リアリティのある実物学習の機会を提供。
確かな成長ビジョンを持って、社会に羽ばたいてほしい
新潟県立海洋高校の教員時代、生徒と共に水産資源の有効利用に取り組む学習を進め、2013年には人気商品となる鮭魚醤「最後の一滴」を開発。同校の商品開発・販売を継続的に行うため、教員を辞めて水産加工会社の能水商店を創業した松本さん。さらに地域に根差した新たな教育の実現のため、挑戦を続けている。
新潟市出身。日本大学生物資源科学部海洋生物資源科学科卒。新潟県立海洋高校で生徒と共に、遡上鮭を活用した鮭魚醤など数々の商品を開発。2018年教員を退職し、株式会社能水商店を創業。ドイツの職業教育制度「デュアルシステム」をモデルにした「ライトシップ高等学院」の2025年4月開校を目指している。能生内水面漁業協同組合の組合長も務める。
Q1 教員時代に大切にしてきたことは?
課題解決力を育成する科目「課題研究」で、生徒と一緒に商品を開発してきましたが、「いかに市場に受け入れられるか」を重視してきました。生徒たちには、市場が求める水準を教える必要があると考えており、PBL(プロジェクトベースラーニング・課題解決型学習)の効果を上げるためにも、ある程度大人が伴走して一定の成果を生み出すサポートをしてきました。作って、売って、お客様に喜ばれる、というリアルな体験にこだわってきました。
Q2 能水商店と海洋高校の関係は?
現在、当社の社員が文部科学省委託事業における「産業実務家教員」として、PBLの指導を担当しています。民間の視点から学校の学習を支援することで、リアリティのある実践が可能になります。また、当社は年間200万円以上を生徒の学習活動(開発、マーケティング、旅費、消耗品等)に投下していますが、この金額に見合う価値を海洋高校生の活躍が生み出しているのだと思います。このような循環は「最後の一滴」が生まれてからの10年間で確立した持続可能な仕組みであり、地元自治体の支援を含め、多くの方の協力で今日の形が作られました。
道の駅「マリンドリーム能生」に海洋高校のアンテナショップがあり、海洋高校生が開発した商品を販売。8月には新たに「最後の一滴 PREMIUM」が発売される。
「最後の一滴」から作ったビターカラメルをトッピングした「一滴ソフト」が大人気。
OBの新関脇 大の里の活躍で注目を集める海洋高校相撲部が開発した人気商品「ごっつあんシリーズ」。売上の一部は相撲部員の食費などに還元されている。
Q3 来春開校予定の学校について教えてください
現在、2025年4月の開校に向けて、新潟産業大学附属高等学校通信制課程と提携した「ライトシップ高等学院」の開校準備を行っています。ライトシップ高等学院は、上越市を拠点として、「高校卒業」「はたらく」「地域おこし」を組み合せたカリキュラムを提供する全国初の、いわゆる広域通信制高校サポート校です。ドイツのデュアルシステムをベースとしていて、週5日のうち、3日は雇用先の地元企業で有給で働き、1日は通信学習、1日は地域おこしに関わるPBLに取り組みます。
実社会で働きながら学ぶことは、その分野の職業スキルが育成されるだけでなく、様々な年齢や立場の人との関わりによりヒューマンスキルが身に付きます。具体的な経験から、更に高い知識と技術を学びたい生徒は、総合型選抜による大学進学を目指します。将来的にこのようなカリキュラムがスタンダードになるよう事業展開していきます。
開校に向けて認可申請中の「ライトシップ高等学院」。松本さんは学院長も務める。県内外問わず、1学年20名を募集する予定。雇用先の地域企業は、開校時約80社の登録を見込む。
企業情報
株式会社能水商店・株式会社LIGHTSHIP
[能水商店]糸魚川市能生9396
TEL.025-556-6950
URL https://www.nousui-shop.com/