輸出の壁を乗り越えスピード対応で販路を拡大。
新潟の米菓を世界へ。
「さくら堂」のブランド名で知られ、新潟・国内産の米の旨味を最大限に引き出したあられ・おかきを製造販売するさくら製菓。コロナ禍を機に海外展開に動き出した同社は、何度も立ちはだかる壁を乗り越えながら、現在10の国・地域への輸出を実現。さらなる販路開拓を進めている。

海外展開は“教科書通り”にはいかないと語る寺尾社長。「海外展開に挑戦したい会社があれば、できる限り相談に乗ります。いろいろな人を巻き込んで一緒に世界に行き、新潟をもっと盛り上げることが目標です」。
輸出条件に対応する長期保存パッケージを実現
1950年創業のさくら製菓は、厳選した新潟県産・国内産水稲もち米にこだわり、生地製造から包装まで一貫生産する米菓メーカー。看板商品である「カマンベールチーズおかき」をはじめ多様な商品を展開し、味と品質の高さで評価を得ている。
同社が海外展開を考えるきっかけとなったのは、新型コロナウイルスの影響による売上減少だった。寺尾社長は海外展開の足掛かりを掴もうと、ジェトロの輸出商談会に初めて参加。手探りの状態で臨んだ当初は成果に結びつかなかったが、その後も国内の商談会に継続して参加し、試行錯誤を重ねていった。
「売上がどんどん下がっていき、日本だけで商売をしていてもだめだと思うようになったのです。最初は右も左も分からない状態で、成果も全くありませんでしたが、そこから一歩ずつ挑戦を続けました。現地に行かないと始まらないと思い、2022年にはNICOの『シンガポール食品テストマーケティング』にも参加。実はこのときも成果は出なかったのですが、現地にどういう需要があって、どういう味が好まれるかなどを、自分の目で見ることができたのは大きな収穫でした」。
この過程で浮かび上がった課題が、価格と賞味期限だった。「価格は販売先によって対応できる見込みがありましたが、輸出の条件として賞味期限が最低1年間必要というのが最大の課題でした。海外への輸送に1~2ヵ月を要する上、現地で販売する際に6ヵ月以上の賞味期限が求められるため、結果として1年間の賞味期限が不可欠だったのです。当時は賞味期限が4~5カ月の商品しかなく、そこからいかに賞味期限を延ばすかという戦いが始まりました」。賞味期限を延ばすためパッケージに光を通さないアルミの包材を使用したところ、「中身が見えないと売れない」という指摘を受けた。この言葉で奮起した寺尾社長は、数年にわたりあらゆる包材でテストを行い、長期保存が可能な透明包材の商品を実現させた。


国内で一番人気の「カマンベールチーズおかき」をはじめ、同社では伝統の製法を守りながらバリエーション豊かな商品を生み出している。
FSSC22000認証を取得。
台湾企業との大型商談が成立
こうしてパッケージの改良や海外で好まれるハッキリした味を商品に反映し、少しずつ成果が見え始めた。大きく飛躍するきっかけになったのが、2024年の「輸出EXPO」への出展だ。海外のバイヤーを惹きつけるブース展示や商談が功を奏し、出展後6カ月で1,000万円以上の売上を達成。「展示会への参加経験を積み重ねる中で、バイヤーたちと直接話し、見積を出せるようになって、価格の相場感が分かるようになってきたことが大きかったと思います」。出展を機に多くの新規客と出会い、成約数も伸長。その一方で、さらなる課題も浮かびあがった。台湾の大手企業との商談では、FSSC22000認証工場であることが取引条件として求められたのだ。FSSC22000は国際的な食品安全認証であり、取得を取引条件とする海外の企業も多い。これを受け、さくら製菓では製造・管理体制を再構築し、今年1月に認証を取得。一度は止まっていた台湾企業との商談が再開し、取引成立へとつながった。
海外展開において何より重要になるのは「スピード感」という寺尾社長。「日本人と違い、海外のバイヤーは“この商品がほしいから、これだけ見積りがほしい”といったように要望がはっきりしていて、商談から取引成立までが早い。今年3月のFOODEX JAPANに出展後、4月上旬に直接貿易で台湾に輸出したのですが、見積から出荷まで非常に短期間で進みました」。スピード感のある対応をするためにも、現在海外展開の取り組みは寺尾社長一人で担当している。「やるかやらないかを決めるのは社長である私なので、迅速に意思決定ができます。私が海外から帰ってきて、社員に“こういう味の商品を作ってほしい”と言えば、次の日には試作品ができあがってくるという社内体制も整っている。それくらいのスピード感がないと、海外では通用しません」。


2024年の「輸出EXPO」に出展。ブースは30m先からでも興味を惹くようにと考え、当時12種類あった商品をレインボーカラーに見えるように陳列した。

2024年に竣工した新工場。海外企業の要求に応え、2026年1月に食品安全マネジメントシステムFSSC22000の認証を取得した。
社員のモチベーションが向上。
現地の商品定着にも尽力
現在は、カナダ・アメリカ・香港・台湾・フィリピン・シンガポール・ニュージーランド・オーストラリア・スイス・イギリスに輸出。海外展開を始めてから販路拡大や売上増加という成果だけでなく、社員のモチベーションも向上したという。「FSSCの取得では、国際的な取引を目標に社員も一丸となって取り組みました。取得後は、自分たちの商品が多くの国に届いていることを実感し、やりがいにもつながっています。非常に意義のある取り組みだったと感じています」。
海外展開に挑もうとする企業に対しては、「海外にどんどん出て行くべきです。そのためには資金が必要ですが、そこは国や県などの支援をうまく使ってほしい。私自身もジェトロやNICOをはじめ、あらゆる支援機関を活用しました。こうした支援があったから今があると思っています」と話す寺尾社長。これまでの経験から、現在は輸出に挑戦する企業の相談に応じたり、海外取引先の要望に合わせて県内の企業を紹介したりすることもあるのだという。
「今後は今の価格帯で、どこまで海外販路を広げられるかという挑戦を続けていきます。米菓はライバルも多いので、現地との結びつきが弱いと価格が安いところに乗り換えられてしまう。さくら製菓の商品は他とは違うということを現地に行ってしっかり説明し、分かってもらうことが重要だと感じています。現地との関係を切らさず、商品を定着させるということに今後さらに力を入れていきたいです」。これからもスピード感のある対応と地道な努力を重ねながら、新潟の米菓を世界へと届けていく。

さまざまな国のバイヤーが来社。あえてターゲットを絞らず、国に対する先入観を持たずに商談を進めるようにしている。



海外で人気の高い「甘うまはちみつ」「濃厚いか揚げ」「濃厚おつまみうに」。海外でははっきりとした味、サクサクとした食感の商品が好まれている。
企業情報NICOクラブ会員
さくら製菓株式会社
新発田市岡田1328-11
TEL.0254-22-2131
URL https://www.sakura-do.jp
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