小柳建設株式会社【働く社員のためにある変革。DXで建設業の働き方を変えていく】

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2022年06月03日
IT導入NICOpress182号

働く社員のためにある変革。
DXで建設業の働き方を変えていく

建設業に最先端デジタル技術を取り入れ、職場環境や生産性を向上させている小柳建設。2014年に3代目社長に就任した小柳社長が目指したのは「社員の仕事を楽にするとともに収益を上げる」ということ。取組の変遷を伺った。

小柳建設株式会社 代表取締役社長(CEO) 小柳 卓蔵 氏
代表取締役社長(CEO)小柳 卓蔵 氏

世界の先端技術を使いながら働き方を変えて、社員が本当に楽になる形が作れてきました。厚生労働省からベストプラクティス企業に選んでいただき、「くるみん」、「えるぼし」の認定も受けています。こうしたことが社員にとっての指標になり、改めて業務に向き合えていると感じます。

旧態依然の体質を

仕組み化で変革

小柳建設は2015年頃から本格的にDXに取り組み始めた。現在、現場と内勤を合わせた社員の月平均残業時間が2.5時間、社員の年収はこの4~5年で平均30万円アップ、現場代理人を務める男性社員も2~3週間の育休を取得するなど、これまでの建設業界では考えられなかったような働き方を実現している。

小柳社長は金融会社に勤めた後、2008年に入社。仕事のやり方を見て「こんなにアナログなやり方では永遠に残業なんか減る訳がない。もっと社員を楽に働かせてあげたい」と感じたという。さまざまな提案をしても「建設業は特殊だから」という言葉で却下される日々も続いたが、前社長とは「仕事を仕組み化しよう」ということを共有してきた。「中小企業は特に仕事が属人化していて、この人がいないと仕事が進まない、だからその人は休めない、ということがあるが、それは情報がクローズになっているから。ITを使って情報を共有しておけば、いつ休んでも大丈夫になる。しかし、それをさせないのは意外と会社ではなく社員個人だったりする。『自分の情報を開示する=自分の仕事を取られる』という認識になるから。仕組み化する時に一番苦労するのは、その意識を変えてあげること。『情報を共有するのは、あなたを楽にするためだ』ということを伝えていくことが重要です」。

 

世界の働き方を見ることで

社員たちの意識を改革

現在はMicrosoft365のシステムをベースに業務を行っているが、最初に導入したのはチャットワーク。社内のコミュニケーション手段として積極的にチャットを活用することにした。若い世代はすぐに順応したが、世代によってすぐには使わない社員もいた。「最初は分かる人から使っていくことが大事。それが評価されるのだと知れば変わります。若い人たちが分からない人に教えるようになり、コミュニケーションも生まれます」。

大きな変化に繋がったのは2016年から始めた海外視察。シリコンバレーをはじめ、DXが進んでいるエストニアや欧米各国の担当省庁やベンチャー企業に社員と訪問し、世界の働き方を見てきた。「社員を同行したのは、社長だけ意識が変わっても意味がないから。社内文化を変えなければ、デジタルを使ってもただのIT化に終わる。そのためにも、学ぶ意思のある社員をできるだけ多く連れていきました」。

さらに大きな変革を呼び込んだのは、日本マイクロソフト(MS)と共同開発した「ホロストラクション」の存在だ。小柳社長は2016年にMS社のホロレンズ※を見た瞬間に「これは建設業のためにある技術」と確信したという。建造物の3Dモデルなどを空間に投影し、それを見ながら遠隔地の人ともコミュニケーションが取れる、現場に行かずして現場を見ることができる技術だ。「建設業は現場に行かなければ何もできない感覚があるが、これならその意識を変えることができる。働き方が変わると思いました」。

※ホロレンズ : コードレスのゴーグル型MRデバイス(ヘッドセット)。装着することでMR(複合現実)を体験できる。

 

Holostruction(ホロストラクション)
Holostruction

小柳建設株式会社 ホロストラクション

ホロストラクションでは、図面を3D化し、工事に入る前の計画を立てることや、出来上がった現場をスキャンすることで、発注者がデスクから検査・確認することができる。国土交通省と共に、工事の遠隔検査をホロストラクションで行う試験的取組も行われた。

小柳建設株式会社 世界の先端技術

世界の先端技術を扱うことで、社員の意識が変わり、顧客からの信頼も生まれている。

 

加茂オフィスは

地域におけるDX推進拠点に

ホロストラクションの開発は土木技術者でもある専務が責任者となり、イノベーション推進部を中心に毎年機能を追加。そのサービス提供を手掛ける会社も立ち上げている。「DXに向けて課題を話し合っていた時、当社の課題は結局、建設業界の課題でもあるのではという話になった。システムサービスを提供することで、他社の課題解決にもなるのではと考えました」。

また、2021年1月に創業地に完成した加茂オフィスはDXをさらに加速させる社屋として誕生。小柳社長は「みんなが働きやすく、誇りを持てて、家族や友達を連れてきたくなる場、成果が上がる場にしてほしい」と伝え、あとは社員に構想を任せたという。

そして、この加茂オフィスはDXによる地域活性化を図る「Microsoft Base Niigata-Kamo」に認定されている。「地域の学校などでもMS社の技術を体験してもらって、世界は今こうなっているのかという、私と同じような感動を経験してもらいたいです」。

DXによる仕組み化によって、「考える社員」になってくれたことが、とても大きいと語る小柳社長。いま、目を向けているのはプライベートな問題を顧問弁護士に相談できるサービスや、心の健康診断など、社員のメンタルサポートだ。「私の課題は社員を楽にすることで、会社の収益を高めながら、残業時間を少なく、給料や休みを増やしてあげたい。そのためには生産性を上げることが必要で、デジタルを使って仕事を改革してきた。しかし、社員が悩みを抱えて仕事をしていたらパフォーマンスが落ちる。だから精神的なケアも大切です。これもDXを含めた生産性を上げるための取組なんです」。

最近は採用人材の半数が県外出身者で、応募者数も増加しているという。小柳建設の変革は、建設業界だけでなく、多くの中小企業にとっても刺激となるはずだ。

 

アイデアと成果を生むオフィス(加茂オフィス)

小柳建設株式会社 ABW型オフィス 小柳建設株式会社 ABW型オフィス

社員が業務に合わせて自由に働く場所等を選択できるABW型オフィス

加茂オフィスの設計は東京の設計事務所に依頼。打ち合わせはホロストラクションを使っての遠隔コミュニケーションで進められた。

 

コワーキングスペース、カフェテリア

コワーキングスペース、カフェテリア

小柳建設株式会社 アメーバスペース

アメーバスペース

社内はフリーアドレスで、モニターには業務の進捗状況や営業利益がリアルタイムに表示されている。アメーバ経営を実施しているため、チームでの打ち合わせのためのアメーバスペースも確保。1階には一般の人も出入りできるカフェ、コワーキングスペースがあり、新しい事業を起こしたい人を応援する場にもなっている。

 

Point

▶ 社員の仕事を楽にするための仕組み化にデジタル技術を活用

▶ 仕事の属人化の解消のため、社員の意識から改革していく

▶ 同じ課題を持つ建設業者にも技術サービスを提供

 

企業情報

小柳建設株式会社

[加茂オフィス] 加茂市青海町1-5-7
TEL.0256-52-0008
URL https://n-oyanagi.com/

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