XR・メタバースによる疑似体験で社会課題を解決。企業、自治体、教育など活用シーンが拡大中
メタバース開発やXRコンテンツ制作、Webマーケティングを手掛けるリプロネクスト。エンターテインメント系企業向けが多い業界において、同社は当初から自治体や法人の事業向けにサービスを提供。官公庁や上場企業など、全国に顧客を増やしている。アバターのトラッキングシステムに関する新規事業にも注力しており、現実と仮想空間が近づく世界に向かって技術やサービスを追求している。
「メタバースは、まだ体験したことがない人も多く、ハードルがあるのが現状ですが、例えば企業のホームページをクリックすることに抵抗がある人はいないと思うので、それくらいに身近になればと願っています。今後の当社の成長には投資も必要で、その辺りが経営者としての現在の課題。将来的には海外展開も視野に入れています」と話す藤田社長。社員によく伝えるのは「仕事を面白がろう」ということ。自らが興味を持って取り組めるかどうかで、対応や成果が全く変わってくるという。
XR・メタバースで
社会課題の解決
2017年設立のリプロネクストは、「XR・メタバースで社会課題の解決」を掲げ、事業を展開している。東京からUターンして起業した藤田社長には、当初から「社会に価値提供できる分野で仕事をしたい」との思いがあった。
「新潟はもちろん、全国を見ても地方は人口が減少していて、このままでは経済が縮小する。解決のためには県外や海外から誘客したり、モノを購入してもらったり、または地域内の経済を早く回すことが必要です。その際に、インターネットで疑似体験することができれば、その地域や場所が良いと感じたら来訪につながり、商品価値がわからず不安で買わないという選択は少なくなります。例えば家を買いたいとき、疑似体験で情報収集できれば早く検討に入ることができて、経済を今より早く回せるだろう、と考えていました」。
事業が軌道に乗ってきたのは起業後の5年目あたりから。県外顧客の掘り起こしに力を入れ、現在は県外シェアが7割強。依頼内容もさまざまで、VRによる企業紹介から、採用の合同企業説明会等のイベントをメタバースで行いたい、というものもある。話題になったのは、昨年、法務省からの依頼で制作したVRコンテンツの「刑務所バーチャルツアー」だ。
強みとしては、エンタメ商品が多い業界において、社会課題解決のためのコンテンツを提供しているということ。さらに、制作して終わりではなく、目的が“課題解決”や“現状をもっと良くする”ことであるため、そのゴールを目指してサポートしていることだ。
仮想空間で体験・交流できる
メタバースの活用シーンが拡大中
リプロネクストの最近の事業の主軸はメタバースとなっている。場所や空間の制約なく人と交流でき、個人の匿名性も守られるといったメタバースの特性を活かすことで、多種多様な場面で活用されている。
昨年開催した「黄金の國、いわて。」のフードショーinメタバース(岩手県)は、岩手県産食材の生産者と首都圏の飲食店を仮想空間でつなぐ展示会。結果、過去のリアル展示会よりも契約件数が増え、今年度も開催予定だ。「リアルの展示会の場合、試食を食べて“おいしいね”で終わることが多いなか、ここでは生産者のストーリーや、“こう食べるとおいしいですよ”ということをしっかり伝えることができたと思います。事前に参加者へ試食用料理も送ってあり、それを味わい、話を聞くなかで料理人さんには具体的な料理イメージが湧いたのではないか。それが良い結果に繋がったと考えています」。
ひきこもり支援として手掛けた「甲府市メタバース 心のよりどころ空間」(山梨県甲府市)は、来訪者同士が会話できる共有空間と、個別に専門家に相談できる窓口を設置。本人の顔は見えず、匿名というアバターの特性を活かし、人と触れ合うハードルを下げる効果が期待できる。「しゃべらなくてもそこに来た人と空間を共有したり、テキストでの会話をして、慣れてきたら自分の声でコミュニケーションもできる。そのうち、この人に相談したいから対面の場に行ってみようかな、など、少しずつ意識が変化していったらいいなと考えています」。
また、鹿児島県では英語教育にメタバースを取り入れた事例もある。「子どもたちにとって、教室で英語を話すことは恥ずかしさもある。アンケートを取ると、75%がメタバースの方が話しやすかったとのことでした」。
3DCGは今後インフラになる。
AIアバター開発に注力中
XRやメタバースという3DCGの情報は今後インフラになると信じている、と話す藤田社長。そのための技術開発には力を入れ、人材も採用している。今進めているのはAIで接客するアバターだ。「人材を募集している企業の採用活動であれば、興味を持ってアクセスしてきた人に対して、AI人事アバターが質問に答えてコミュニケーションがとれます。就職活動では合同説明会に行っても、話を聞ける会社は絞られますが、メタバースならバイトが終わってから夜遅くでも訪問でき、個別に自身に向けて説明してもらえれば、そこに選択の広がりが出てくるかなと考えています」。
さらに、今年4月にはメタバースをマーケティングとして活用する開発を進めている。これはアバターの移動、視線、手の動きなどのデータを取得し、その記録データをマーケティングに活用するというもの。「メタバース空間において利用者がどこに興味を持っているのか、AI接客を受けてどこに関心が高まったか、あるいは興味を無くしたかというデータが手に入る。例えば起業して店を作る時に、まず仮想空間に店を数パターン作って、そこでテストマーケティングをして反応を見る、ということも可能になります。これによりリスクが減り、成功割合も高まると考えます」。
メタバース事業において現在は他社のプラットフォームを利用しているが、いずれは自社のものができれば、より価格も抑えられ、提案の幅も広がる。また、VRやメタバースを活用したい企業向けに情報を提供するオウンドメディアも運営している。「会社としてのテーマが“Break the Wall”で、壊すのは“距離の壁”や“機会の壁”。ネット上での疑似体験によって、選択が変わるかもしれないし、そうした場を提供することで、社会課題の解決に寄与していけたらと思っています」。
メタバースの活用例
▶アバターを操作できる3DCG空間「メタバース」は、オフィスや学校などの実在する空間から未来の街並みなどオリジナル空間も表現できる。利用時はヘッドマウントディスプレイから、PCやスマートフォンで体験するものまでニーズに合わせて対応。求める機能に応じてプラットフォーム開発も行う。
展示会
岩手県様/メタバースを活用した食の交流会
岩手県産食材の販路開拓を目的としたイベント。第1部は商談会、第2部は交流会を実施。企画から制作、運営までを担当した。
オープンキャンパス
新潟工科大学様/メタバースオープンキャンパス
いつでもどこでもキャンパス内を疑似体験できる。キャンパスライフを具体的にイメージしてもらい、現地開催イベントへの来場を促すきっかけ作りにも。
相談窓口
山梨県甲府市様/メタバースひきこもり相談窓口
新潟日報メディアシップで開催された「春航祭2024」では、地域貢献活動の一環としてMRを体験できるクイズコンテンツの制作、イベントを実施した。
学習教材
鹿児島大学教育学部付属小学校様/英語授業向けメタバース
高学年児童が外国語学習で使用するメタバース空間を制作。ショッピングモールを再現し、鹿児島国際大学の学生が店員役として英語で接客する。
ビジネスでVRやメタバースを活用したい企業向けに役立つコンテンツを発信するオウンドメディアを運営。そのほか、各種イベントホールや、写真を飾れるギャラリー、プレゼンルームといったメタバース空間をトライアルで体験できる「メタバースEC」も開設している。
企業情報
株式会社リプロネクスト
新潟市西区小針が丘2-54 2F
TEL.050-5319-5206
URL https://www.lipronext.com/