株式会社エステーリンク

2021年06月01日
IT導入NICOpress176号セミナー・講座

モノの所在の”見える化”で
生産体制とサービスを変革

1973年創業のエステーリンクは、加工から組み立てまで一貫生産による精密板金溶接加工をはじめ、国内外で高い評価を受ける「バリ取り機」の開発で知られる企業。数年前からIoTを活用し、生産システムを改善してきた。今回、NICOの講座に参加し、生産体制の改革へ新たな取り組みを進めている。

取締役 技術・設計 斎藤 文昭 氏/PGリーダー 片桐 健太 氏
取締役 技術・設計 斎藤 文昭 氏/
PGリーダー 片桐 健太 氏

「強化塾で学習したことをきっかけに、また新たなスキルを身につけたい。これからシステムを稼働させて得たデータをもとに今後に繋げていきたいですね」と片桐氏(写真右)。斎藤取締役(写真左)は「来年には工場がさらに2つ増えるので、なるべく人が動かずに全体を把握できるようにする改革は大事だと考えています」と話す。

IoTビジネス実践力強化塾に参加
課題を明確化し改革に着手

精密板金加工をはじめ、バリ取り機や集塵機の製造・販売、溶接用定盤の販売を手掛けるエステーリンクは、NICOが主催する令和2年度「IoTビジネス実践力強化塾」に参加。“モノの所在の見える化と伝達システムの構築”に取り組んだ。「2018年に、工場にある機械の稼働率を自動で取得するシステムを導入しました。今後も積極的にIoTを取り入れたいと思っていたところ、強化塾の紹介があり、何か得るものがあるのではと思い参加することにしました」と斎藤取締役は話す。
同塾の講義に参加した斎藤取締役とPGリーダーの片桐氏は、IoT活用を通じて何を実現したいのかを明確にするため、自社の課題を抽出することから始めた。「生産工程で起きている不具合を細かく洗い出し、課題を見つけ出していきました」と片桐氏。そこで見えてきたのが、モノの所在が分かりにくいことによる作業効率の低下だった。
「当社は大小さまざまな材料を扱う上、各工程を5つの工場で進めていくため、作業者が次の工程に取り掛かる際に“この物件の仕掛品が今どこにあるのか”が分からなくて探し回ったり、至急対応品の指示が現場に行き渡りにくいケースがありました」と斎藤取締役。そこで、どの現場からもモノの所在や工程が把握できるようなシステムを構築することで、無駄な移動をなくし、作業を効率化。納期遅れの防止と、社員が段取りよく仕事ができることで、お客様と社員両方の満足度が向上することを目指した。

 

バーコード方式を採用
モノの所在と状況を見える化

モノの所在を把握するためにいくつかの方式を検討した結果、「すでに運用していた伝票のバーコードを使えばコストも低く、我々の力でも実現できるのではないかと、講師の方々と相談して決めました」と斎藤取締役。この方式は、各工場入口のチェックポイントにバーコード読み取り機とカメラを設置し、台車に仕掛品を載せた作業者が伝票のバーコードをかざすと、自動で工場に入った日時や製品画像が保存されるもの。また、取得した情報はクラウド上で共有。工場内のモニターや事務所のパソコンでも確認ができ、社外にいる営業担当者が顧客から質問を受けた場合も、状況を見て対応ができる。
「苦労したのは、何をすべきか明確になった後、それをどうやって実現させるのかということ。マイコンに書き込むプログラム、付随するバーコードリーダー、カメラなどを目的に応じて作動させ、さらにクラウド上に上げるデータをどう引っ張ってくるのか、その仕組み作りでは講師やNICOの方々に助けていただきました」と片桐氏。一般的なプログラミングは初めてだったが、強化塾を通じて試行錯誤しながらシステムを完成させた。
「IoTは外部に委託するしかないと思っていましたが、社内でも実績ができたことで今後の可能性が見えてきました。そして、弊社の生産プロセスにおいて、工程間でおきてしまう、隔たりのような部分を無くしていくことが大事ということが学べました。まだまだ社内で取り組むべき課題が見つかりましたので、今後改革していきたい」と斎藤取締役は話す。

 

モノの所在の見える化と
伝達システム

作業者は工場から工場へ仕掛品を移動する際、チェックポイントでバーコードをかざす。工程の動線上でデータを集めることで作業者の負担にならずに運用できることもポイント。

物件番号と撮影日時、製品の画像データを収集

 

どの物件がどの工場にあるのかを見える化

 

物件追跡システム
特定物件の足取りを追いたいときに、工場間を移動した日時や、現在の場所などが一目で分かる。
物件分布状況
現在どの工場にどれだけの物件があるのか全体を把握できる。

 

バリ取り機のモニタリングで
管理サービスを変革

斎藤取締役はこれから強化したい市場に環境関連製品をあげる。「当社では最近、溶接ヒューム用の集塵機を開発しました。金属の溶接の際に出るヒュームという細かい粒子が人体に影響を及ぼすことが分かり、規制が厳しくなっています。今は具体的な予定はないですが、こうした集塵機にもIoT機器を搭載して運用していく可能性は十分あると思います」。
このような労働環境の改善を図る装置は今後のモノづくりに重要な役割を担うと考えられる。同社はすでに、主力商品であるバリ取り機のモニタリング管理も進めている。これは全国各地にあるバリ取り機にIoT機器を設置し、機械の状態や稼働状況を把握するシステム。故障の予兆検知が可能になり、異常が起きてから対応するのではなく、事前にアナウンスして計画的な復旧ができる。そして、部品の消耗状態を見ながらメンテナンスをアプローチして、より効率的な対応とユーザーサービスの向上に繋げたいという。
この他にも、在庫製品の管理や人の入出を見える化し、生産性向上につなげることも計画中だ。同社の生産体制やサービスのさらなる改革が注目される。

バリ取り機の稼働時間やブラシの摩耗量などのデータを自動取得し、ユーザー管理サービスを強化。遠方への急な出張や、感染症禍における接触を減らせるなど、社員の負担軽減にもつながる。

 

ポイント
  • 優先すべき改革から着手し、低コストでシステムを導入
  • システムの自社開発に取り組んだことで、社員のスキルアップに
  • IoT技術で装置のデータを収集し、新たなサービスと効率的な業務体制を実現

 

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