IoTによる一元管理で生産性の向上と高能率化を実現
ISO推進事務局 局長 野澤 聡史 氏
「当社は生産体系をはじめ特殊な部分が多いため、標準のシステムをベースにしつつ、ほぼ当社専用にカスタマイズしました」と語る山田部長(右)。「IoTを全社展開する方向づけはできています。事務系の部門にも導入するために、昨年春にプロジェクトを立ち上げました」と話す野澤局長(左)。
個別管理によるリスクをIoTシステムで改善
工作機械の基幹部品となる高精度スピンドルの製造を主力とするエヌ・エス・エスでは、多品種少量かつ完全受注型の生産体制の強化と高精度化を図るため、平成28年からIoTシステムの導入を始めた。
年間約6,000種類もの製品を製造する同社だが、部品加工ごとに必要な加工機のプログラムや使用工具データなどの技術情報は、それまで作業者が紙や電子媒体に記録し個別に管理していた。「再受注の際にデータを探す時間がかかり、段取りのロスタイムが多いため機械の稼働率も低かった。加工データの保管はルール化していても個人差が出てくる。こうした事態を改善するためIoTでの一元管理を図ったのです」と山田部長は語る。
検索時間が大幅に短縮、誤認防止にもメリットが
IoTを活用した新システムでは、加工部品の図面と加工用技術情報などのデータを1対1で紐付けして管理。図面に付けたQRコードをタブレット端末で読み取ることで、サーバーで一括管理している加工用プログラムや工具データ、技術情報を全て正確に引き出せるようにした。さらに手持ちの測定工具で行っていた計測を、加工機内で自動計測できるようにし、測定データもサーバーに蓄積していく。
導入後は、5分から10分程かかっていた図面やデータの検索時間が数十秒に短縮。加工以外の作業時間を短縮したことで機械の稼働率が向上した。「端末を使ってコードを読み込めば必ず正しい図面が出てくるため、人が探すよりも間違いがありません」と野澤局長が話すように、類似した図面の誤認防止にも繋がっている。
IoT化をさらに進め、会社全体で効率化を図る
「今までのやり方に慣れた社員にとってIoTは苦手意識がある人もいる。誰でも使いこなせるものにすることを意識しないといけない」と山田部長。そこでシステムの開発段階から製造部門の社員とベンダーのエンジニアが直接話し合い、より使いやすいシステムを構築してきた。「機械装置の設計や製造も行っているベンダーなので、製造業を知っていることもシステムを作る上でよかった。使ってみて改善した点も多くありましたし、今も継続的にカスタマイズしています」。
今後は製造部門のIoT化を拡大するとともに、総務などの間接部門でも導入し、全社として仕事の効率化を進めていく予定だ。現場では鋼材の値上げもあるなか、コストや納期により高いレベルが求められている。IoT活用によって高品質な製品を安定価格で供給し、さらなる付加価値の向上を目指す。
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