活用事例

無菌周年養蚕繭量産化の研究開発

餌となる桑の葉の色素が抽出された「みどり繭」。
白繭と比べるとその違いがよくわかる。
利用制度

平成27年度戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン)

企業情報

株式会社きものブレイン

〒948-0056
十日町市沢口丑510-1
TEL 025-752-7700 FAX 025-757-2008

新たなシルク産業創出を目指して

株式会社きものブレインは、きものの丸洗いやしみ抜き等のアフターケア、撥水加工等のビフォア加工など総合的なきもの加工に係る事業を行うほか、きものリサイクル業や、和装品企画製造など、正に日本の伝統産業である「きもの」に関する幅広い事業を展開している。

しかし、きもの産業の縮小や人口減少・高齢化が進む地域の中で、地域の若者が明るい未来に希望を持てるような新しいシルク産業の創出を追い求めてきた。

無菌人工飼料給餌周年養蚕技術の確立

各方面へ情報収集を行っているうちに、蚕と絹に関する研究の第一人者や無菌養蚕技術の第一人者と巡り合った。平成27年度からは、戦略的基盤技術高度化支援事業を活用し、大学教授らの監修を受けながら、無菌人工飼料給餌周年養蚕に関する研究開発の取組を開始した。

その取組の中で、量産スケールでの蚕病抑止技術の有効性を確認し、また蚕の成長に最適な飼育条件を確立することなどの成果を得ることができ、約3年の歳月をかけ人工飼育による繭の量産化に成功した。
人工飼育で得られた繭糸には構造、組成に差は見られず、むしろ黄変しにくいなどの特徴があり、従来の桑葉飼育下のものより付加価値および利便性が高いことが実証された。

しかし、繭から糸に加工する加工賃が高いという課題にぶち当たり、衣料の原材料である糸としての供給は当面は難しいとの判断をせざるをえなかった。

「健康になるためのシルク」みどり繭との出会い

そのような苦境の中、出会ったのが「みどり繭」。研究開発の中で、「みどり繭」は白繭に比べ、セリシンやフラボノイドなどの成分が多く含まれていることがわかり、従来のシルクを超える機能を持ったシルクといえるものだった。また、「みどり繭」は持続的に紫外線を遮蔽する機能が従来の白繭よりも高いことがわかり、紫外線遮蔽機能を有効に利用することで、繊維以外など幅広い分野において利用の可能性があることがデータから確認できた。

「絹生活研究所」ブランドの立ち上げ

研究開発で確認された「みどり繭」の優れた特性を活かし、化粧品や繊維製品を関連メーカー等と共同で次々と開発した。そして、生産した繭と絹糸を原料に幅広い商品を展開するライフスタイルブランド「絹生活研究所」を新しく立ち上げた。シルク製品になじみの深い客が来店する呉服店と協業した販売やネット販売により、「絹生活研究所」のブランド展開を図っている。

同社では、この取組にとどまらず、“みどり繭の力で人びとの健康と美を守る”をコンセプトに、さまざまな大学の研究者と連携し、データに基づくエビデンスを有した新たな化粧品やサプリメントなどの開発の取組も進めている。

十日町地域はもともと養蚕が盛んであり、過去に製糸工場も存在していた伝統的な絹織物産地である。世界展開を見据えた十日町発の「新たなシルク産業」創出の取組は、はじまったばかりだ。