャンネル熱交換器」を手がけてきました。そのなかのひとつが「水素ステーション向け小型熱交換器」です。

水素を扱う際に必要な冷却用装置はかなり大きく、水素ステーション自体もとても大きなものになっていました。効率的に冷やすためには表面積を多くすれば良いので、小さな穴がたくさんある形状が有効です。薄い金属板を重ねる拡散接合によって、多数の微細な穴を設けた小型の熱交換器を開発することができ、水素ステーションに採用されるようになりました。

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拡散接合技術
金属同士を溶かすことなく、接合する技術。接合したい面同士を密着させ、真空中で加温、加圧を行うと、密着面で原子の移動が起こり、双方の金属の原子が混ざることによって接合される。1950年代から航空宇宙業界や原子力業界において使われていた。

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従来の機械加工では不可能な形状もつくることが可能に

製品の説得力は地道な実験の積み重ねで得られる

拡散接合自体は、全国で10社ほどが手がけています。しかし、内部構造の設計から、生産まで一貫して行えるのはおそらく当社ぐらいだと思います。当初から自分たちで装置を作り、拡散接合のさまざまなプロセスについて地道に実験を繰り返し、基礎データを積み上げてきました。その結果、正確な数値解析やシミュレーションなどが可能になり、「開発力」という他社との差別化に繋がってきたと思っています。世界初の案件についての依頼もありますが、計算上で可能ならばチャレンジをしています。

当社が手がける製品は、高圧や高温にさらされるものも多く、安全性や性能の証明として重要になってくるのがエビデンスです。平成22・23年にサポイン事業を活用して、製品の非破壊検査による評価方法を確立でき、また検査機器を導入できたことは大きな財産になりました。ある会社からは、「取り組みの中で必ずエビデンスが出てくるので、共同開発の相手としてはとても良い」という評価をいただいたことがあります。

アイデアとやる気があれば認めてくれる支援先がある

良いアイデアとやる気があれば、そして、それをしっかり説明して共感を得られれば、国や県などがサポートしてくれる支援策があります。それを活用していけば、企業として独り立ち出来ると私は思っています。実際、さまざまな支援策に支えられてきたので、新潟県や新潟県工業技術総合研究所、NICOにはとても感謝しています。

当社はいくつかの大学と共同研究を行っていますが、「学」との連携には、企業の主体性が必要だと思っています。新しいアイデアや安定的な生産を考えるのはあくまでも企業で、その実現のために使える基本技術を探しにいく先が大学だと思います。重要なのは、何をしたいのか、何が障害なのかを明確にしていくこと。こうなりたいという姿が見えないと、相談される側も何をしてあげればよいのか分かりません。

昨年はグッドカンパニー大賞「新技術事業化推進賞」をいただき、とても励みになりました。今後は、「拡散接合といえばWELCON」と、日本だけでなく海外でも言われるような存在になりたいですし、「マイクロチャンネルの細かい流路はWELCONに作らせよう」と言われるようになるのが目標です。

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精密に加工された複数枚の金属の薄板を重ね合わせてつくられる「微細3D構造体」。内部にマイクロチャンネルを有する。

新技術・新工法 開発成功のポイント

  • 基礎データを積み上げ、明確な裏付けを確立
  • 支援機関、大学など連携のネットワークを築く
  • 新技術の個性を活かす製品を追求する

活用した支援メニュー

戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)

サポイン事業を活用し、マイクロチャンネル熱交換器の開発のために必要であった、非破壊試験による評価手法や、シミュレーション解析の技術などを確立。
※サポイン(サポーティングインダストリー)は、製品に必要な部品・資材を製造し、完成品の製造・組立を行う企業へ提供する「裾野産業」という意味を持つ

機械要素技術展(М-Tech)

NICOの共同出展を活用して、M-Techに参加。ブースで説明をした企業から、さまざまな案件の依頼が来る。全国各地の顧客と直接会える機会でもある。

海外市場獲得サポート事業

アメリカでの展開を行う際に必要な規格を取得するために、NICOの海外市場獲得サポート事業を活用。

 企業情報

株式会社WELCON
〒956-0113 新潟市秋葉区矢代田15-1
TEL.0250-38-1900 FAX.0250-38-1901
URL http://www.welcon.co.jp

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