株式会社ふるさと未来

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2021年06月01日
IT導入NICOpress176号補助金(助成金)

独自の管理システムで

効率化を実現し、
次世代へつなげる農業へ

上越市で水稲と園芸を手掛けるふるさと未来。雪熟野菜ブランドの立ち上げや、2019年にはGLOBAL G.A.P.(※)認証を取得するなど、積極的な経営を進める同社では、工場の生産管理のしくみを取り入れたシステムでIT・IoT化を推進。農業の課題である若手後継者の育成に効果を発揮している。

※GLOBAL G.A.P.(グローバルギャップ)/世界120か国以上に普及する国際基準の農業認証。食品安全や労働環境、環境保全に配慮した「持続的な生産活動」を実践する優良企業に与えられる。各国で認証を取得した生産者からの仕入れを優先する動きが進む。

代表取締役 髙橋 賢一 氏

「社員には感じ取れる人間になれ、感性を磨けと話しています。“いろいろなところに関心を向けること。天気がいいな、だけではなくて、風が強くて晴れてるからこの温度になる、と現象を関連づけて考える訓練が必要で、そのためにシステムを活用している”と伝えています」と語る髙橋代表。

工場の生産管理を
農業に取り入れる

今シーズン、ふるさと未来が栽培を手掛ける水田は約52ヘクタール。同社ではその代掻きを2名、田植えを3名で行い、合計21日間で田植え作業を完了させた。現在、社員7名で水稲のほか、ブロッコリーや枝豆、にんじんなどの園芸作物も幅広く生産している。
効率的な農作業を可能にしているのが、同社が開発から関わった営農支援システム「MINORI」の活用だ。MINORIは水稲、園芸など、全ての作物の作業工程を明文化したシステム。品種ごとに種まきから収穫までの年間の栽培スケジュール、具体的な作業指示、肥料や除草剤情報などを、スマートフォンで共有できる。圃場に備え付けられたICタグにスマートフォンをタッチすると、当日の作業内容が表示され、それに従い作業を行う。ミスを防ぐことができるほか、作業状況がリアルタイムに反映されるので進捗状況の把握も簡単だ。
また、圃場ごとの収穫量、さらに製品化された実質収量などもデータ化され、改善点を明らかにする手段となるほか、次年度の収量予測や収支状況もシミュレーションできる。
髙橋代表は、9年前にサラリーマンを辞め農事組合法人の常勤代表になった。当時から、「農業も他の産業と同じ、便利なものは壁を作らず活用したい」と、工場の生産管理やITを取り入れたいと考えていた。

MINORIは農林水産省 先端農業連携創造機構の平成29年度連携プロジェクトに採択され、支援を受けた。圃場ごとに種子や苗の種類、農薬や肥料の成分や散布量、作業日などが記録でき、トレーサビリティを明らかにする農業生産工程管理(GAP)にも対応できる。

 

毎朝のミーティングで作業計画を確認する。作業内容を可視化して計画的に進めることで、繁忙期でも日曜は休みにできるようになった。圃場単位に作業内容や日程を調整し、作業担当者と農機を指定した作業指示書が作成される。

 

経験の浅い農業者も成長でき
将来につながるシステム

「MINORI」の開発以前、髙橋代表は農作業の改善点を探るため、品目・品種ごとに全ての作業内容や時間、労力、圃場の状態といったデータの収集を開始。工場において作業工程の無駄や課題を探るのと同じ手法だ。当時、全品目・全工程を網羅して管理できる農業用システムが存在せず、エクセルで管理していたが、エクセルを使えない社員もいるため社内で共有はできなかった。
そんな時、上越ICT事業協同組合との出会いがあった。「これだけデータが揃っているのであれば、これをソフトにしましょう、とMINORIを開発していただきました」。開発に当たって農林水産省 先端農業連携創造機構の支援を受けたが、審査では圃場にICタグをつけて管理する方法が先進的であると評価されたという。
「これまでのように経験と感覚で、指示されたことだけをやっていては若い人たちの理解も成長も進まない。逆に、いつ、何をやって、なぜそれをするかということを、システムを活用して明らかにし、納得した状態で仕事に向かうと、身につくのが早くなり、成長にもつながります」と髙橋代表は話す。
現在は、計画・実行した作業や、起きた現象や気象データなども細かく記録に残している。将来のAI導入に結び付けることができると考えるからだ。「作物を入力するだけで、全ての作業スケジュールや注意項目などがぱっと出てくるシステムにするのが最終的な目標です」。

 

IT化は後継者育成と農業を
次世代へ継承していくため

同社の次なる挑戦は、IoTで水田の水管理を行う「MIHARU」の導入だ。これも上越ICT事業協同組合と開発したシステムで、圃場に遠隔操作できる給水バルブを設置し、パソコンやスマートフォンで各圃場の水位状況の確認や給水バルブの自動開閉ができる。水稲栽培で最も負担がかかる水管理の作業を軽減することができ、特に大規模圃場や、中山間地の圃場に有効だ。
令和2年度にNICOのAI・IoT導入促進事業を活用して30機を設置。さらに、自社負担でも80機を追加する計画だ。「社員がみんな真面目なので、休みの日でも田んぼの水が心配になって見に来てしまうのです。これがあれば遠くにいても確認できるからしっかり休め、働き方改革にもつながります。圃場の適正水位の意識を共有できるのもメリットです」。また、投資をして新たなチャレンジをする背景には、使命感もある。「こうした新しいものは、誰かが運用実例を作らないと拡大しないので、まずは実績を作りたい」。
システムの運用は、今年度からは社員に任せていくという髙橋代表。社内では「この作業が大変だった」「どうやったら改善できるか」という話を皆でよくするという。
「お金を掛けずに道具を工夫して解決できることもあります。一方でITやIoTは人を助けるためにあるものだと思っているので、人手が減っていく今後に向け、それらを活用して、より効率的で収益も上がる、若手がやりたいと思える農業を実現していきたい。今後は農機や人手をシェアする仕組みも作っていけたらとも思っています。農業は地域全体で残していかなければいけないものですから」。日本の農業の未来のため、スマート農業の実現と普及に力を注いでいく同社の動きに注目だ。

遠隔給水バルブ「MIHARU」
水田の水管理を遠隔操作で行うことができる「遠隔給水バルブMIHARU」。一定の水位や給水時間を設定して自動管理することもできる。

 

IoT百葉箱
ふるさと未来では百葉箱を設置して地域の気象やハウス内の環境データを収集している。ここで把握したデータを農業のAI導入に活用することを目指している。

 

 

ポイント

  • データを基にした栽培計画で適切で効率的な農業を実現
  • 年間計画や農作業の裏付けデータを通し、若手の経験値を伸ばしていく
  • 次期への課題や収支予想が見え、安定経営につながる

 

企業情報

株式会社ふるさと未来

〒949-3252 上越市柿崎区上直海1271-1
TEL.025-536-9071
FAX.025-520-6010
URL http://furusato-mirai.net/

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