YSEC株式会社【連携によって積み重ねた研究を基盤に市場にない水素混焼タービン発電機を開発。】

2026年04月17日
NICOpress205号新商品・新技術開発補助金

連携によって積み重ねた研究を基盤に市場にない水素混焼タービン発電機を開発。

YSECは山之内製作所のグループとして航空機・医療・防衛・宇宙関連で求められる高精度部品加工を担う精密加工メーカー。10数年前から産学官連携・産学連携に積極的に取り組み、先進的な技術開発に注力。大学や企業と関係性を築き、さらなる技術革新に挑戦している。

開発室 室長 阿部和幸 氏 / 開発室 係長 黒川将太 氏
開発室 室長 阿部和幸 氏
開発室 係長 黒川将太 氏

Go-Tech事業の研究開発を牽引した、開発室の阿部室長(写真右)と黒川係長(写真左)。

 

連携事例 YSEC株式会社×新潟大学工学部×有限会社小林製作所

大型ドローンの長距離物資輸送を実現するための
水素混焼タービン発電機の研究開発

ドローンのプロペラモーターへの電力の供給源として、バッテリーや燃料電池を上回る能力を持つ水素混焼タービン発電機を開発し、「重い物資を素早く遠くへ届ける」ことが可能な大型物流ドローンの実現・普及を目指す。

水素混焼タービン発電機

 

小型ジェットエンジンの開発が産学官連携の始まり

YSECは親会社である山之内製作所が本格的な航空機産業参入を目指し、2004年に設立。難削材・高精度加工を武器に、航空機器およびエンジン部品の製造を主力としている。

同社はこれまで大学や研究機関、企業と連携した先端領域の技術開発に取り組み、実績を積み上げてきた。「平成22年度のサポイン事業(※)が、当社が一番最初に取り組んだ産学官連携です」と阿部室長。その後、平成25年度のサポイン事業では、平成22年から始めた無人飛行機用小型ジェットエンジンの研究開発で得た成果を基に、実用化に向けて難削材であるチタンアルミ合金の高精度な切削技術を確立。産業技術総合研究所、新潟大学、佐渡精密、小林製作所などと連携し、軽量・高効率なターボジェットジェネレーターを実現させた。

また、令和4年度にNICOの次世代産業技術創出支援事業を活用し、新潟大学と連携して大型ドローン搭載用の水素混焼タービン発電機の基礎研究に着手する。「高速回転の発電機は高効率で軽いのが特徴。小型化でき、軽いというメリットをドローンの動力源に活用できないかという研究を数年前から進めていたのですが、弱点は燃料の消費量が多いことでした。そこで水素を従来の燃料に混ぜて燃やすことで燃費を改善できるのではというアイデアが生まれ、この支援事業で実際に水素の混焼が可能なのか、効率が上がるのかという研究を行いました」。

※サポイン事業(戦略的基盤技術高度化支援事業)/中小企業等が大学や公設試験研究機関と共同で行う「ものづくり基盤技術の高度化」につながる研究 開発の取組を、最大3年間支援する中小企業庁の事業。(令和3年度まで)

 

水素混焼タービン発電機を搭載した大型ドローンのモデル機

水素混焼タービン発電機を搭載した大型ドローンのモデル機。バッテリーのみでは航続距離が限られるが、バッテリーよりもエネルギー密度が高い水素混合燃料を使用するため、長距離飛行が可能に。

水素混焼タービンエンジンの回転ユニット

水素混焼タービンエンジンの回転ユニット。燃焼後、高温になるタービン動翼(左側パーツ)には、耐熱性の高いインコネル合金を使用している。YSECが持つ難削材の高精度切削技術が加工に活かされている。

 

基礎研究の成果を基に Go-Tech事業(※)で製品化を目指す

この基礎研究を基盤に、「大型ドローンの長距離物資輸送を実現するための水素混焼タービン発電機」の製品化に向けて、令和5年度のGo-Tech事業に採択され、新潟大学、小林製作所との連携で研究開発を進めた。「以前の研究でお世話になった新潟大学工学部の松原教授に最初にお声がけしたのですが、今回の研究テーマであれば、同じ工学部の山縣准教授が適任ではないかということで紹介いただきました。また、小林製作所さんも小型ジェットエンジンの開発からチームとして取り組んできたので、板金加工や溶接の高い技術を持つことは知っています。今回はエンジンの中の燃焼器に板金溶接技術が必要となるため連携をお願いしました」。両者ともサポイン事業から続く繋がりがあったことで、スムーズに研究開発に着手することができたという。

