新貝工業株式会社【高難度案件に挑み続けた実績が信頼に。コンクリート用型枠製造で業界トップへ。】

2025年12月16日
DX・デジタル化NICOpress203号新商品・新技術開発

高難度案件に挑み続けた実績が信頼に。
コンクリート用型枠製造で業界トップへ。

鉄鋼業が経済基盤として根付く上越市の柿崎地域で、100年以上にわたりオーダーメイドのものづくりを続ける新貝工業。鋼製コンクリート用型枠や鋼構造物、産業機械を手がけ、設計から製造まで一貫体制を整えている。業界トップクラスの技術力と生産力を誇る現場を訪ね、ニッチ分野で競争力を築いてきた背景を伺った。

代表取締役社長 新貝広太郎 氏/取締役 設計部 部長 小田一也 氏
代表取締役社長 新貝広太郎 氏
取締役 設計部 部長 小田一也 氏

「型枠メーカーで、機械加工もできる企業は少ない。当社も以前は外注していましたが、機械加工の内製化を進めることで、品質・精度の飛躍的な向上と生産性の改善を実現しました。これにより、対応可能な型枠の幅が広がり、国や自治体による大規模なインフラ整備案件への参画も可能になり、結果として型枠と型枠以外の受注が増えました」(新貝社長/写真左)。

時代を先取りしCAD・CAMを導入
蓄積されたデータが強みに

鍛冶屋として1918年に創業した新貝工業は、製缶などの大型鉄鋼品の加工や型枠製造に事業を拡大。現在は、プレキャスト・コンクリート製品用の型枠を作る「型枠部門」と、鋼構造物や産業機械を作る「機器部門」の大きく2分野で事業を展開している。

最大の特徴は、完全受注生産のオーダーメイド対応であること。顧客が求める製品や目的を丁寧にヒアリングし、設計や工程も含めた企画段階から関わる案件も多い。顧客から図面を提供されることもあるが、製造に必要な図面は自社の設計部で図面化している。現在19名の技術者がいる設計部では、国内の中小企業でもいち早く1985年にCAD・CAMシステムを導入した。「当時は高額の投資だったと思いますが、『これから必要になる』という先代の考えで導入しました。現在、約40年分の設計図面がデジタルデータで蓄積されています。トンネル工事など、長期で使用する型枠は年数が経つとメンテナンスや改造の要望が出てきます。過去の図面がすぐに取り出せる状態であり、それを元に迅速な対応ができることが強みになり、お客様からも重宝していただいています」と新貝社長は話す。

3DCAD設計を推進

2026年には設計業務の49.5%を3DCADによる設計とすることを目指し、今後も設計品質向上、設計効率化を図るために3DCAD設計を推進している。

 

全国各地のインフラ整備の基盤を担う新貝工業

型枠部門は、農業用水路などから始まり、消波ブロック、地中に埋設されるボックスカルバート、トンネルなどに発展。第二東名高速道路やリニア中央新幹線などの大規模工事にも新貝工業の型枠が使用されている。巨大な型枠でありながら、誤差±2.0mmという精度の高さも同社の強みだ。

機器部門は、京セラドームの独特な曲線を描く屋根パネル、各種タンク、水門、鋼製のスノーシェッドなどを製造。「金属で作る大型製品はだいたい作っている」という新貝社長の言葉が仕事の幅広さを物語る。上越火力発電所の建屋と煙突をつなぐ巨大排気ダクトを作るプロジェクトでは、計画に7年、工事期間3年を要し、100年を超える社歴のなかで最大のミッションとなった。

もう一つの特徴は、生産性を高めるための工場設備を自作していることだ。巨大なワークを自動運搬する無線式旋回台車、ワークを空中で反転することで溶接を容易にする吊りベルト式電動反転機、溶接で生じる歪みを矯正するプレス機などを開発。工場での作業を、もっと安全にできないか・無駄な作業はないか・環境を改善できないか、と常に考える問題意識の高さが創意工夫につながっている。こうした設備は「自社にも導入したい」という企業のために外部顧客へ納入した実績もある。

