活用事例

高能率・高品位加工を実現する多孔質ハニカムダイヤモンド砥石とハイドロプロセスを融合させた研削・研磨システムの開発

新たに開発したハニカム砥石とハイドロシステムを利用することで、従来以上の研磨精度と加工速度を実現した。
利用制度

平成28年度~平成30年度戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン)

企業情報

株式会社ナノテム

〒940-0021 新潟県長岡市城岡3丁目2-10

 

株式会社ナノテム(以降、(株)ナノテム)は長岡技術科学大学で培われた精密加工技術を事業化するために平成10年4月に創業した国立大学発ベンチャー企業の第一号である。設立後、東北イノベーションキャピタルから出資を受けるなど資本的な成長と、平成18年度、平成21年度、平成28年度と3度のサポイン採択による技術力の高度化を果たしている。セラミックス焼結技術をコア技術とし研究開発してきた、非接触搬送システムや研削・研磨システム技術が注目され、数々の受賞を経験している。

起業~そして研究開発

長岡技術科学大学の大学院を修了後、一度は四国の工具メーカに就職した高田社長。そこでは、ダイヤモンドが持つ潜在的な能力を十分に活かしきれていない現状に不満を抱き、母校に戻り助手として研究を開始した。その過程で得たセラミックスの焼結技術に着目し、実用化に向けて起業した。当初はダイヤモンド工具の実用化を狙って起業したものの、新規工具の場合、その評価期間が長いなど、難しいことを痛感した高田社長。そこで方針を転換し、加工物の固定具(チャック)に取り組んだ。元々加工する際に真空チャックを使用していたが、加工物とチャックが同じ寸法、形状でないと固定ができず、使い勝手がよくなかったことに着目した高田社長。そこで、大学で培った専門性を活かし、多孔質セラミックスを利用した真空チャックを開発した。サポインを利用したその研究で製品化まで実現し、社内での利用に留まらず、外販にもつなげることができた。(株)ナノテムを訪問すると、真空チャックのデモを見ることができる。真空チャックに金属ブロックを固定すると、手の力では外すことができない力でチャックされる。百聞は一見に如かずとはこのことで、実演により取引につながるケースも多いという。

半導体向けセラミックス材料の研磨技術の開発

平成28年度から3年間、サポインを利用して取り組んだのは、半導体向けセラミックス材料の研磨技術の開発だ。従来、半導体向けのサファイアやSiC基材の研削・研磨工程は砥粒が分散されたスラリーで加工する方式が多かった。この方法では加工速度を高速化することが難しいことや、スラリーを大量に消費することなどの課題があり、(株)ナノテムにて新規研削・研磨工程の開発に着手した。新方式では、今まで非接触搬送システムの開発などで培った技術を活かし、適切な条件で基材と砥石とを接触させ、加工する方式を考案した。ダイヤモンド工具の実用化が狙いで設立された当社ならではの強い想いがここにあった。従来の方式では研磨中の基材は、砥石との接触や研磨時の荷重により反りが生じたり、不均一な研磨になったりする。そのため、非接触搬送システムで培った技術を活かし、基材と砥石とを均一な圧力で面接触させた。加えて、砥石の開発などを行い、設定した研磨精度を達成することができた。サポイン終了後は、半導体分野はもちろん、その基盤技術を活かして半導体以外の様々な業界から問い合わせが相次いでいるという。これからも(株)ナノテムが創る新しいものづくりへの期待は大きい。