伊米ヶ崎建設株式会社【3年間で約20名を新卒で採用。学生へのアピールは「ありのまま」を見せること】

2025年02月07日
DX・デジタル化NICOpress 198号人材育成

3年間で約20名を新卒で採用。
学生へのアピールは「ありのまま」を見せること

魚沼市にある伊米ヶ崎建設は2018年を境に新卒採用に注力。この3年間で高卒を含め、毎年6~7名の採用に成功している。「外注先も人手不足で縮小しており、この先、地域の仕事を維持していくには自社の技術で進めていかなければいけない。だからこそ、採用に投資をしている」という社長の言葉から、人材獲得、そして人材定着に向けた強い覚悟が伝わってきた。

代表取締役社長	米桝 弘 氏 専務取締役 兼 技術部長	舟見 豊 氏 総務部 部長代理	矢澤 健彦 氏
代表取締役社長 櫻井 馨 氏
経営企画部 課長 佐藤 知佳 氏
(写真左から佐藤課長、櫻井社長)

「年ごとに学生の考え方も傾向も成果も違うので、毎年ゼロからのスタートという感覚です」と採用担当の佐藤課長。櫻井社長は「当社は地理的、業種的にハンデはあると思いますが、実は自分たちの思い込みや価値観であって、ここで働きたいと考える人材はいますし、そういう人に情報が届けばいいということです。全国でもあの場所でこんなに人が集まるのか、という成果を出している会社もあります。簡単ではないけれど、やれないことはないと思っています」と話す。

社長自身が肌で感じた危機感
このままではダメだと専任者を配置

魚沼市で土木・建築業を手掛けている伊米ヶ崎建設。創業92年の老舗企業で、現在従業員は74名だ。2018年から新たな職種として「建設ディレクター」を導入。チームで現場を動かしていく体制を作り、それに伴って社内のIT化も進めている。採用活動に力を入れてきた結果、3年間で20名あまりを新卒で採用。6割が魚沼エリア外出身者だ。現在は社員の3人に1人が20代で、一時は50歳だった平均年齢も40歳に下がっている。

同社が採用に対する取り組み方を変えたのは、2018年が境目だったと櫻井社長は振り返る。「私が社長になったタイミングで、専任の採用担当として佐藤を配置しました。私が2012年に入社した時から人材は不足していて、採用を担当したものの全く成果は上がりませんでした。合同説明会で学生さんと目が合うと、向こうがそらして去っていくのです。しかし、その経験が糧になっていて、それほど採用市場は厳しいということ、自社の認知度は低いということを認識し、今までのやり方ではだめだと思い切ることができました」。

 

同じツールでも毎年反応が異なる
見逃せない採用市場のトレンド変化

採用活動の最初の課題は、母集団を集めることと捉えている。「採用も営業と同じで定量分析。どれくらいの母集団があれば結果として、当社が必要とする人数が残るのか、という数学的なところがある。その発想の転換はすごく重要だと思います」。

採用を担当する佐藤課長は、まずその母集団の人数を集めるために就職情報サイト、スカウトサービス、人材紹介といったツールを組み合わせて学生にアプローチする。「新しいツールも使ってみて、効果が出るものは残して、その他は入れ替える、という感じで進めています。その年によって同じツールでも結果の出方が全く違います。読み切れない面もあるので、使ってみて反応が悪いときは軌道修正しながら進めます」。

毎年反応が異なるのは、学生の思考やトレンドが変化していくからだ。「年間休日は120日以上が応募のライン、といったトレンドも、毎年採用市場に自分たちが身を置いているから分かること。それを踏まえて対策を変えることが重要です。採用活動は専任者を置かないと成果が出しにくい業務になっていると感じます。その活動が機能するように、前提として会社の賃金制度や休日の見直しなど、経営層がやるべき点は先だって整えています」と櫻井社長は話す。

 

「ありのまま」を伝えるために
説明会への参加を重視

同社では建設の専門課程を学んだ人だけでなく、幅広く人材を求めている。建設ディレクターは全員で7名、若手5名のうち4名が文系卒だ。櫻井社長は「現場業務のICT活用が進んできており、女性や文系出身など、これまでの属性と違う人材でも活躍しやすくなっています。今の学生の傾向として、サポートする仕事に価値を見出している人も多く、興味にマッチしている職種だと感じています」と話す。

