株式会社Teel【板前による手作りの味でさまざまな「食」の場を豊かに。新潟の郷土料理を次の時代に伝承していく】

2025年12月16日
NICOpress203号創業補助金

板前による手作りの味でさまざまな「食」の場を豊かに。
新潟の郷土料理を次の時代に伝承していく

株式会社Teel 代表取締役 高橋賢 氏

懐石料理

無添加・手作りの「割烹惣菜」で起業。
多彩な調理ニーズに対応

割烹惣菜ブランド「うおへん」を掲げ、新潟の郷土料理を中心とした惣菜の製造販売やレストラン経営などを展開するTeel。創業から5年が経ち、関東方面を中心に順調に取引先を増やしている。

事業の柱の一つが、銀鱈や銀鮭の焼き漬け、車麩の煮物といった新潟の郷土料理のパック惣菜の製造・卸業。商品は都市部を中心に全国展開する高級食料品店などで販売されている。とくに業績が伸びているのはOEMの業務用食品製造や、ホテル・旅館や飲食店向けに行っている食材の一次加工だ。

昨年の春には、ハイブ長岡内に会社を移し、レストラン「越後郷土美味惣菜うおへん」もオープン。ランチやオードブルなどを提供し、長岡花火大会のツアー客向けの弁当なども請け負っている。多様な調理品ニーズに対応する同社の強みは、板前経験のある職人が中心となって調理し、無添加・手作りの惣菜を提供していること。「薄味の割烹惣菜として、料理店でそのまま出してもおいしく食べていただけるものを作っています」と高橋代表。さらに、OEMや一次加工は小ロットから対応し、季節ごとに変わるメニューの企画、形や量の細かなオーダーにも応える。

ハイブ長岡内にあるレストランイメージ

ハイブ長岡内にあるレストランイメージ

ハイブ長岡内にあるレストランと2階にある調理場で一次加工品に対応。

 

レストラン「越後郷土美味惣菜うおへん」の日替わり定食の一例

レストラン「越後郷土美味惣菜うおへん」では、和食のランチを提供。鮭、海老しんじょうの天ぷらなど、新潟らしさを感じる味わいが好評だ。盛り付けや器にもこだわる(写真は日替わり定食の一例)。

 

自社ブランド「越後郷土美味惣菜うおへん」の惣菜

自社ブランド「越後郷土美味惣菜うおへん」の惣菜

自社ブランド「越後郷土美味惣菜うおへん」の惣菜は加熱調理済なので、温めるだけで割烹で出てくるような本格的な味付けが家庭でも手軽に頂ける。素材の切り方の美しさなど見た目にも細心の注意を払って仕上げている。

 

スタートはコロナ禍真っ只中の2020年。
補助金も活用しながら事業を軌道にのせる

高橋代表の前職は朝日酒造(長岡市)の関連会社の朝日商事。在籍時にはアンテナショップや物販店、飲食店など10軒以上の店舗立ち上げや改装を手掛けてきた。東京に飲食店をオープンした際は、自身も板前として厨房に立ち、店を切り盛りしてきたという。その後、経営方針の変更によって飲食店や惣菜製造部門を閉鎖することになり、高橋代表が製造部門を引き継ぐ形で社員数人と共に独立した。

郷土料理をコンセプトとしたのには、この前職での経験が背景にある。「酒造メーカーだったので、酒文化と食文化は常に共にあり、この土地の食があるからこそ、うちの酒が出来上がっている、と教えられてきました。料理というのは伝承の世界。のっぺや棒ダラ料理など、大切な郷土の味を次の世代に伝える会社でありたいと考えています」。

しかし、起業した2020年はコロナ禍の自粛要請期間で、外食関連が大打撃を受けたタイミングだった。「設備投資も必要で、このままでは従業員への給与もままならなくなると感じ、商工会議所に相談しました。そこで教えてもらったのが、NICOの起業者向け支援。人件費にも使える補助金だったので助かりました」。

 

可能な仕事量を判断しながら、販路を着実に拡大していく

営業面では、調理品の問い合わせを受けたらすぐに他にニーズがありそうな調理品サンプルも提案に加えて送るなど積極的に動いているという。「そのうち1つでも相手にフィットすればいいため、提案には力を入れています」。取引先が地域の食材を使ったオリジナルブランドを開発したり、飲食店を立ち上げる際には相談を受けることも多く、高橋代表が前職から現在までの経験から蓄積した知見を惜しみなく共有する。

また、レストランのランチは宣伝広告としての一面もある。「お客様が“ランチが美味しかった、惣菜も作っているらしい”と口コミで広げていただければと。実際、お客様から茶会のお弁当を頼まれ、それをきっかけに茶道の先生のお宅で料理教室を開くことになるなど、広がりが生まれています」。惣菜の旨みが染みた煮汁や、商品に使わなかった食材をランチに使用することで食品ロス削減にもつなげている。「のっぺの煮汁で煮物を作ったり、昆布巻きを煮た汁で魚を炊いたりと、美味しくて無駄のない調理を心がけています」。

今後、人手不足からホテルや飲食業をはじめ、業務用の製造委託は需要が更に高まると考えられるが、人員を増やしてどこまで売上を見込めるか、状況を見ている段階。新たな動きとしては、長岡駅周辺で夜営業の飲食店を出店する予定だ。また、自社製品の販売拡大も検討中だという。「板前経験があっても、業務用調理の衛生管理を身につけて慣れるまでは1年ほどかかります。これからも人材を育てながら、新潟の食文化を伝承していく会社を目指していきたいと思います」。

調理の様子

調理の様子

OEMや一次加工は味付けから形状まで顧客のニーズに細かく対応。朝食サービスを提供したいというホテル向けには、温めたり軽く焼くだけで出来上がる惣菜で料理人の負担軽減を提案。社食の代わりにオフィスに設置する惣菜品などにもニーズがある。

 

おせち

おせち

板前に経験を積ませ、食文化を継承していくために、おせちも毎年全て手作りしている。

 

VOICE 利用者の声

株式会社Teel 代表取締役 高橋賢 氏

株式会社Teel
代表取締役
高橋賢 氏

起業時に活用できた補助金は本当にありがたかったです

「起業チャレンジ応援事業」の補助金は、設備のほか人件費にも使える融通の利くものだったことが、本当に助けになりました。その後、雇用調整助成金も活用して経営がつながった感じで、起業時の支援がなかったら会社は無くなっていたかもしれないと感じています。補助金の審査で、慣れないながらプレゼン動画を撮って送ったことも印象に残っています。支援決定後は、定期的にNICOの担当者の方によるフォローアップがあり、情報交換の機会にもなっています。

本事例のポイント

  • 前職で手掛けた事業やノウハウを受け継ぐ形で独立。
  • 起業者向けの支援を活用し、コロナ禍での雇用を維持。
  • 「郷土料理」「割烹惣菜」「板前による丁寧な調理」という明確なコンセプトで差別化。
  • レストランと惣菜調理の両輪で食材ロスを削減し、効率化。

 

企業情報

株式会社Teel

長岡市千秋3丁目315-11(ハイブ長岡1F)
TEL.0258-76-0591
URL http://echigo-uohen.jp/

2020年設立。割烹惣菜「うおへん」の製造・卸販売、業務用食品のOEM、飲食店向け食材の一次加工、レストラン「越後郷土美味惣菜うおへん」の経営などを行っている。

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