経営とデザインのより良い関係を実現する
「ものづくりをしたくて大阪から来て、最初は3年ぐらいで帰るつもりでしたが、大阪や神戸に比べると新潟の方が可能性があるので残りました。新潟は自然や食も豊かで、東京も近く、クリエイティブの人間にとってはすごくいいところ。もっとクリエイティブの人に入ってきてもらいたいなと思います」と話す堅田氏。
経営の数字を踏まえてクリエイティブを提案
堅田氏が手掛けた仕事を見ると、高級箸メーカーのマルナオのブランディングやプロダクトデザインから、若い女性が集う可愛いサンドウィッチ専門店のプロデュースまで、実に個性豊かだ。
「僕は自分がデザインしたものが“堅田さんっぽいね”と言われるのが嫌なんです」という堅田氏は、その理由を「企業が良くなるためのデザインを作りたいので、マルナオならばマルナオらしいものを作りたい。そのためには経営の数字を含め、プロジェクトの上流から見て、その会社にとって整合性が取れたクリエイティブの実現を、自分の役割として果たしていきたいと思っています」と話す。大阪から新潟のメーカーの社内デザイナーに転職し、原価や利益計算にも携わった経験を踏まえ、「決算書が読めるデザイナー」というのが堅田氏の大きな強みだ。
デザインは魔法ではないし感性で作るものでもない
仕事を進めるなかでは、検討のプロセスや、何をどういう理由で選択したかを説明し、相手が得られるものを明確に示していく。コストをかけてクリエイティブに取り組んでも、効果が分からず相手先が不満を抱くような不幸な関係は作りたくないと話す。「デザインはインフラになり、取り入れないところは勝負できなくなる時代になると思います。しかし、デザインを変えれば課題が解決するということでもない。デザインは魔法ではなく、僕たちに出来るのは100点の商品を“これ100点なんです!”と伝えること。そのためには、作り手が自信を持って良いと言えるものを、愛情持って作っていることが大切です」。プロジェクトでは相手先のそうした本質的な部分にも目を向ける。「共に事業全体を設計・デザインしていくイメージですね」。
実現したいものを作るためにズレを見逃さないことを意識
「サンドウィッチボックスというお店はコンセプトからオーナー、マネージャーと詰めていき、そのベースをもとにロゴ、メニュー、家具、スプーンまで積み上げていきました。全てを積み上げていく段階でズレを生まないようにするのが大事な仕事ですね。また、ブランドを体現する存在であるスタッフの皆さんも参加してもらうことで、社内に良い循環が生まれました。」
デザインと経営をうまくつなごうという方針はNICOのDesign LAB(デザイン・ラボ)とも共通している。デザイン・ラボでは、アドバイザーの一人としてデザイン相談を担当している堅田氏。現在は東京、佐賀、京都、兵庫など、県外の仕事依頼も増えた。「他県に行くと新潟を見直すきっかけになっていいですね」。今後、県内外から海外まで、活躍の場を広げるその姿に期待したい。