地方中堅・中小企業のDXを新潟から支えていく
2000年の創業以来、販売管理や経理システムの開発などのIT事業を展開しているトラスト。2022年頃からは中堅・中小企業のDX支援に注力し始め、コンサルティングからシステム導入、伴走サポートまでを手掛けている。ポイントはクラウドコンピューティングサービス「AWS」を活用したシステム開発。中堅・中小企業にマッチしたやり方で、地方におけるDXを加速、推進していきたいとしている。
「デジタルの技術は日々進んでいて、IT企業でもその変化に対応すべく、必死に取り組んでいる時代です。専門の支援パートナーと一緒に取り組むことで、最新の形でのDXが実現できると思います」と話す品田副社長。
クラウドを活用したDXは、中堅・中小企業にマッチしている
トラストの品田副社長は、東京のIT企業を経て2019年に入社。前職でクラウドコンピューティングサービス「AWS」を活用したシステム開発に携わってきた経験から、その利便性を実感していたという。「サーバーを購入し、独自のシステムを組んで入れるやり方と比べると、クラウドは使った分だけお金を払えばいいため大きな初期投資もいらないですし、開発もスピード感を持って行えます。これは中堅・中小企業の現状にマッチすると思ったことが、DX支援に力を入れ始めたきっかけです」。
地方でDXが進んでいない理由として、「知らないからできない」「やりたくてもどう進めていいか分からない」という経営者が多いからだと感じている。「社内にエンジニアがいないと出来ないものですが、エンジニアの採用はなかなか難しいですし、社内での育成も難しいと思います。我々がそういう社員に代わって役割を担うという形で、伴走してDXを進めていきたいと思いますし、パートナーとして我々を選んでいただけるような存在になっていけたらと考えています」。
そうした取組が評価され、昨年度、年1回開催されるAWSパートナーアワードの、いわば最優秀新人賞に当たる「SI Rising Star Partner of the Year 2023」を受賞。注目も集まる中、新しい技術を提供していく存在として、幅を広げていきたいと意気込んでいる。
▶トラストが受賞した「SI Rising Star Partner of the Year(2023)」は、その年に1社のみ選ばれるもの。AWS関連システムインテグレーター事業において、関連ビジネスの成長・案件創出、AWS事例作成などに寄与し、地方における AWSビジネス促進に取り組んだことが評価された。
AIやIoTを組み込みながら、新たな価値を共創していく
「利益のタネ 共創カンパニー」を経営理念に、ITを通して不便を改善するだけでなく、新しいサービスや価値を、共創しながら作っていく、ということを大切にしてきたトラスト。昨年から、中堅・中小企業向けDXサービス「金のタネ」の提供を始めた。AIやIoT技術を組み入れ、企業情報の利活用や工場の業務の見える化、在庫管理の効率化といった、さまざまな課題をデジタルの力で解決。その先に、お客様の新たなサービスや商品を生み出していくお手伝いをしていく、という思いが「金のタネ」の名前に込められている。
小千谷市にある米菓メーカーでは、製造設備について、故障する前に出る異常音を熟練者が聞き分けていた。しかし、常にその社員がいる訳ではないため、標準化が課題になっていた。そこでトラストがAWSのサービスを活用し、AIによる機械学習によって、異常音を検出できる故障予知システムを構築。同社のスマートファクトリー化への第一歩となった。
そのほか、設備機器メーカーとは機械のIoT化を進め、メーカーが導入先に足を運ばずともメンテナンスができるような仕組みを、さらに建設系企業とはトラックの位置管理システムなどを構築中で、いずれも新しい価値を生み出す取組になっている。
お客様から「こういうことをやりたい」といった要望が寄せられ、それに対して提案、検証していくケースが多いという。「DXについては、一緒に作り上げていこうという姿勢を感じるお客様は、順調に進む印象があります。システムは作っただけでなく、常に改善していかなければならないので、一緒に進めていく気持ちや社内の体制づくりはやはり大切だと感じます」。
■金のタネ 支援事例
米菓メーカーに対し、AIによる異常音検出で設備故障を検知するシステムを開発。AWSのAWS IoT Core、Amazon Sagemakerというサービスを活用している。コンベアの異常音を捉える機械学習モデルを使ったシステムにより、機械の故障の兆候を察知。生産ライン停止のリスクを低減し、機械の見回り作業を短縮できるなど省人化にもつながった。開発から導入までにかかった期間は約半年。このスピード感も魅力だ。
デジタル化が進んでいないなら、逆に今が最大のチャンス
中堅・中小企業のDXを成功させるために、トラストが重視しているのはスモールスタート。「新潟県内のお客様を見ていると、やはりまだクラウド利用に対してハードルが高いように感じます。外にデータがあるなんて怖い、大丈夫なのか、という感じですね。そのあたりの気持ちを払拭してもらうためにも、まずスモールスタートでクラウドを試してもらうことを大事にしています。大丈夫だと思ってもらえると、企業側からやりたいことがどんどん出てくるようになります」。もっと言えば、クラウド化はもう必須だと考えた方がいい、と品田副社長。「クラウドは産業革命レベルだと言われています。そこをご支援したいと思います」。
一方、技術が進化したからこそ、まだ何もしていない企業にとっては大きなチャンスだと話す。「地方はデジタル化が進んでいない中堅・中小企業が多いと思いますが、見方を変えると中途半端にやっているより、何もないほうが一気に最新になれます。手書き入力だったものも、パソコンで打ち込む段階を飛び越えて、音声入力にしてしまうことが出来る。そういう意味では、何もしてないのは強みでもある。それを理解して、経営者が旗振りをして、推進していくことが大事だと感じます」。
中堅・中小企業が抱えるDXに対する課題は、新潟県に限らず、多くの地方が抱えていると話す品田副社長。需要も高いことから、今後は社員数を増やし、東京オフィスの他にも拠点を増やしていきたいとしている。「クラウドを使えるIT企業が東京に集中していて、地方にはまだまだ少ないのが現状です。そこを新潟から広く支援していけたらと思っています」。
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