クラウド型農業支援システムで農業経営のIT化に貢献
ウォーターセル株式会社
代表取締役 長井 啓友 氏
大規模化する農場が抱える課題をデジタル化で解消
ウォーターセル株式会社は、2011年に設立されたITベンチャー企業。クラウドを活用した農業支援システム「アグリノート」の開発・運営を主要事業としている。
アグリノートの開発は、IPA情報処理推進機構認定の未踏スーパークリエータである長井社長に、NICOの情報戦略チームが「農家が抱える課題を解決できるシステムができないか」と相談したのがきっかけだった。「生産者が困っていたのは農地の拡大化が進み、作業状況などの管理が困難になっていることでした。そこで農地と作業状況を“見える化”した、農業版の業務管理ツールを作ろうと思ったのです」と長井社長。こうして同社は、モニターとして参加した新発田市のそうえん農場からの要望や意見を基に、実証実験を重ねながら約1年かけてシステムを構築。生産者の一番の要望だった「簡単な入力方法」を追求し、シンプルな操作性を実現した。
ITに不慣れな人にもわかりやすく、農作業の負担にならないよう、直感的に操作できるアグリノート。作業記録の入力は項目を選ぶだけ。情報共有によりスタッフ間の作業確認にも役立つ。
生産性向上や履歴管理などデータの蓄積が農業経営の武器に
アグリノートは、GoogleマップやYahoo!地図の航空写真に圃場(農地)を登録することで、圃場ごとに作業記録を管理できる。スマートフォンやタブレットを利用し、現場ですぐに作業内容や生育記録の入力、写真撮影が可能。作業記録は項目を選択するだけ、記録やデータの閲覧もマップ上の圃場をクリックするだけと操作が簡単な上、蓄積したデータを基に、来年度の作業計画や収量向上などの対策を検討することができる。
そうえん農場をはじめ利用農家の中には、アグリノートで記録した履歴データを活用してJGAP認証を取得した農家もある。勘と経験だけでなくデータが蓄積されることで、農業分野での後継者へのノウハウ伝承に役立つという声も挙がっている。
クラウド型水田管理システムは、水田にセンサを設置し水位や水温などを計測。生産者はどこにいてもスマートフォンなどでデータを確認できるため、水田管理の省力化につながる。クラウド型水田管理システムは、水田にセンサを設置し水位や水温などを計測。生産者はどこにいてもスマートフォンなどでデータを確認できるため、水田管理の省力化につながる。
新潟市の大規模農業改革プロジェクトに参画
現在の利用者は無料ユーザーを含めて約800件。今年4月からNTTドコモのサービスソリューションにアグリノートが採用され、さらなる増加が見込まれている。また、近年はさまざまな分野の企業と連携した事業も増え、2015年には新潟市、NTTドコモ、ベジタリアと連携した実証プロジェクトに参画。新潟市の大規模農業改革を目指し、「クラウド型水田管理システム」による、水田管理の省力化や生産ノウハウの蓄積に取り組んでいる。
「今後もアグリノートをベースにした事業を展開していきたい」と長井社長。新潟発の農業支援システムとして、これからも進化を続けながら革新的なツールを提供していく。
「専用センサ、衛星画像などさまざまな観測データを集約し、生産性向上や品質管理に活用する、『アグリノート』を基軸にした複数のプロジェクトが並行して進行中です。JAや食品メーカー向けのシステムにも取り組み始めています」と語る長井社長。
活用企業
そうえん農場
〒959-2411 新発田市横岡1910-1
TEL.0120-330-663
URL http://www.shimojo.tv/
20ヘクタールの耕作地で稲作を中心にいちご、枝豆などを生産する。2010年からアグリノートモニターに参加し、記録した作業データをもとに2012年にJGAP認証を取得。農業分野でのIT経営の取組が評価され「中小企業IT経営力大賞2013審査委員会奨励賞」も受賞した。ネット通販やSNSによる情報発信も積極的に取り入れている。
企業情報
ウォーターセル株式会社
〒950-0911 新潟市中央区笹口2-13-11 笹口 I・Hビル4F
TEL/FAX.025-245-7766
URL http://water-cell.jp/