株式会社ナカヤ【木造建築に不可欠な、「屋起こし」作業用の工具。ユーザーの声に応える形で画期的なブラッシュアップに成功】

2025年08月18日
NICOpress201号商品評価・ブラッシュアップ補助金

木造建築に不可欠な、「屋起こし」作業用の工具。
ユーザーの声に応える形で画期的なブラッシュアップに成功

IDS準大賞 YAOCOSヤオコス(NK ー 4000YC)

代表取締役 衛藤直哉 氏/開発部 石川 氏/営業企画部 渡邉 氏

YAOCOS ヤオコス(NK ー 4000YC)

 

ロングセラー商品のリブランディングでIDS準大賞を受賞

三条市にあるナカヤは、グラインダに装着する集塵カバーをはじめ、「環境・健康・安全」をテーマに据えたオリジナル性の高い建築用製品を市場に送り出してきた。同社が掲げるのは「ニッチトップ戦略」。開発の難易度やコスト面から他社が参入しづらい、しかし絶対に必要とされるアイテムに狙いを定め、ナカヤにしかできない性能・機能を持つ製品開発に力を入れている。ニイガタIDSデザインコンペティション2025でIDS準大賞を受賞したYAOCOSも、まさにそうした基礎技術の組み合わせで実現させた商品だ。

YAOCOSは木造建築現場で使われる鉛直度矯正器。組み上げた柱や梁の傾きを垂直に矯正する「屋起こし」という作業に用いられる。同社がシェア3割を誇ってきた「屋起こしナンバーワン 極」の後継機種である。2024年10月に発売すると、全国から注文が殺到。ネットの商品レビューも満点が並ぶなど、市場からの評価も上々だ。

YAOCOSを使用している様子

YAOCOSを使用している様子

YAOCOSの耐荷重は400kgf、最大長は4m。一人でも扱いやすい構造で、屋起こし作業のほか、リフォーム現場での鴨居上げなどにも活用できる。

 

NICOの「イノベーション推進事業」を活用し、ユーザーからの長年の要望であった「小型化」に着手

YAOCOSの最大の改良点は、収納時の長さを従来の半分近い1.65mにしたこと。高強度アルミフレームを使用し、伸長方式を従来の2段階から3段階に変更。これにより、軽ワゴン車への積載が可能になり、現場での取り回しも容易になった。小型化はユーザーから熱望されていたが、数百キロの荷重に耐える強度や安全性が必要であり、開発難易度が高いことは明白。様々なトラブルを想定すると、十分な備えや支援がなければ踏み出すことが難しいプロジェクトだったため、NICOの製品開発の補助金であるイノベーション推進事業を活用。折しも、集塵カバーで海外売上が好調な中、国内の売上拡大にも力を入れようと考えていた時期と重なり、本格的に開発がスタートした。作業工数が短縮する高い操作性や、故障リスクを低減するエアブレーキ構造などは、営業の渡邉氏とエンジニアの石川氏が、建設現場で職人の声を聞き、テストを繰り返した努力の賜物。ユーザーの意向を実現すべく、時には大幅な方向転換を余儀なくされることもあったが「頂いた補助金による余力が心強かった」と衛藤代表は振り返る。開発開始から約2年。妥協なきYAOCOSは完成した。

従来品とYAOCOSの比較

右が従来品(屋起こしナンバーワン極・約3m)、左がYAOCOS(三段式構造で収納時1.65mに小型化)。
一般宅配便での通信販売も可能に。輸送時のコストとCO2の削減にも寄与。

 

YAOCOSのパーツ

YAOCOSブランドロゴ

改良を何度も重ねて完成したパーツ。特に設計で苦労したのが耐荷重の目標値クリアであり、県央技術支援センターで荷重をかけての圧縮試験は32回にも及んだ。

 