大物に特化した機械設備

門型高速5軸加工機や大型立型ターニングセンタなど、大物に特化した機械設備が充実。溶接や切断も高精度の加工機を備え、複雑な形状のオーダーにも対応。

空中反転機

大型・重量物の移動や反転を安全かつ効率的に行うための反転機や、工場内の段差移動を容易にするリフター(昇降装置)等は顧客のオーダーに合わせた設計にも対応している。

 

工場内のイメージ

工場内のイメージ

ファイバーレーザー切断機でカットする銅板は、連動する「自動倉庫」から自動的に供給され、残材はまた自動的に保管して、無駄なく活用する仕組みを構築。銅板の歩留まり率は75~80%を維持。

 

難易度の高い仕事で実績を重ね紹介案件も

「コンクリート用型枠製造は、そもそもがニッチな業界です」と話す新貝社長。その中でも同社は、大型プロジェクト建設に関わるものづくりへの参画が多く、難易度の高い案件での型枠を依頼されることが多い。「北海道のトンネル工事では、それまで付き合いのなかった大手ゼネコンからご指名をいただきました。難しい工事に対応できる型枠メーカーを探していたところ、コンクリート製品メーカーに『それなら面白い会社がある』と当社を紹介されたそうです。施工シミュレーションも込みで対応し、型枠を納品。トラブルなく工事を完了したと聞き、安心しました」。

他社との差別化という点では、業界トップクラスの品質や、充実した加工設備を駆使した技術力が挙げられる。新しいコンクリート製品を工場で製造する場合、型枠の納入後、生産開始までの調整に4~5日かかることもある。しかし、新貝工業の型枠は2日目から生産を開始できたとして「価格は高めだが、すぐに生産を開始できてよかった。ありがとう」と、普段は評価に厳しい顧客から感謝の書面をもらったこともあるという。

コンクリート製品用の型枠

防潮堤のコンクリートブロックの型枠

コンクリート製品用の型枠は全国の高速道路、ダム、新幹線などの工事で使われている。東日本大震災の被災地に設置された防潮堤のコンクリートブロックの型枠も製造した。

 

工場内のイメージ

工場内のイメージ

全自動3Dレーザー加工機。長尺パイプや形鋼を全自動で加工。

 

高くても提案力と信頼で選んでくれるお客様がいる

顧客との打ち合わせでは、レスポンスの良さや提案力を重視する。設計部の小田部長は「お客様が何を考えているか、言葉だけのやり取りで正確に把握するのは難しい。その場でサッと手書きで絵を描き、お互いの認識を擦り合わせれば話は早い。絵を見ると『もうちょっとこうだよね』とキャッチボールの回数も増えて、精度も上がります」と話す。「最近は、営業が打ち合わせでお客様からいただいたテーマや技術提案のニーズ等を記入する『業務連絡書』を導入しました。営業から設計に必要な情報がスムーズに上がってくるので、そこから受注につながる事例が増えています」。

ニッチな業界でトップランナーであり続けるために重要なのは「信頼」だと新貝社長。「業界が広くないので、新規の取引よりも元々付き合いのあるお客様が多いのですが、信頼があれば基本的にお客様は逃げていきません。では信頼とは何かというと、最初にお聞きした要望に対して的確に提案するといった、丁寧な仕事の積み重ねだと思います。たとえば食事をするとき、特別な日の外食は間違いがなく、信頼できるお店を選びますよね。その代わり払うものはしっかり払う。そういう関係に近いと思うのですが、そうしたお客様との信頼関係をこれからも続けていきたいです」。

 

POINT

  • 取引先との信頼関係を築くことでいち早く市場ニーズをつかむ。
  • 型枠製造から機械加工まで、社内一貫生産体制で難易度の高い新規案件に挑戦し技術ノウハウを蓄積。
  • 相談のしやすさ・レスポンスの良さ・提案力を重視した営業体制。

 

企業情報

新貝工業株式会社

上越市柿崎区馬正面1153
TEL.025-536-2201
URL http://www.shingai.co.jp/

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