活用事例

環境対応型先進無人飛行機(UAV)用ジェットエンジンの開発

展示会でのデモンストレーションでは、その静音性に、見学者の注目が集まった小型ジェットエンジン。エンジンは驚くほどコンパクトだ。
利用制度

平成22年度戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン)

企業情報

YSEC株式会社

〒953-0054
新潟市西蒲区漆山字四十歩割8460
TEL0256-77-7771 FAX0256-77-7778

 

航空機部品に欠かせない難削材切削を共同研究

航空・宇宙分野やエネルギー関連の部品製造・加工を手がけるYSEC株式会社は、産学官連携により「無人飛行機用ジェットエンジンの開発」という新たな事業に取り組んでいる。

そもそものきっかけは、新潟県工業技術総合研究所から、航空機産業への参入に向けた「難削材の切削技術」に関する共同研究の話が舞い込んだこと。航空機部品は、チタン合金等の難削材が多く利用され、また複雑な形状をしているため、その加工技術の確立が課題となっていた。同社は共同研究を通じ、より高度な切削技術を習得、同技術の活用による小型ジェットエンジン製造にその出口を求めた。

高い切削技術で高性能なエンジン開発に取り組む

ジェットエンジン開発は、新潟市が進める産学官連携による航空機関連産業支援「NIIGATA SKY PROJECT」の取り組みの1つ。(独)産業技術総合研究所の岩田主任研究員が提唱している空中自動輸送機を新潟で開発しようというもので、経済産業省の戦略的基盤技術高度化支援事業(通称:サポイン)に採択された。

ジェットエンジン開発の課題は、出力の向上、燃費向上、低騒音。これらの課題解決のため、ジェットエンジンに使われている強度、軽量、耐熱性などそれぞれ特徴を持った複数の金属部品を、複雑な形状にも対応し高精度に切削しながら、ジェットエンジンの改良を行っている。

同事業は同社、(独)産業技術総合研究所のほか、NICO、(有)小林製作所、佐渡精密(株)、(株)ジェイシーエム、新潟大学のコンソーシアムによって進められている。共に開発を進めている県内企業とは、産学官の一連の連携を通して知り合ったという。また、エンジンシミュレーションを担当している新潟大学の先生は、同社が新潟大学地域共同研究センター(現在、産学地域連携推進機構)に相談に行き紹介してもらった経緯がある。

それぞれが得意分野で協力する連携の力

戦略的基盤技術高度化支援事業の実施にあたり最も大変だったのは、時間が限られていたこと。「平成22年度の緊急経済対策で決定した事業で、平成23年1月に始めて9月末までに形にしなければならず、エンジン開発作業に最優先で取り組みました」と白木社長は振り返る。その甲斐あって期日までに無事完成。10月に開催された東京国際航空宇宙産業展では、エンジンの点火デモンストレーションも披露した。

短期間でのエンジン開発における連携を振り返り、白木社長は「各々が一番得意なものに注力し、日々高め合いながら進んできました。我々はモノづくりが得意ですが、論理的に性能を伝えるのが苦手です。逆に研究者はそこが得意で、さすがだと思いましたね」と語る。

今後は、まずはエンジンの10万回転を目標にエンジンの改良に取り組む同社。産学官連携によって種が撒かれた航空産業の芽を、新潟で根付かせる夢に向かって、その挑戦は続く。