有限会社たちばな

2017年08月03日
NICOpress140号マッチング支援新事業展開新商品開発販路開拓

老舗の味噌醸造会社を事業継承し、2009年に設立した有限会社たちばな。スローフードの理念に感銘を受け、地域伝統の味を大切にしながらも自由な発想で商品を生み出す同社の南社長に、これまでの取り組みや今後について伺った。

スローフード精神をベースに伝統の味噌や漬物、新感覚の商品を発信

有限会社たちばな
代表取締役社長 南 直樹 氏

100年以上の歴史ある味噌蔵を継承し新事業に挑戦

味噌、漬物などの発酵食を製造販売する有限会社たちばなは、株式会社丸菱電子のグループ会社として設立。金属熱処理の会社が食の分野に参入したきっかけは、地域の伝統的な食文化を大切にするスローフード精神に着目したことだった。「長引くデフレと低成長の中、先代の父が“これからは地域や歴史を大切にすることが、良いモノづくりにつながる。それがスローフードだ”と言って、社内に食品加工部を作ったのです」と南社長。2000年から味噌漬けなどの製造を始め、「NPOスローフード新潟」にも加盟するが、仕入れ先だった老舗の味噌醸造会社が廃業の危機を迎える。「そこで当社に事業継承の話があり、2009年に“たちばな”を立ち上げました」。

南直樹
スローフードの発祥地イタリアに魅せられ、頻繁に訪れている南社長。長岡の味噌の味や技術を通じて豊かな日本食の価値を世界へ発信している。「イタリアはチーズやピクルスなどを食べるため、同じ発酵食である味噌も試してもらうと反応はいいです」。

固定概念がないからこそ今までにない商品が生まれる

「地産地消」を大切にする同社は、国産や新潟県産、長岡産の原料にこだわっているのが特徴。6年前からは自家農園で長岡巾着茄子や梨茄子、たい菜など長岡の伝統野菜を栽培し、辛子茄子や漬物に使用している。

看板商品の味噌は、伝統製法で作るベーシックな味噌をはじめ、個性を打ち出したプレミアム味噌や雪室熟成味噌『ほぅ味みそ』などを展開。味噌を使ったスイーツ、チーズの味噌漬けなど現代にマッチした新感覚の商品も好評だ。「“絆”という商品は業界初の製法で作った味噌で、賞もいただきました。私を含め若いスタッフたちも味噌に対する固定概念があまりないからこそ、今までにない商品を生み出せるのだと思います」。

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創業当時からの製法を守る米味噌「壱縁(いちえん)」と浮麹味噌の「伍縁(ごえん)」。味噌では珍しい瓶詰めで、スタイリッシュなデザインのパッケージなど、商品のイメージ作りにも力を入れている。

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長岡野菜を代表する「長岡巾着茄子」の辛子茄子は、昔から地元で愛されてきた「おばあちゃんの味」を再現。味噌漬けも、あえて昔ながらの「しょっぱい味」を大切にしている。

食文化を発信できる場所を10年かけて実現したい

同社はNICOの「食の大商談会」などに参加し、首都圏を中心に販路開拓を推進。また、イタリアのスローフード展にも出展するなど、海外進出も将来の視野に入れている。

一方、長岡市内の丘陵地に新たな漬物工場が完成し、2017年から稼働する。「漬物工場から始まり、加工場、イタリアンレストラン、直売所、雪室など、多目的機能を持った“メルカート・デル・フェッロ(鉄の市場)”という施設を約10年かけて作る予定です。鉄産業から始まった当社の食へのこだわり、地産地消などを発信できる場所にしたい」。南社長の情熱が集約した食の拠点から、越後長岡の食の魅力が世界へ広がっていく今後に注目したい。

ここがポイント

  • スローフード精神に着目し、食の分野に参入
  • 伝統の味を守りつつ自由な発想で商品を開発
  • 多目的機能を持つ食文化の拠点を構想

企業情報

有限会社たちばな
〒940-1154 長岡市宮栄3-5-18
TEL.0258-32-1533 FAX.0258-37-2818
URL http://misodama.jp

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