株式会社悠心【研究開発に投資し自社の技術者で開発・設計。顧客の要望に応える独創的な技術・製品を実現する】

2024年10月09日
NICOpress196号新商品・新技術開発補助金

研究開発に投資し自社の技術者で開発・設計。
顧客の要望に応える独創的な技術・製品を実現する

研究開発型のベンチャー企業として事業をスタートし、これまでにない液体容器や充填装置を生み出してきた悠心。画期的な機能を持つ液体容器として注目を浴びた次世代型液体容器「PID」、充填機をはじめとする各種装置など、包材開発から装置の設計まで社内で行うことができる技術力・ノウハウが最大の強みとなっている。

制御設計部 課長 博士(工学) 井口 大亮 氏 企画開発部 研究開発室 室長・課長代理 澤田 恒輝 氏
制御設計部 課長 博士(工学) 井口 大亮 氏
企画開発部 研究開発室 室長・課長代理 澤田 恒輝 氏
(写真左から、井口課長、丸山常務、澤田室長、小出氏)

「お客様が希望するカスタマイズに柔軟に対応できるというのが、他社との差別化につながっていると思います」(井口課長)。「食品メーカーはどこも省人化という課題を抱えているので、オートスプライサーの販路は弊社の充填機を扱うお客様全てが対象になると思います。食品業界で働く方々の負担を少しでも減らすということも、我々機械メーカーの使命だと考えています」(澤田室長)。

自動充填包装機を主力に
検査装置やフィルムを開発

2007年に創業した悠心は、翌年にR&Dセンターを開設し、液体容器分野においてフィルムの開発から包装・充填技術まで幅広く研究・開発を進めてきた。2009年、開封後も空気が入らないことで内容物の鮮度を保つ世界初の液体容器PID(パウチ・イン・ディスペンサー)(※1)の開発・商品化に成功し、主力事業として確立する一方、近年は充填包装機などの装置開発に力を入れている。

「現在は自動充填包装機“GANSHIN”を主力製品とし、その製造ラインに付随する制御装置や検査装置も開発しています。単一製品として販売するのではなく、お客様の要望を聞いた上で生産ラインに必要な装置を一貫して提案できるというのが弊社の強みです」と井口課長。GANSHINは、同社が開発した「粉砕含浸®シール」(※2)という技術を用いて、固形物入りの液体・粘体食品の充填包装を可能にした装置だ。「調味料やスープなど液体小袋の製造現場では、充填の難易度が高い固形物入りの食品を扱うことが増えており、フィルムを接着する(ヒートシール)部分に液体や固形物のかみ込みが出ることを心配されるお客様もいます。そうしたニーズに応えて開発したのが、シール状態をリアルタイムに画像検査し、不良を検出する“充填支援システムFSS”です」と澤田室長。検品作業にかかる手間を大幅に削減し、不良を早い段階で検知し機械を調整することで、生産効率を高められる。また、目視では確認しにくいアルミ蒸着フィルムの検査も可能。他にも粉砕含浸用の専用包装フィルム「ERフィルム」の開発など、新たな装置・素材開発に次々に取り組んできた。

※1 液体容器PID
メタバース開発に取り組む様子

※2「粉砕含浸®シール」/固形物が入った液体・粘体食品を充填する際に、フィルムに固形物をかみ込んでしまうことを防ぐ特殊なヒートシール(熱によってフィルム同士を接着させる)方法

 

 

生産効率を向上させる
自動フィルム原反交換装置

さまざまな顧客のニーズを実現化してきた同社が、NICOのイノベーション推進事業を活用して開発に着手したのが、自動充填包装機を停止せずにフィルム原反を交換できる装置「オートスプライサー」だ。「お客様から“悠心さんなら作れるでしょ。作ってほしい”と言われたのがきっかけで、販売計画を含めてNICOさんに相談に乗っていただきました」と井口課長。開発の背景には顧客の切実な悩みがあった。

