自家ブランド牛乳の商品化、ソフトクリーム&ジェラートショップのオープンなど、積極的な展開を図っている神田酪農。同社が6次産業化に力を入れる思い、そして今後について、神田社長に話をうかがった。
「おいしいね」の笑顔とともに酪農と消費者が近づく場所づくりを
株式会社神田酪農
代表取締役 神田 豊広 氏
伝統の酪農の担い手として牛乳に価値を与えたい
新潟県の酪農発祥の地と言われる阿賀野市安田地区。ここで大正9年に初代が酪農を始めて以来、約100年に渡って牛と共に歩んできた神田酪農。神田社長は初代の孫にあたり、3代目となる。
同社では昔と変わらず、自分たちのところで種付けをし、子牛を産ませて、血統を繋いでいる。こうした伝統的な飼育を行う牧場は、時代と共に少なくなっているという。また、牛舎は衛生管理が徹底され、新潟県が進める畜産安心ブランド生産農場(クリーンミルク生産農場)にも認定されている。
平成20年、同社では自家ブランド牛乳「やすだ愛情牛乳」を発売。亀田牛乳の宅配商品のひとつとして販売されている。「自分のところで搾った牛乳を飲んでもらいたいという単純な思いが、事業を始めるきっかけでした」と、神田社長は語る。
ソフトクリームもジェラートも牛乳感を重視した味わい。季節限定、地元野菜、阿賀野市名産品とのコラボなどメニューも豊富で飽きさせない品揃えを意識している(写真上)。管理が行き届いたきれいな牛舎では、母牛や子牛を含め、85頭を飼育。予約なしでも見学でき、好奇心旺盛で人なつこい牛たちが迎えてくれる(写真下)。
ジェラートを通して牛乳と酪農の魅力を伝える
国内の酪農が低迷している状況のなか、牛乳の価値を高めたいと思っていた社長は、平成26年にジェラートショップ「みるぱす」を開店。「地元のイベントで仲間と手作りしたジェラートが好評で。牛乳は苦手だという人でも、ジェラートは喜んで食べてくださるのを目の前で見て、こんなに魅力があるものなのかと思いました。周囲からの声援も後押しになって、事業化することにしました」。
店舗は国道から外れた牛舎の隣。「酪農を知ってもらうことが本当の狙い。少し分かりにくい場所ですが、そのため、あえて牛舎の横にしました。牛を見て、ジェラートやソフトクリームを味わっていただいて、酪農に親しんでほしいんです」。
店名の「みるぱす」はミルクパスポートの略で、牛乳・酪農への入り口、という意味が込められている。
「牛乳を飲んだり、ジェラートを食べた人に、おいしいね、と言ってもらえるのがうれしい。生産しているだけでは分からなかった喜びです」と語る神田社長。
公的サポートを活用し夢を形にしていく
開業までには、新潟県6次産業化サポートセンターの支援を活用し、経営、デザインなどさまざまな専門家の力を借りて事業を形にしていった。現在もNICOの広報相談会や食の専門家派遣を利用。「農家なので商売の知識が無いまま、思いだけで走り出しましたが、きちんと教えてくれる方々がいた。本当にありがたかったです」。
昨秋からは開発している新商品は、バータイプのジェラート。資金は、阿賀野市が取り組む「ふるさと投資」というクラウドファウンディング事業で、139人から計315万円を集めた。「出資してくださった方々のためにも頑張らなければと、気が引き締まる思いです」。この商品で販路を広げ、事業を成長させていきたいという同社。日本の酪農の未来のためにも、こだわりの味を発信していく。
ここがポイント
- 歴史ある酪農を守り継ぐ
- 公的サポートを有効活用
- オリジナル度の高い商品の開発
企業情報
株式会社神田酪農
〒959-2215 阿賀野市六野瀬331
TEL.0250-68-4652 FAX. 0250-25-7010
URL http://www.kandarakunou.com