サスティナブルを理念に
人と街、地球にやさしい家づくりを実現
ナレッジライフは「人と街、地球にやさしい家づくり」をビジョンに、新潟で自然素材を使った、永く住み継いでいける住まいを提供する住宅メーカー。経営者、社員全員でSDGsの意識を共有し、家づくりを通して持続可能な社会の実現を目指している。
「いわゆる“SDGsウォッシュ”は、社内の担当者だけでSDGsを進めようとすると起きやすくなります。行動に責任がとれないので、どうしても限界が出てくるからです。まず、経営者がビジョンを示し、担当者と一緒に目標に向かって進んでいくことが大事だと思います」と話す中村代表。
自社の取組がSDGs各目標のどこに貢献しているかを整理
「サスティナブル・持続可能」を家づくりの理念としているナレッジライフ。同社がSDGsに取り組むきっかけとなったのは、2014年に環境問題を学ぶ北欧ツアーに中村代表が参加したことだった。
「当社はもともと健康に良い家を造りたいという思いから、一貫して国産木材を使ってきました。ただ住宅業界全体としては海外の安い木材を大量に使うため、住宅を造ることが環境破壊に繋がると言われてきたのです。この北欧ツアーで、“ナチュラル・ステップ”という持続可能な社会への解決策に貢献する国際NGOの先生方から世界の状況や先進的な活動を教えていただき、自分たちが何をすれば持続可能な社会の実現に貢献できるのか、もっと勉強しなければと思いました」と、中村代表。
ツアーから帰国後、2015年に国連でSDGsが採択されると、専門の外部コンサルタントを招き、社内で勉強会を実施。SDGsの基本的な理念や知識を社員全員が学んだ上で、選抜メンバーによる「SDGs推進委員会」を立ち上げた。「委員会で最初に取り組んだのは、我々が今行っている事業がSDGsの17の目標のどれに貢献しているのかを検討する“後付けマッピング”という作業でした。そこで、当社がビジョンとして掲げている『人と街、地球にやさしい家づくり』に通じる取組が、いくつかの目標に当てはまっていることが分かりました」。
理想とする未来を見据えて永く住み継いでいける家を造る
同社はSDGsの理念を基にした「次世代へと住み継ぐ住まい」を提供するため、素材・設計・工法などの建築的な工夫と環境設備を融合させた家づくりを行っている。家の骨格となる素材は、優良国産木材や自然素材を使用。そして、壁体内に通気層を設ける独自の工法で室内の温度差の少ない快適な温熱環境に近づける工夫をしている。「それだけでも快適な室内温熱環境ではありますが、さらに全館空調システムなど優れた環境設備を付け加えることで、より省エネと快適さを実現しています」。
さらに、「広がり間取り」という部屋を細かく仕切らない設計技法を採用。風通しがよく、湿気がこもらないため耐久性も高くなるほか、広がりのある空間は家族の気配を自然に感じられるという。「家族のコミュニケーションを大切にした設計の工夫です。そして、長く住んでもらうためには飽きのこない永く愛されるデザインも重要。こうした要素をバランスよく組み合わせることが大切だと思います」。
また、現時点では非常にハードルが高いが、省エネレベルの高いエコハウス「LCCM※住宅」普及にも取り組み、未来を見据えた地球にやさしい家づくりも探求。LCCM住宅は、建設時、運用時、廃棄時において省CO₂に取り組み、さらに再生可能エネルギーの創出により、建設時のCO₂排出量も含めライフサイクルを通じてのCO₂の収支をマイナスにする住宅だ。
「これは、未来のありたい姿を描き、そこから現在に遡って課題の解決策を考えていく“バックキャスティング経営”という思考法で、その重要性をナチュラル・ステップの先生方に教わりました。当社は2050年に向けてこれからどんな行動を起こしていくべきかという“先付けマッピング”に取り組み、検討してきました」。ただ、目標を達成するには技術革新が前提であるなど“先付けマッピング”は想定が難しいものであるという。「今は実現しないが将来的にこんな可能性があり、そのためにこれを進めたいという目標だけは立てておくということです。そして、いつまでに何をどう取り組むかという戦略は会社の経営に直結するため、最終的にはトップダウンでないとできない。経営者の指標、ビジョンが大切です」と中村代表は話す。
ナレッジライフのビジョン 「人と街、地球にやさしい家づくり」
「広がり間取り」はリビングを家の中心に置き、極力間仕切り壁を作らずに部屋同士を結び付けているのが特徴。吹き抜けを通して1階と2階の部屋がつながり、家族のコミュニケーションも生まれやすい。
暮らしやすく、永く愛されるデザインを主軸に、さまざまなスタイルの楽しみ方も提案する。和室に北欧の家具をしつらえるなど、和と洋を合わせた部屋づくりも好評。
SDGsは経営戦略の一つ。
ビジネスに繋げることが大事
社内では、SDGsという分かりやすい指標ができたことで、情報の発信がしやすくなったという。「社員のアイデアで建築現場から出た木の端材の配布や、読まなくなった本を交換し合うコーナーを展示場に作るなど、SDGsを身近に感じてもらう活動も行っており、そこから関心を持って下さるお客様もいます」と広報の田中マネージャーは話す。また、SDGsに積極的に取り組む県内の中学校や大学から依頼を受け、同社の取組を発表。企業見学やメディア取材の依頼も増えるなど、SDGsの取組が少しずつ認知されてきたことで、共感するお客様も増えているという。
「SDGsは企業のPRなどではなく、ビジネスに繋げることが大事。経営戦略の一つと考えて取り組んでいかないといけません。SDGsは2030年を目標としていますが、そこで終わるわけではない。これからも環境が厳しい時代になっていくなかで、時代に応じて当社のコンセプトに沿ってできる最大のことをやっていきたいと思います」と中村代表。将来の環境負荷を少しでも軽くし、快適で豊かに暮らすという現代のニーズにも沿った持続可能な家づくりをこれからも進めていく。
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