見えていなかった技術をデータ化し栽培に生かすIoT農業の時代へ
「科学的裏付けのために、まずはサツマイモの栽培に関する研究論文をたくさん読みました。開発した自らがツールを使い、農業をやってみることで使いやすさを追求できますし、農家の皆さんへの説得力も増すと考えています」。
IoTを活用した農業を直営農場で実践開始
各方面のスペシャリストや東京大学とチームを組み、IoTやICTを活用した次世代の農業の在り方を追求しているベジタリア。IoTセンサーの企画開発会社、樹液流センサーを研究開発する農業ベンチャー、ソフトウエア開発会社、そして全国数か所で実践農業を手掛けるファームからなるグループ会社だ。
経験や勘にたよりがちな農業生産技術を、環境センシングや営農データの蓄積、科学的知見による検証を取り入れながら見える化し、将来的にビッグデータをAI解析することで安心安全で持続可能な農業を目指している。
昨年1月、そこに加わったのがベジタリアファーム新潟。農業特区である新潟市で、ICTやセンサーを活用した農業に取り組む。長井社長は「自分たちが実践することで、農作業の効率化や品質・収量の向上を実現できるIoT、ICTの活用法を確立させたい」と話す。
データ活用で未経験者でも儲かる農業が実現する
西区四ツ郷屋の畑ではサツマイモの人気品種「べにはるか」を栽培。育てやすいこと、砂地の土壌に合うこと、ブームにより販売も期待できること、さらに将来的に海外展開する際も、サツマイモの事例は役立つと考えたからだ。
栽培には屋外計測器「フィールドサーバ」と農地管理支援システム「アグリノート」※を活用。フィールドサーバは温度や湿度、照度、降雨量といった気象データと、土壌の温度やpH、含水率をセンサーで計測し、アプリを使って常時モニタリングできる。「植え付けてから1ヵ月は特に土が湿っていた方がいいため、土壌含水率が参考になります。畑と離れた場所にいても、現地に降雨があったかどうかを確認できるのは便利です」。 また、ベテランは感覚で見極めるという収穫時期を、素人でも判断できるようにするため論文などで研究。植え付けから毎日の平均気温を積算し、2400℃に達すると収穫時期になるというデータを導き出し、アグリノートを活用して計算を行った。
※アグリノート:クラウド型の農地管理支援システム。
長井社長が代表を務めるウォーターセル㈱(新潟市)が開発、運営する。
IoT、ICTは日本の農業の必須アイテムになっていく
収穫したサツマイモは出来も上々で、アドバイザーである日高農園の日高氏からも評価され、市内スーパーで委託販売した。収量は予想より2割ほど少なかったが、これは土おこしや水の設備に原因があると分かり、次回に生かしていく。
IoT農業の必要性について長井社長は「今後、農業人材を確保していくには、新人でも栽培技術が分かるツールがないと、立ち行かなくなる。日本酒でもデータをもとに醸造し人気銘柄を送り出している事例がある。データとして見える化することでPDCAを回しやすく進化させやすくなります」と話す。
今後、べジタリアファーム新潟は農業生産組織として経営基盤の安定化を目指す。「素人でも2年目から黒字化できるということを証明したい。それにより農業IoTの活用も広がっていくと考えています」。
会社情報
ベジタリアファーム新潟株式会社
〒950-0911 新潟市中央区笹口2-13-11 笹口I・Hビル 1階
URL http://www.vegetalia.co.jp/