新型真空ポンプへの挑戦がオンリーワンの技術開発力に
株式会社飯塚鉄工所
代表取締役 飯塚 肇 氏
東北大学からの依頼でスクリューの設計・加工に着手
医療機器部品をはじめ、少量多品種のバルブ、工業用ポンプなどの製造加工を手掛ける株式会社飯塚鉄工所。最先端の機械を用いた高い技術力と提案力、材料調達から製造加工、組立までの一貫生産で国内外から高評価を得ている同社は、東北大学との共同研究で「スクリューブースターポンプ」を開発。半導体や太陽電池などの製造における生産性の向上や省エネ化、低コスト化に貢献する、高い排気能力を持つ新型真空ポンプとして注目を集めている。
「2008年に東北大学の研究員から届いた、1通のメールが始まりでした。真空ポンプの心臓部にあたる、新たなスクリュー構造の概念について、設計加工を依頼するお話でした」。当時専務だった飯塚社長は、リーマンショックにより将来に危機感を持っていたことから「何かやらなければという思いで依頼を受けることを決断しました」と語る。
真空ポンプの心臓部にあたる「スクリューローター」と、完成品の「不等リードスクリューブースターポンプ」。スクリューは毎分7,200回転と超高速だが、驚くほどの低振動を実現している。
サポイン事業を活用し真空ポンプの製造技術を確立
スクリュー製造には高精度の切削加工技術が必要なことから、同社は国のものづくり補助金を活用し、全国でも例のない特注の6軸加工機を導入。この機械でスクリューの切削加工の技術開発を行っていたところ、東北大学から「真空ポンプの研究開発を一緒に行わないか」と更なる打診があった。「開発していたスクリューは、新型真空ポンプの心臓部にあたる部品だったことが、初めて分かりました」と飯塚社長。この時から、スクリューの加工のみならず、真空ポンプの製造まで目指すことになる。
真空ポンプの研究開発にあたっては、「戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)」を活用。スクリューの高精度加工を実現するとともに、加工時間を従来の1/10に短縮することに成功。3年間で新型真空ポンプの製造技術を確立し、特許も取得した。
「当社は営業マンがいないので、お客様が来た時に我々が持っている技術をいかに印象づけるかが重要。そのためにも競合にはない、高付加価値の技術力を積み重ね、時代の一歩先を行くことが大事だと思っています」と語る飯塚社長。
最先端の技術力は新規顧客開拓のチャンスに
「新しいチャレンジで本業の加工品受注が増えたことも大きな成果」と言うように、今回得られた最先端の技術・開発力をPRすることで、新規顧客を開拓。受注拡大にともない設備投資に関する利子補給制度(マイナス金利制度)を活用し、旋盤機械を増やすなど設備の強化を図った。
「サポイン事業を活用した研究開発は、弊社の技術力向上に大きく貢献しただけでなく開発に携わった若手社員たちの士気向上にもつながりました。今後も開発力を維持しながら、本業を太くできる会社を実現したいと思います」と飯塚社長。さまざまな支援策を活用して将来を支える技術を開発し、さらに既存事業の拡大へとつなげた理想的なモデルといえるだろう。
サポイン事業の助成金で導入した6軸加工機。同社でしかできない高精度の加工技術、組立技術を持ったことで、日本をはじめ海外の企業からも新規の仕事依頼が来ている。
活用のポイント
- 補助金を活用した東北大学との共同研究で新技術を開発。特許も取得。
- マイナス金利制度を活用し、増産のための工作機械を導入。新工場も建設し、設備体制を強化。
企業情報
株式会社飯塚鉄工所
〒945-0812 柏崎市半田3丁目15-16
TEL.0257-23-5611 FAX.0257-23-2813
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