株式会社ツバメックス【TADDシステムを軸に金型業界の新たなサプライチェーンを構築】

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2022年06月03日
IT導入NICOpress182号

TADDシステムを軸に
金型業界の新たなサプライチェーンを構築

ものづくりの基盤となる金型製造を手掛けるツバメックス。約40年前からDXの先駆けとなるIT化を進め、蓄積したノウハウを元に3次元設計支援システムを構築した。2019年にはサンスターグループに加入し事業の幅を拡大。
現在は地域の金型工場と連携する仕組みで業界を牽引している。

株式会社ツバメックス 代表取締役社長 多田羅 晋由 氏
代表取締役社長 多田羅 晋由 氏

金型業界もDX技術を活用し、地域連携を進めることで、市場の変化への対応力をつけることが可能です。よく言われる「企業変革力の強化」とは、企業が持っている能力を変革し続ける力を強化すること。そのためには危機を感知し、機会を捉え、組織を変容させることで競争力を持続することが大切だと思います。

独自の3次元設計支援システムで

業務プロセスを変革

自動車部品、建築資材、家電製品などのプレス金型、モールド金型の設計・製作から、金属プレス加工、プラスチックの射出成形による量産加工まで行うツバメックスは、1982年にフランス・ダッソーシステムズ社の3次元CAD/CAMシステム『CATIA』を導入。ITを活用した金型づくりが一般的ではない時代、「将来は必ず3D設計が主流になる」「コストは設計段階で決まる」という当時の経営者の判断で、金型業界で初めて導入された。

「このCATIAを元に金型づくり専用のプログラミングを加えて自社開発したのが、ツバメックス独自の3次元設計支援システムTADD※1です」と多田羅社長。1998年に完成したTADDシステムは、営業から設計、最終工程の仕上げまで一気通貫でデータを繋げ、誰もが、いつでも最新状況を確認できるシステム。一般的なCADシステムでは、オペレータがNCデータや部品表などの情報を引き出す必要があるが、TADDは営業がユーザー情報を入力し、金型の3次元設計データが作られると、部品表・購買情報、三面図、加工属性データ、鋳物データ、ビューワデータ全てを自動で出力することができる。

「TADDを構築した一番の効果は、設計という金型づくりの上流工程の生産性が上がったことです。当社の基本的な考えは、機械にできることは機械に任せ、人はクリエイティブな仕事を行うということ。それがDXだと思うのです。また、将来的には高い技術を持つ現場の職人の作業工程をARやVRを使って画像化し、新人の技術継承に活用するなど、下流工程の生産性向上までつなげたい。それができれば、金型業界で先頭を走り続けられるのではないかと考えています」。

※1 TADD=Tsubamex Auto Die Designsystem

「TADD」全体像

 

全員が同じ操作で情報を得る

使いたくなる仕組みづくりが大切

TADDシステムを現場に定着させるために行ったのが、「見たくなるコンテンツづくり」。作業指示、部品表、納期、ユーザー仕様など、現場の作業者に必要な情報全てをポータルサイトに集約し、見える化した。「iPadを現場の作業者全員に支給し、全員が同じ操作で情報を見られるようにしています。その日の生産計画はもちろん、画面をタッチすれば部品の入荷情報や保管場所などもすぐに分かる。IT機器に不慣れな作業者でも自然と見たくなる、使いたくなるような仕組みを作ることが、定着させるための秘訣だと思います」。

また、機械設備にIoT機器を導入し、生産実績データを自動取得するシステムを開発。蓄積したデータを分析することで、正確な製造原価を割り出し、見積りの精度向上や操作の効率化につなげている。「人が入力する日報では取れない生産実績が分かることで、将来の生産予測も立てられる。金型業界の課題である仕事の平準化にも役立ちます」。こうした自社開発のシステムは近年注目を集め、他社からの引合いも増えている。「今までは社内のノウハウを蓄積するためにシステムを開発してきましたが、今後はシステムを販売する新規事業も展開する予定です」と語る。

株式会社ツバメックス ipad

 

金型企業同士がつながり

燕三条から世界に発信

金型メーカーを取り巻く市場の変化は激しさを増し、受注変動の波やQCD(品質・コスト・納期)の要求もさらに厳しくなると予測する多田羅社長。この状況を乗り切るには金型企業同士の連携が重要と捉え、TADDなどの仕組みを活かした連携に取り組み始めた。3次元設計データをはじめ、受発注、工程情報、IoTで取得した実績情報などをクラウドに上げ、連携企業と共有する仕組みを構築することで、共同受注体を目指すというものだ。「それがTCS※2という構想です。燕三条エリアの数社と既に連携していますが、今後も参加企業を増やし、より高い生産性を実現したいです」。

さらに企業の連携や協業を進めるためにはシステムの共有だけでなく、製造設備を共有することも必要だという。「金型メーカーはどこも受注の山谷があります。例えばクラウド上で各社の設備の稼働状況が分かれば、この仕事はA社に依頼しようということもできるし、A社は営業しなくても仕事を得ることができる。受注の平準化につながるはずです。また、数千万から数億円という高額な設備を保有するのは負担が大きいですが、企業間で共有することで軽減できます。そのためにも仲間を増やし、DXによって金型業界の新しいサプライチェーンを構築していきたい。このTCS構想を燕三条を拠点に日本全国に広げ、世界に発信できる新たな価値を作り上げていきます」。

DXという概念がない時代から先進的な取組を行い、変革を起こしながらものづくりの価値を高めてきた同社。さらなる変革で「モノづくりとITが融合した新しい社会」を目指し、金型業界を牽引していく。

※2 TCS=Tsubamex Connected System(ツバメックスのDX技術を燕三条の企業間へと展開する構想。複数企業が一体となって受注から生産まで行う仕組みづくりを進めている)

株式会社ツバメックス

Point

▶ 営業から製造まで全工程のデータを一気通貫で繋げた、独自のシステムを構築

▶ IoTを活用したシステムが注目を浴び、システム販売という新規事業に挑戦

▶ 将来の競争力強化を視野に、金型企業同士のシステムや設備の共有、連携を進める

 

企業情報

株式会社ツバメックス NICOクラブ会員

新潟市西蒲区高野宮3283-1
TEL.025-375-4945
URL https://www.tsubamex.co.jp

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