受け継がれてきた 「一歩先を見る」老舗の風土
山田醸造株式会社
代表取締役 山田 克司 氏
代々の当主がそれぞれに 先駆的な経営を行う老舗
素材にこだわり、丁寧に仕込んだ醤油・味噌を製造販売し、その味が全国の消費者から支持されている山田醸造株式会社。明治24年創業、現在当主を務める山田社長で5代目という老舗蔵元だ。
3代目は「新潟で客の取り合いをするよりも、関東へ出よう」と販路を拡大し、また、いち早く通信販売を手がけたという。先代である4代目は研究者肌で、商品開発に力を入れ、出汁入りなどさまざまなタイプの醤油や、原材料にこだわった味噌、糀の甘酒などを開発し、現在の商品ラインナップの基礎を築いた。
そして山田社長の代では、販売のチャネルを拡大。カタログ通販やネット通販、健康食品ショップとの取引などを一歩先に取り組んできた。このように、同社では代々の経営者がその時代に合わせて積み重ねてきたものが確実に受け継がれ、今がある。
「先代が力を注いだ品質の良い商品を提供する、ということを守るのも私たちの仕事です」と語る山田社長。
メンバーシップが会社を成長させる力
山田社長自身は、「自分を社長とは思っていない」と話す。「会社に対してはメンバーシップという想い。例えば、僕には工場長の仕事は絶対にできない。相手を信じて、皆で一緒に仕事をしているということです」。
一方で、山田家に婿に入る前は東京のマーケティング会社などで働いていたという社長の先を読む感覚は山田醸造の経営に活かされてきた。女将の正子さんは「社長は“何かを変えると良いことがやってくる”ということを何度か話していました。実際、あの時に変えておいたことのお陰でチャンスが巡ってきたとか、機械の導入を機に大きな注文を受けることができた、ということがありましたね」と振り返る。
山田社長は「時代の流れをどう読み解けばいいのか、ということは難しい。いまの自分にできるのは、60代の自分に照らし合わせた食習慣を考えたり、和食の基本である味噌汁が日本の家庭で復活してほしいということ。そこから商売に役立つことを引き出してくれるのは、女将や息子です」と話す。
チームワークでおいしい商品づくりとお客様へのサービスに力を注ぐ山田醸造の社員の皆さん。
伝統食品の未来を広げる視野を持つ
同社のポリシーは、「まずは良いものを作り、味を守っていく」こと。女将は「自分が我が子に食べさせたいと思うものでなければ、売ってはいけないと思っています。食べていただいた方に、おいしかったよ、と言っていただくためには、自分たちが食べておいしいと思うものでなけれれば」と話す。
そして、今後について山田社長は欲しいと思ってくれる人に、いかに存在を伝え、商品を届けるかが重要だと語る。「今後、海外でも和食に関心を持つ人がさらに増える。TPPによって可能性も出てきますし、グローバル化をどのように形にしていくかが課題でしょう」。
その海外展開は、営業企画を担当する後継者の弥一郎さんが商談会に参加するなど、すでに動きを始めている。また、女将は和食以外のメニューにも味噌を隠し味に使うレシピを紹介するなど、味噌や醤油の可能性を広げる提案をしている。
まさにチームワークで、伝統を変えず良いものを作り、革新的な方法で求める人のもとへ商品を届けていく同社。常に一歩先を見つめる姿勢で、これまで同様、時代を切り拓いていくに違いない。
コシヒカリ麹を使った味噌「豪農」、新潟産エンレイ大豆と新潟米で仕込んだ米みそ「延齢」。ともに材料にこだわっている人気商品。
企業情報
山田醸造株式会社
〒950-3321 新潟市北区葛塚3119
TEL.025-387-2005 FAX.025-387-2135
URL http://www.e-misoya.com/