有限会社宮川産業【商工会、金融機関もバックアップ。地域の通学に欠かせない二輪車修理・販売店事業を未来へ承継】

2025年08月18日
NICOpress201号専門家等相談

商工会、金融機関もバックアップ。
地域の通学に欠かせない二輪車修理・販売店事業を未来へ承継

自動車整備の機器や工具販売・修理を主力とする宮川産業は、二輪車修理・販売店であるモーターサイクルフタワの事業を2024年10月に承継。地元の商工会と金融機関を通じて新潟県事業承継・引継ぎ支援センターにつながり、早期の第三者への事業承継が実現した。

有限会社宮川産業 代表取締役 山﨑寛 氏/モーターサイクルフタワ/ふたわ美容室 本多和美 氏
【譲受企業】有限会社宮川産業
代表取締役 山﨑寛 氏

【譲渡企業】モーターサイクルフタワ/ふたわ美容室
本多和美 氏

「事業を承継する不安よりも、自転車の修理で困っている地域の人たちを早く何とかしたいという気持ちが優先していました」(山﨑代表・写真左)。「何から始めていいのか分からず、一人で途方にくれていたので、支援機関の皆さんの存在が本当に頼りになりました。山﨑さんが引き継いでくれて地域の人たちも喜んでいます」(本多氏・写真右)。

店舗存続のため第三者承継。
支援機関が手続きをサポート

モーターサイクルフタワは、新潟市の岩室地域で唯一の二輪車修理・販売店として地元で長年親しまれてきたが、2024年7月に前事業主が逝去。妻の本多氏は廃業も考えていたが、当地区の中学生の大半が自転車通学をしていることもあり、店の存続を要望する声が上がっていた。「お客様から自転車の修理を他に頼めるところがないと聞き、巻信用組合の斎藤さんにご相談したところ、事業承継・引継ぎ支援センターという機関があるので相談してみませんか、というお話しがありました。その矢先に、宮川産業の山﨑さんが主人の焼香に来てくださったのです」と本多氏。自動車整備機器の販売・修理を手掛ける宮川産業の山﨑代表は、「フタワさんはおじいさんの代から知っていて、亡くなったご主人とも趣味のバイクを通じて長い付き合いがありました。地域の人に必要とされているお店をなくしてはならないという使命感から、何かお手伝いできませんかという話をさせてもらいました」と語る。

本多氏は巻信用組合の斎藤氏を介して、事業承継・引継ぎ支援センターにつながり、サブマネージャーの齋藤氏が担当に。一方、同時期に山﨑代表から事業承継の相談を受けた岩室商工会(現・新潟にしかん商工会)経営支援室長の圓山氏も、同センターのエリアコーディネーターである関根氏に話をしていた。そこで昨年8月、齋藤氏と関根氏、圓山氏、斎藤氏の4名でフタワを訪問し、本多氏と面談した。「その後、山﨑代表とも面談し、事業承継・引継ぎ支援センターを通じた専門家への相談であれば5回まで無料で利用できるというお話しをしました」と同センターの齋藤氏が話すように、9月には「専門家派遣制度」を活用し、1回目は本事業の注意事項を税理士に確認。2回目は売買契約書の内容について法的な問題がないかを司法書士に相談した。「結果として山﨑代表が作成した契約書にほぼ問題はありませんでしたが、個人事業主の場合、税務上の問題が出てくることが多いので専門家のサポートを通したほうが安心です」。

事業承継に関わった方々

本多氏、山﨑代表の思いを受け、商工会、信用組合、新潟県事業承継・引継ぎ支援センターの担当者が連携して支援。事業承継後もさまざまな相談に応じている。

事業承継の相関図

 

新潟県事業承継・引継ぎ支援センター/サブマネージャー 齋藤氏

3ヵ月という期間で事業承継ができる例は、ほぼありません。商工会、信用組合との連携がしっかり取れていたので、承継の手続きは本当にスムーズに進みました。(新潟県事業承継・引継ぎ支援センター/サブマネージャー 齋藤氏)

