冷凍和菓子を20カ国へ輸出
国内で地盤を固め海外見本市へ
1936年創業の港製菓は、製造直後の和菓子を冷凍する技術を研究し、高い品質を保持することで販売エリアを拡大してきた老舗和菓子メーカー。早くから海外輸出に着手し、海外販路開拓のノウハウを積み重ねてきた。2018年から2年連続でイギリスの見本市に出展し、評判・売上ともに好調と、着実な成果を上げている。
「イギリスでは見本市の後で現地の同行販売にも参加しました。日本食輸入業者さんと大手のレストランなどに行き、直に話を聞けたのもよかったです。イギリスは“お持ち帰り”の文化があるので、寿司のデザートとして一緒に和菓子を販売できるような店にアピールしています」と話す高橋氏。
国内展示会の積極参加で海外取引の道を拓く
国内シェアトップを誇る笹団子・ちまきをはじめ、大福や串団子などの冷凍和菓子を製造販売する港製菓は、1982年から海外輸出を開始。当初は現地の日本人駐在員向けに商品を販売していたが、1995年から本格的な輸出事業をスタートさせ、現在は北米・欧州、アジア・オセアニアなど約20カ国への輸出を行っている。
「当社は新潟にしか拠点がないので、国内をはじめ海外も含めて売上を伸ばしていかなければ生き残れないという危機感が根底にあります。そこで貿易商社や海外バイヤーが来場する国内の展示会にはできるだけ参加し、最大限注力しています」と話す立川部長。海外バイヤーが来場する「FOODEX JAPAN」をはじめ「スーパーマーケット・トレードショー」「地方銀行フードセレクション」、NICOが主催する「うまさぎっしり新潟・食の大商談会」などに継続して参加し、貿易商社との取引を通して海外販路を広げてきた。
イギリスの見本市に挑戦
豆乳クリーム大福が好評
こうして着実に輸出国を増やしながら、2018年にNICOの「海外見本市等出展事業助成金」を活用し、イギリスで開催される「JAPAN FOOD SHOW」に単独出展した。「実は海外見本市の参加はこれが初めて。海外の取引が増えてきたことから、商社さんから“イギリスに大きな展示会があるので出てはどうか”というお話しをいただいたのがきっかけです」。
初の海外見本市を担当した営業部の高橋氏は、「現地の通訳さんは和菓子の基本的なことが分からないので、お客様に説明する際に、どの商品も“もち”という表現になってしまう。食感などの違いを説明するのに最初は苦戦しました」と話す。展示会では日本食を試食できるとあって来場者がブースに殺到。現地バイヤーの反応もよく、中でもEUの輸入規制となる乳脂肪(動物性原材料)の代わりに豆乳を使った「豆乳クリーム大福」が好評だった。
今年7月にも同見本市に出展したが、前年の反省点を活かして変更した部分もあったという。「昨年は和菓子のポスターをブースの前に貼り、和風のイメージを出すため“すだれ”を敷いて商品を置いたのですが、結局それが目に入るのは一番前のお客さんだけで、周囲には何のブースなのか伝わりにくかった。そこで今年はポスターを3枚、ブースの背後に掲げて和菓子ということが分かるようにしました。また、昨年は小豆の入った大福も含め7種類を用意しましたが、好評だった豆乳クリーム大福4種類に絞りました」。
見本市での商談に加え、事前に豆乳クリーム大福の情報開示を行い、イギリスでの新規登録が迅速に決まったことから売上も好調。当初は輸出向けの商品と考えていたが、国内での販売も決まった。
品質管理をさらに向上し輸出拡大を目指す
同社は2013年に、輸出に必須とされる国際標準規格の食品安全マネジメントシステムISO22000認証を取得し、今後はさらに上の安全性を目指しFSSC22000認証の取得にも取り組んでいる。食品の海外輸出を進める上で、今後ますます社内で重要になるのが品質管理の部署だという。「各国によって認められている添加物や着色料などが違うため、それに合わせてきめ細かく対応しなければなりません。商品一つ一つに主原料はどこの国で作られているのかといった厳格な情報開示が求められるため、きちんとレスポンスできる体制が社内に整っていないと海外輸出は難しい。例えば海外見本市に商品を持っていったのに、原材料の情報開示をしたら認められていないものが入っていたのでダメと言われたら意味がないですよね。相手国の情報を把握した上で、その国に受け入れられる体制を整えられるかということがポイントだと思います」と立川部長は話す。
今年11月には世界80カ国からの食品バイヤー、商社などが来場する「“日本の食品”輸出EXPO」にNICOブースで初出展する同社。今後は餅菓子のカテゴリーを増やしつつ、さらなる輸出を図り、売上高の海外比率を12%から15%に伸ばしたいという。新潟、日本の伝統和菓子がどのように世界の市場に広がっていくのか、今後も注目される。
企業情報
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