言語生成AIを活用し専門性の高い
接客とインバウンドに対応
十日町市出身の同級生二人がクラフトビール造りに挑戦する醸燻酒類研究所(ジョークンビールラボ)。2020年に十日町店、2023年12月に湯沢店をオープンし、注目を集めている。情報学分野の研究者であり、経営者でもある樋口氏はプログラミングのスキルを活かして言語生成AIを活用した接客サービスを開発し、新たな店舗運営に挑戦している。
十日町市出身。金沢工業大学を卒業後、東京大学大学院 情報学環・学際情報学府にて修士・博士課程を修了。東京大学生産技術研究所で特任助教と特任講師を歴任した後、代表取締役の岩田貴之氏と共にクラフトビールと燻製食品の製造販売を行う醸燻酒類研究所を創業。最先端技術の開発を進める(株)Preferred Networksの研究者としても活躍しながら、JR越後湯沢駅近辺の2号店でも働いている。
Q1 クラフトビールの醸造を始めたきっかけは?
2017年から1年間、大学での研究のためアメリカ・ピッツバーグへ渡りました。学生の頃から何度か渡米する機会があり、アメリカンスタイルのクラフトビールを飲みに行くことが楽しみになっていました。ピッツバーグは近隣に50軒以上の醸造所があるほどビール醸造が盛んな地域。特にホップが利いた「India Pale Ale(IPA)」のおいしさが印象的で、日本のビールとの違いを痛感しました。その頃はアメリカで濁りが特徴の「Hazyヘイジー IPA」が流行り、『このおいしさを日本でも楽しめないだろうか』と考えるようになりました。十日町に帰ってきてすぐ、同級生の岩田さんに「一緒にクラフトビールを作らない?」と声を掛け、醸燻酒類研究所を創業しました。
Q2 湯沢に新店を開いた理由は?
醸造場もかねた十日町店をオープンしたのは、コロナ禍真っ只中の2020年。思うように売り上げが伸びず、苦しい状況が続きました。感染症が落ち着いてきた2022年の冬には湯沢に観光客が戻ってきている印象があり、注目していました。昔は湯沢にも地ビールがありましたが、クラフトビール専門店はなく、外国人観光客や、樽を卸していた首都圏の専門店を通じてファンになったお客様が十日町店以上に来店しやすいというメリットがありました。
Q3 言語生成AI接客サービス導入のねらいは?
湯沢店ではタブレット端末を通じてビールに関する質問に答える言語生成AIによる接客サービスを導入しています。クラフトビールはなかなかマニアックなお酒。現場で働くスタッフには専門的な知識が求められ、対応する人員確保やその教育にもコストがかかります。そして、湯沢はインバウンド需要が高いエリア。世界各国から来られたお客様へ、それぞれの言語で接客できたら便利だろうと思い、システムを開発しました。
メニューやビールの特徴、ビールに合うフードなどについて質問を投げかけると、あらかじめ入力した情報をもとにChatGPTが自動で回答。接客対応に役立つのはもちろん、スタッフの専門性を高めることにも一役買っている。
立ち飲みスタイルの十日町店とは対照的に、カウンター席とテーブル席を設けゆっくりと飲食を楽しめる湯沢店。週末を中心に樋口氏自ら店頭に立ち、お客さんとの会話を楽しみながら接客している。
湯沢店のタップは常時5種類。220ml700円から。同じ銘柄でも毎回レシピを変えて製造するため、訪れるたび新しい味わいを楽しめる。海外から発信される最新の論文等を参考に、ホップをしっかりと感じられるビール造りを行うのは同店ならでは。
Q4 今後の展望を教えてください
現在のAI接客ではメニューの提示や説明は可能ですが、ここから注文ができるようにしたいですね。さらに注文履歴から、メニューの提案までAIでできるようにしていきたい。また、湯沢店オープンと同じ時期に瓶ビールの販売もスタートしています。今のところ販売先は十日町店と周辺の酒販店のみですが、今後は湯沢店でも販売できるように酒類販売業免許を取得予定。隣り合う二つの地域を、ローカルビールで盛り上げられたらうれしいです。
企業情報
株式会社醸燻酒類研究所
Jokun Brewing Lab
[十日町店]十日町市本町5-55-8
[湯沢店]湯沢町湯沢318-6 シャインプレイス一茶 203
URL https://www.jokun-brewing.work