新潟にしかん商工会 経営支援室/室長 圓山氏

商工会はNICOをはじめ、専門家などのネットワークがあるので、会員の相談に対していろいろな方面の方とつながりながら一緒に考えていくようにしています。(新潟にしかん商工会 経営支援室/室長 圓山氏)

巻信用組合 岩室支店/代理 斎藤氏

当組合では事業承継・引継ぎ支援センターと合同の勉強会も開催しています。地域密着ならではの取組も行っているので、ぜひ相談してほしいと思います。(巻信用組合 岩室支店 /代理 斎藤氏)

 

地域へのPRで修理依頼が増加。
無店舗型の出張修理をスタート

こうして昨年10月、モーターサイクルフタワの事業を宮川産業が承継。仲介業者を挟むことなく、3ヵ月という短期間で事業承継に成功した。承継後は店舗にチラシを貼り、地域の回覧板や小中学校に案内を出すなど、事業サービスを承継したことを地域にもアピール。商工会の「産業まつり」への出展や、通学自転車の展示販売会を開催したことも功を奏し、修理依頼や自転車の注文が増加した。

現在、岩室・和納地区からの依頼であれば、移動修理用のワゴン車で修理に出向いている。「もともと私は出張修理型の商売をしていて、バイクも自転車の修理もできたので、まずは無店舗型の出張修理という形態でスタートしました」と山﨑代表。「最近は宮川産業の山﨑さんがどういう人柄なのか、お客様に伝わってきて、今はもう安心してお任せしています。皆さんが喜んでいる声が私の所にも届くので、主人も喜んでいると思います」と本多氏は話す。

移動修理の様子

お客様から依頼があれば、移動修理用の車で現地に駆けつけ、その場で修理。特殊な事例の場合は自転車を持ち帰り、自社や協力店で修理を行うサービスを展開中。

案内チラシ

圓山氏をはじめ、関係者でアイデアを出し合ったという案内チラシ。公式LINE、Instagramからも依頼を受け付けている。

通学用自転車の展示販売

宮川産業は承継後、中学校入学者に向けて、通学用自転車の展示販売会を開催。今後も店舗を利用したイベントを計画中だ。

 

早期の相談が解決の近道。
事業承継後のフォローも力に

今回、事業承継・引継ぎ支援センターを利用した実感として山﨑代表は「会社によって課題はそれぞれですが、事業承継について何か不安要素を抱えていたり、迷っていることがあるなら、NICOをはじめいろいろな支援窓口に素直に聞いてみたほうがいいと思います。相談するのが解決のための一番の近道です」と話す。本多氏も「実は当初、主人を亡くし気落ちしていたことから私の美容室の廃業も考えました。その時センターの齋藤さんから〝ゆっくり考えたほうがいい。子どもさんが後を継ぐことを考えているかもしれませんよ〟と言われ、思い切って美容師をしている娘の夫に相談したところ「力になりたい」と言ってくれたので、こちらの引き継ぎについても相談しています。事業承継をしたら終わりではなく、センターの齋藤さんも関根さんも、ずっと気にかけてくれるのが嬉しいですね」と続ける。

将来的には出張修理だけでなく、実店舗の再開も視野に入れているという山﨑代表。「店舗でないとできないサービスもありますし、実店舗があるから来るというお客様や、顔が分からない人に修理の電話をするのが不安という方もいると思います。地域の困った人を助けたいという想いがあるので、ゆくゆくは実店舗も考えていきたいです」。

地元の商工会や金融機関、事業承継・引継ぎ支援センターが連携して動いたことで、円滑な事業承継に成功した宮川産業とモーターサイクルフタワ。今後も地域になくてはならない存在として、多くの人に愛されていくに違いない。

 

POINT

 

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有限会社宮川産業

[宮川産業]三条市上須頃大屋敷2430-2
TEL.0256-34-5105
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