説明会ではドローンやAR活用、施工管理のコミュニケーションツール、社内でのアプリ制作などの話も伝えるが、その狙いを佐藤課長は「建設業でもIT化が進んでいる印象を持たせたいというよりは、自分でもできそうだ、という気持ちになってもらいたい」と話す。さらに、常に意識しているのが「ありのままを伝えること」だ。学生には必ず一度来社してもらい、社員と対話する機会を設けている。「社内見学ツアーを行って、学生から直接社員に質問してもらいます。一緒に働くことになる社員と接することで、雰囲気や働き方を理解してもらえる。当社がすごく良いというアピールではなく、その学生にとって良いか悪いかを判断して、納得して入社してもらいたい。また、日程が合わなくて参加できないというのが一番もったいないので、会社説明会は回数を多くしています」。

 

合同説明会の採用ブース装飾

合同説明会の採用ブース装飾。良い意味で建設業らしくない、明るく親しみやすい雰囲気を演出。当日は、まずは学生に立ち寄ってもらうために、積極的に声をかけてブースへ誘う。説明会の資料は毎年反応をみてブラッシュアップしている。

伊米ヶ崎建設採用サイト

以前から伊米ヶ崎建設は略して「イメケン」と呼ばれていたので、キャッチーなワードとしてリクルートにも活用。採用ホームぺージには社員の声を多く載せ、日常の様子が伝わる情報を掲載。「数字で見るイメケン」として、平均残業時間などの数字データも積極的に公開している。

建設ディレクターの写真

建設ディレクターの写真

ITを活用し建設工事現場をバックオフィスから支える建設ディレクター(写真左)。職種自体がまだ知られていないこともあり、説明を聞くと興味を示してくる学生も多い。文系出身、女性が活躍している点もアピールになっている。

建設工事現場の写真

候補者や新人と交流させるのは
社員たちのためでもある

学生との交流は社員にとっても大事なこと、と櫻井社長は話す。「以前は、採用しても離職することがままあり、それは受け入れ側にも問題があったと考えています。長年、新人が入らなかったことで、後輩とのやりとりに慣れていなかったのですね。失敗を重ねて、若手とのコミュニケーションが組織の中で醸成されていった感覚はあります」。同社では入社後半年間、年齢の近い先輩社員が新入社員の指導係を務めている。「新入社員に会社に慣れてもらうためですが、一方では先輩になるための儀式です。それも若い社員が増えてきたからできることで、最初の1人がどう育ってくれるかがすごく重要だと思います」と櫻井社長。採用担当者は1名だが、採用結果は社員皆で取り組んでいる成果だという。「見学では業務の手を止めて話すことになるので、社員皆さんの協力が絶対に必要です。採用活動への投資は無駄になる部分も出てしまうので、お金と時間を掛けた上での採用人数だと思っています」。

今後も若手の採用は続けていきたいと話す櫻井社長。「技術やヒトも内製を進め、自分たちだからできる建設、ものづくりというところまで掘り下げていきたいですし、そのためには人材が必要です。自分たちの強みを磨いていけば企業の魅力が高まり、採用にもつながっていくと考えています」。

 

新入社員をサポートするメンター制度

年齢の近い先輩が新入社員をサポートするメンター制度を導入し、人材の定着を図る。

社内環境整備の様子

社員全員で取り組む社内の環境整備や改善活動により、社内はすみずみまで整理整頓が行き届き、清掃用具から文房具まで全ての道具の置き場が決まっている。見学ツアーで注目する学生も多い。
フリーアドレスを導入している部署もあり、毎日くじで席を決め、多くの人と自然にコミュニケーションがとれるようになっている。

POINT

  • 社長が説明会で経験した採用市場の厳しさを契機に、専任の採用担当を設置。採用市場のトレンドをチェックし、様々なツールを組み合わせてアプローチ。
  • 採用方法とともに、受け入れ体制や職場環境、休日などを改善。企業の魅力を高め、採用につなげる。

企業情報

伊米ヶ崎建設株式会社

魚沼市虫野200
TEL.025-792-1230
URL http://www.imegasaki.co.jp/

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