現場一丸となり新たな視点で開発
未来にへぎそばをつなぐ、美味しさと安さを実現した新ブランド
IDSコンペ「新潟県知事賞」をきっかけに、各種メディアに掲載
発売1ヵ月で売上は想定の3倍に
十日町市で乾麺製造、販売を手掛ける玉垣製麺所は、2025年4月に「新潟へぎそば みのりそば」を発売。これは「新潟発ブランド化への支援」を掲げる、ニイガタIDSデザインコンペティション2025において大賞/新潟県知事賞を受賞した商品だ。新ブランドの販売促進力を強化するため、商品デザイン・ラボでPRポイントを客観的に整理。その後、出品したIDSコンペにおいて審査委員からは、商品、そしてマーケティングを含めたプロジェクト全体に対して「隙なく全面的に計算され尽くしている」と、そのデザイン性(意匠と設計力)について評価を受けた。受賞を契機に、新聞など各種メディアに掲載。発売1か月で4万袋と、想定の3倍を超える売上で新ブランドのスタートダッシュを切ることができた。
この先の70年も作り続けられる 新しいへぎそばの開発へ
開発のきっかけは、へぎそばのつなぎ材料である“布のり”の価格高騰。背景には気候変動や漁師の高齢化による収穫量の減少がある。「このままではへぎそばが食べられなくなってしまうという危機感がありました。妻有そば発売から70年ぶりに、新しいつなぎを開発し、製造工程も見直して、この先の70年も作り続けられる、持続可能なそばの開発を目指しました」と玉垣常務は振り返る。
開発は2023年9月から開始。発売日を1年半後の2025年4月に設定。開発・ブランディング・拡販・改善・企画の5つのプロセス担当者からなるチームを結成し、開発に取り組んだ。
玉垣製麺所は鮮度の良いそば粉にこだわり、玄そばの保管から製粉まで自社で行っている。新商品ではそばの豊かな香りを楽しみたいという声からそば粉を5割までアップした。
従来比半分の短期間で「隙のない新ブランド」を開発・販売へ
チーム一丸での動きと、AI活用が成功のカギ
1年半で商品化に成功した背景には、全員が完成イメージを共有し、ゴールに向かって各部門一斉に進めていったという背景がある。「私が以前、自動車部品メーカー勤務で経験したノウハウが活かされています。チームで行わなければ、2~3年はかかっていたと思います」。
大切にしたのは、戦後の食糧難の時代に創業者が掲げた「美味しい物を安く食べてほしい」という企業理念。まずは価格。SNSのフォロワーへのアンケートを行い、価格帯や競合商品と差別化するポイントを徹底的にリサーチ。税込み298円という販売価格を決定した。次に味。持続可能性の高い新しいつなぎを使いつつ、滑らかでコシのあるそばを実現した。新たなつなぎ作りは成分解析など社内で一から試行錯誤し、麺の仕上がりとの調整など、一連の開発のなかで最も苦労した工程だったという。併せて、麺の形状は、消費者からの要望に応え、食べ応えのある平打ちに。そば湯も楽しみたいという声も多かったことから、従来品より40%の減塩を実現した。
商品名は社内公募で決定。未来に向かっていく明るく優しさを感じるネーミングが選ばれた。
スピードアップにはAIの力を活用した。パッケージは伝統のロゴを継承し、雪洞でへぎそばを食べていた3兄弟がのびのびと過ごすイラストに。これは生成AIで原案を作り、デザイナーに仕上げてもらったもの。高級過ぎず、価格に見合う親しみやすさ、素朴さや温かさを表現した。盛り込む文章はテキストマイニングを使って、消費者に響く言葉を選んだ。
創業から70年培われた社内のノウハウを活かしながら、チーム一丸の努力、AI活用など、様々な革新により、みのりそばは短期間で完成したのである。
社員6名による開発チームを編成。麺の官能検査も繰り返し行い、試作品を作るたびに食味チェックを重ね、納得のいく味を定めていった。
競合と差別化し売り場でも目を引くピンク色が基調のパッケージ。3兄妹の真ん中・みのりちゃんは、みのりそば誕生物語をつづった絵本風しおりでも活躍。
「みのりそば」で使われている新つなぎは、70年続いてきた製造レイアウトの効率化にも寄与。8つの無駄をなくすことでコストを削減。
商品デザイン・ラボで練り込んだ「みのりそば」のPRパネル。この視点はHPにもフィードバックされている。
企業情報NICOクラブ会員
株式会社玉垣製麺所
【 乾麺製造・販売業 】
十日町市高田町六丁目688-2
TEL.025-752-2563
URL https://www.tsumarisoba.co.jp/
1953(昭和28)年設立。乾麺のそば・うどんの製造販売を手掛け、代表商品「妻有そば」は日本蕎麦保存会主催の「おいしいそば乾麺大賞」で4年連続グランプリを受賞。