近年、食品製造業界でも人手不足は深刻な問題であり、機械化や自動化によって生産効率を向上させる体制の構築が急務になっている。包装食品の製造現場では、包材となるフィルム原反を使いきる度に充填機を停止させ、オペレーターが新しいフィルム原反に交換していたため、時間や包材のロス、充填する製品そのものの損失が発生していた。「機械を停止させている時間は商品を生産できません。機械を止めず、フィルムを走らせ続けることでタイムロスや生産ロスを減らし、連続生産できるオートスプライサーは非常に需要が高いといえます。また、フィルムを交換する作業も煩雑で大変なので、いかに人が行う作業を楽にできるかという点でも自動化・省人化を求める企業は多いです」と澤田室長は話す。

これまで新旧のフィルムを繋ぐ際には手作業でテープを貼り、再度調整を行ってから充填を再開していたが、この装置ではフィルム同士を熱で融着させるヒートシール方式を採用。あらかじめ装着しておいたフィルムが自動で交換され、数秒程度で融着するため大幅に時間を短縮でき、連続的に製品を量産することができる。「フィルムの構成や厚み、幅が違っても、同じ時間で交換できるように精度を高めていくことを追求しました」と井口課長。完成前から顧客の要望もあり、現在も引き合いが多数来ていることから、今後はGANSHINを導入している企業を中心に営業活動を展開していく予定だ。

生産性の高い液体充填ラインをコーディネート

自動充填包装機「GANSHIN」と制御装置の説明

自動充填包装機「GANSHIN」

固形物が入った液体・粘体食品を充填することができる自動充填包装機「GANSHIN」。粉砕含浸用包装フィルム「ERフィルム」や、充填時に固形物のかみ込みを防ぐ、特殊なヒートシール方法「粉砕含浸®シール」を開発し、より生産性の高い、安定した製造ライン構築する。

液体小袋のサンプル 液体小袋のサンプル

Aフィルム(軟包装材料)への充填・包装は液漏れなどのリスクもあり、高い検査精度が求められる。リアルタイムでヒートシール部の不良を検知する検査装置「充填支援システムFSS」を導入することで、1分間に200袋もの速度で生産される液体小袋の検査工程を大幅に短縮できる。

オートスプライサー

オートスプライサーはエッジセンサを用いて新旧のフィルム原反を自動で調整、熱圧着するため、新しいフィルム原反を交換部にセットしておくだけで自動的に交換できる。フィルム原反の交換に伴うロスを削減。

フィルム原反

原反交換部にセットされたフィルム原反

装置の画像

装置の設計から開発まで技術者が一貫して対応。部署が分かれていても、開発に関わることを基本としている。

 

スピード感のある開発と対応で
顧客との信頼関係を築く

悠心は「開発は社内、製造は社外」というスタイルを貫いており、「どこの部署であろうと、“こうしたい”と社員が言うことに対して、会社全体が動く体制になっています」と澤田室長。柔軟な開発環境があることで発想を形にするまでのスピードが速いことが強みだ。

「装置や製品のトラブルでお客様が困っているときは、可能な限りのスピード感で対応することを心がけています。その時対処できなくてもお話しだけ聞きに伺うなど、お客様との信頼関係を大切にしています」と井口課長。営業や開発も行う二瀬社長の、“困っているお客様がいたら我々が助ける”というスピリットを指針とし、顧客との信頼関係を積み重ねてきたことが、「悠心なら何とかしてくれる」という評価につながっている。

これからの食品製造業界は工場の自動化がさらに進むことから、「検査装置やオートスプライサーなど充填機周辺の開発から、工場の生産ライン全般に関わる開発へ広くアプローチしていきたい。そして省人化や、省スペース化の実現にも取り組んでいきたい」という。研究開発型の企業として基盤となる技術力を活かしながら、独創的な切り口で食品包装の現場に新たな価値を提供していく。

 

POINT

  • 顧客のニーズをヒントに課題解決につながる装置やシステムを開発し、充填ライン全体をコーディネート。
  • 省人化・自動化を追求し、食品製造業界の人手不足に対応。
  • 多くの社員が開発に関わる社内体制を構築。発想から具現化まで短時間で実現。

企業情報

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TEL.0256-39-7007
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