株式会社エムテートリマツ

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2021年10月13日
NICOpress178号

金属加工技術が集積する燕三条
その力を将来へ継続していくために

燕市で業務用厨房用品やキッチン用品の卸売販売を手掛けているエムテートリマツ。現在、SDGsを独自に分析・解釈して経営指標にしているほか、地元企業と共に「SDGs調達」としてSDGsに配慮した製品を送り出している。その目的は「持続可能な地場産業」を実現することだ。

代表取締役社長 鳥部 一誠氏
代表取締役社長 鳥部 一誠 氏

「SDGsと聞くと構えがちですが、社員の健康を考えるのは経営者として当たり前。また貧困の話は遠い国の話かと思うけれど、意外と身近に貧困はあるし、そこに我々が協力できることもある。ちょっと良いことをすることで、社会のため、地域のため、社員のためになるのが我々のSDGsです」と話す鳥部社長。

地場産業を持続させるために
燕三条を全国、世界に売っていく

「SDGs達成を目指せる製造チームをお届けします」。昭和12年の創業以来、80年以上に渡って燕市で厨房用品の卸売商社として歩んでいるエムテートリマツ。その公式サイトの「SDGs調達」のページを訪れると、最初に現れるのがこのメッセージだ。

同社では、独自に解釈したSDGsの達成目標に対し、その考えを理解し、基準を達成した地元企業で構成する「SDGs調達事業チーム」で金属加工の試作、量産のオーダーを受けている。

始まりは、鳥部社長の地場産業に対する危機感だった。「金属加工集積地の燕ですが、小規模事業者の半数近くが後継者不足で、現在の代で廃業を考えているところも多い。それが本当に進んでしまえば産業が衰退してしまいますし、製品を仕入れて販売している当社も困る事態になります。以前から、金属部品などを作る際、当社をハブにして注文をしてくれるお客様がいたこともあって、地場産業を元気にして持続させるために、当社が燕三条地域を全国、世界に売っていくというコンセプトで、ものづくりサイトを立ち上げたいと考えました」。

そして全国・世界にアピールするためのキーワードにしたのがSDGsだ。鳥部社長は2019年に勉強会でSDGsの話を聞いたものの、すでに「四方良し」※1を経営理念に置いてきた同社としては、改めて取り組むものではない、と関心を持たなかった。しかし、交流のある燕屋の深津氏から「今、ものづくりサイトをやるならSDGsと掛け合わせるべき」とアドバイスを受け、取組をスタートさせた。

 

SDGsの達成目標を自分たちに合わせて“翻訳”

最初に取り掛かったのは、SDGsの達成目標を自分たちにできることに落とし込んでいくこと。社内チームを作り、深津氏の力も借りて『エムテートリマツが考える16のゴール』を作成した。「SDGsの目標を見ると壮大で、一中小企業に何ができるんだろうと思いますが、改めて考えてみると、意外と既に取り組んでいることをさらに深めるものもある。実は“良いことを増やす”という単純な話なんです」。

例えば、16のゴールのひとつ「綺麗な水を増やす」の実現のために取り組んでいるのはペーパーレス化や紙の資源リサイクルで、これはSDGsの⑫つくる責任、⑬つかう責任、⑭海の豊かさを守ろう、⑮陸の豊かさも守ろう、にリンクしている。「笑顔の男女を増やす」の実現のためにはハッピー・パートナー企業(新潟県男女共同参画推進企業)登録や女性役職者の採用などを進めていて、これは⑤ジェンダー平等を実現しよう、⑧働きがいも 経済成長も、などとリンクする、といった具合だ。これらは社会的意義も大きいが、同時に会社のビジョンや、地域連携、社内教育など経営にも大きく関わってくる。

こうして決めた16のゴールに向けた取組を社内で進めると共に、地元企業にも提案。チェックリストをもとに、各社が取り組んでいることを点数化し、基準をクリアした企業を「エムテートリマツSDGs認定」パートナー企業として登録し、SDGs調達として受注した仕事を登録企業に発注している。

エムテートリマツが考える16のゴール

SDGsの「17のゴール」を自分たちが実行可能な良いことに翻訳し、独自の16のゴールを設定した。SDGs調達のパートナー企業に参加することで、登録企業も事業活動を通じてSDGsを推進できる。
※16のゴールをアイコンで表現。

2020年12月にウェブサイト「エムテートリマツSDGs調達」を開設。さまざまな金属加工に関する仕事を受注する。

 

取組が伝わることで環境もきっと変わっていく

現在、27社を認定している各パートナー企業には、社員が出向きこの企画の趣旨を説明し、協力を依頼。「燕のためになるのなら」と賛同してくれるところが多かったという。また、チェックリストで基準に満たない場合も、取組の継続を希望する企業には、同社から改善ポイントをアドバイスするなどのサポートも行っている。

また、社内での取組もスムーズに進んでいるが、それは創業以来培われてきた風土があったからだと鳥部社長は話す。「二代目である父の代から、勉強会や朝礼を大切にするなど、社員教育には力を入れてきました。SDGsについても受け入れる土壌があったと思いますね」。

SDGs調達を始めて、劇的に受注が増えたということはないものの、「燕にはこうしてSDGsを意識して取り組んでいる企業がたくさんある」ということを広くアピールすることに意味があると思う、と鳥部社長は話す。「あくまでも目指すのは燕三条における持続可能な地場産業の実現です。金属加工業の多くが分業になっている土地なので、みんなで良くなることが重要。小さい会社も、ここに参加していることで持続可能性が上がっていけばと願っています」。

この取組は第1回新潟SDGsアワード奨励賞※2を受賞。また、見附市の小学生が修学旅行の研修として訪れ、SDGsの取り組みについて学んでいったという。「少しずつ、今まで無かったことが起きているのは確かですね」。少しずつ、しかし確実にSDGsを通して、新たな可能性を広げている。

※1 四方良しの経営(取引先良し、世間良し、会社良し、従業員良し)
※2 地域創生プラットフォーム「SDGsにいがた」が、新潟県内での企業、団体、個人によるSDGs関連の優れた取り組みを表彰し、SDGsの理解や行動を促すもの。

 

SDGs基準チェックシート

パートナー企業になるための採点指標として、16のゴールそれぞれに必要なアクションが示されている。チェックすることで足りない行動がわかり、エムテートリマツでは希望する企業に具体的なアクションについてアドバイスも行う。

16のゴールそれぞれの具体的な行動を示したシート。社内外に取組を発信している。

 

ポイント

  • 自社や地域の課題に合わせた行動につながるようSDGsを“翻訳”する。
  • 地元企業と連携しSDGsに配慮した製品づくりのネットワークを築く。
  • SDGsへの取組を自然に受け入れることができる社員を育む。

 

企業情報

株式会社エムテートリマツNICOクラブ会員

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TEL.0256-63-2184
FAX.0256-63-9777
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