レバーステーション

レバーステーション

調整穴・ストップピース

調整穴・ストップピース

エアブレーキ部

エアブレーキ部

ハンドル

ハンドル

▶フレームを伸ばす際の抜け止め機構は、小さなストップピースが要となっている。調整穴の間隔やレバーステーションの構造もポイント。▶フレームを伸縮する際のケガや破損を防止するエアブレーキは、伸ばすときは軽く、戻すときには重くなる機構を実現するアイデアにたどりつくまで創意工夫を重ねた。▶確実かつスムーズに固定できるハンドルの留め具。

 

YAOCOS

 

予想もしていなかったIDSコンペの準大賞。
審査員の言葉から別分野への転用も視野に

部下が苦労を重ねた商品だったからこそ、IDSコンペへの出品を決意したと衛藤代表は話す。こだわり抜いた機構の数々を、外部へどのように伝えるかについては、商品デザイン・ラボ「IDSコンペ展示方法レベルアップ相談会」を活用。従来品との大きさの比較など、伝え方を工夫した。「華やかさはない商品なので、どう評価されるかは心配でした。受賞によって、自分たちのやり方、考え方は間違っていなかったと思えたのは大きかったです」。

現在、YAOCOSの販売は順調だが、少子化に伴う住宅着工件数の減少など、将来性は不透明だ。それを踏まえ、日本の大手住宅メーカーが進出する北米市場の開拓に動いている。さらに、YAOCOSを防災分野に活用するプロジェクトもスタートした。きっかけの1つは、IDSコンペの審査委員の「防災にも使えるのでは」というアドバイス。「衝撃が走りました。自分たちが役に立てるのは建設業界だけではないかも、と視野が広がりました(渡邉氏)」。

「当社は設計に特に力を入れており、細部まで徹底的にこだわっています。開発は苦労もしましたが、達成感も大きいです」と話す石川氏をはじめ、開発人材が強化されているナカヤ。部品の細部にまで魂を込めるモノづくりで、ナカヤならではの価値を届け続けていく。

 

VOICE 利用者の声

代表取締役 衛藤直哉 氏
株式会社ナカヤ
代表取締役
衛藤直哉 氏
魂を込めて作り上げた商品を評価してもらえたことが何よりも嬉しかった

IDSの審査では、「見た目だけでなく、世の中に出て、売れて使われて、お客様が良い思いをするまでがデザインなのですよ」というお話を聞いて、なるほどと感じました。当社の製品は、小さな部品一つにまで執念と魂を込めています。設計など背景も含めて評価いただけたことで、次に向けても俄然やる気が出ています。

開発部/石川氏

開発にとても苦労した分、やはり準大賞受賞はとてもうれしかったですし、モチベーションにもつながっています。
(開発部/石川氏)

営業企画部/渡邉氏

IDSでは“伝える技術”についても学びが大きかったです。今後の別分野への展開に向けて非常に勉強になりました。
(営業企画部/渡邉氏)

本事例のポイント

屋起こし作業を簡易化する旧商品のリブランディングプロジェクト。
簡単には真似できない機能と意匠のブラッシュアップを両立。
  • 「ニッチトップ戦略」を支える社長の手腕×営業人材による現場の調査×開発人材の設計力。
  • 余力をもち、妥協なく開発した商品をリリースするため、NICOのイノベーション推進事業を活用。
  • 商品デザイン・ラボの活用で、製品の魅力を外部に伝えるためのヒントを得る。
  • 魂を込めた商品の背景まで評価されるIDSコンペで、開発モチベーションを継続的にアップ。

ニイガタIDSデザインコンペティション受賞商品や審査員の評価ポイントについて詳しくはこちら
https://www.nico.or.jp/ids

 

企業情報

株式会社ナカヤ

【建築用製品メーカー】
三条市柳沢1313-92
TEL.0256-38-4747
URL https://nakaya-tools.com/

1986(昭和61)年設立。建築工具などの金物卸業で創業。創業初期から自社ブランド製品を手掛け、グラインダ用集塵カバーは海外での販路を広げている。

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