「基礎研究では、水素を混ぜたときにどのように燃焼するかを、新潟大学の知見で可視化することができました。Go-Tech事業ではさらに可視化を高度化し、水素の混ぜ方を何パターンか試して効果を立証し、水素を混焼する部分のノズルや燃焼器の試験も行っていただきました。小林製作所さんには、そのノズルや燃焼器の製造と提供を依頼し、かつ、当社が製造するタービンエンジンに組み込む、一番いい状態の燃焼器を作り込んでもらいました」と阿部室長。それぞれの連携先と地域的な距離も近いことから極力足を運び、実験にも同席するなど、対面でのコミュニケーションを大切にしたという。「当社はモノ作りは得意ですが、“なぜ、そうなったのか”という仮説を立てたり、計算式でシミュレーションするというアカデミックな面については力不足なので、こうした部分を大学にお任せできるのも産学連携のメリットだと思います」。

※Go-Tech事業(成長型中小企業等研究開発事業)/中小企業等が大学・公設試等の研究機関等と連携して行う、事業化につながる可能性の高い研究開発、試作品開発及び販路開拓への取組を、最大3年間支援する中小企業庁の事業。(令和4年度から)

 

開発室には専用の燃焼試験施設「エンジンテストセル」を備えている

発電機の性能テスト

開発室には専用の燃焼試験施設「エンジンテストセル」を備え、発電機の性能テストを実施。

 

開発室は阿部室長を含めた3名が所属

開発室は阿部室長を含めた3名が所属。外部との連携で得た技術・知見を開発に活かす。

新潟大学工学部の山縣准教授

新潟大学工学部の山縣准教授を中心に、燃焼テストを実施。水素の混ぜ方を何パターンか試し、その効果を立証した。

 

災害時や物流課題地域の輸送に貢献する大型ドローンの実現へ

Go-Tech事業は令和7年度に終了し、最終目的である開発したタービンエンジン発電機で大型ドローンを浮上させることに成功した。「今回の研究開発をメインに担当してくれた開発室の黒川係長に、新潟大学や小林製作所さんなど技術的な相談ができる仲間ができたことも、連携して良かったことの1つだと思います。外部の方々とのやりとりが、若手の成長に繋がってくれたのではないでしょうか」。

今回の連携で得た成果を基に、実用化に向けた研究開発をさらに推し進めていく予定だ。「将来的に長時間、長距離の物資輸送ができるドローンが必要になるということで、その根源となった小型ジェットエンジンの開発からここまで進んできました。大型ドローンは災害時の支援物資の輸送に活躍できるので、被災地や離島などに飛べるように、まずは飛行試験を重ねていかないといけません。そして事業化に向けて、製品として耐えうるものを作り上げていくことが必要です。また、今後はドローンメーカーに対して、開発したユニットを発電装置として販売することも視野に入れており、将来は事業の柱の一つになってほしいと思っています」。

今後も技術開発や製品化を実現する際には、外部との連携に積極的に取り組んでいきたいという阿部室長。県内の中小企業や大学などとの連携により、高度な技術力とこれまでにない製品を実現してきたYSEC。長年に渡る実績と信頼が、また新たな可能性を広げていくに違いない。

阿部室長

実験の中でのトライ&エラーはありましたが、それぞれが研究テーマに対してうまく進めていただいたと感じます。連携は資金面や工数的な負担もあるため、お互いの立場を尊重し、信頼関係が重要です。(阿部室長)

 

POINT

  • 将来性の高い水素利用技術に着目。環境負荷低減や物流インフラの強化に貢献。
  • 燃焼の見える化システムや混焼条件の研究などのノウハウを持つ大学、高度な加工技術を持つ企業と連携。
  • 連携メンバーそれぞれの得意分野・知見が融合。基礎研究から実用化までをチームで一貫して進める。

 

企業情報

YSEC株式会社

新潟市西蒲区漆山字四十歩割8460
TEL.0256-77-7771
URL https://www.ysec.jp/

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