生産管理システムを磨き上げ、効率化と品質を追及。
企業イメージ向上を目指す
2004年に創業し、最先端のマシニングセンタを駆使し、半導体関連部品をはじめとした各種機械部品の製作を手掛けるユーティエスは、独自の生産管理システムを開発・運用するなど、生産現場の効率化を推進。DXは生産性向上のみならず、企業の価値やブランドイメージ向上の観点でも重要度が高いものと捉え、2024年にDX認定を取得している。

機械加工の現場を熟知する白倉代表。「社員が工具や資料を探すのに毎回5分や10分かけているのを見て、そのような時間のロスを削減できる設備の導入やシステム開発を続けてきました。昨今の物価上昇は、100%価格に転嫁できるわけではありません。その中で利益を増やしていく上でも、DXをはじめとした生産性を高める施策はますます重要性を増しています」。
紙での情報管理を見直し
データベース化を進める
ユーティエスは白倉代表が燕市で創業した金属加工を得意とする精密部品製造会社。1台の加工機から始めた事業は現在、プログラムに基づいた高精度の加工を行うマシニングセンタを23台保有する規模に成長している。特に需要が高いのが半導体製造装置に使われる精密部品で、誤差10ミクロン(=0.01mm)未満の精度が求められる。2022年には本社近くに精密部品を安定した品質で量産製造する新工場を稼働させ、生産体制を一層強化してきた。その中で、夜間の無人運転も可能とするCPP(コンパクトパレットプール)システムや、短時間で高精度の加工ができる最新の5軸加工機を導入するなど、時代のニーズに応じた設備投資を積極的に行い競争力を強化している。
それとともに、白倉代表は無駄をなくし生産性を高めるための生産管理システムの開発にも力を入れてきた。「2020年頃から独自の生産管理システムを開発してきました。当初は受注した加工品の担当者や、現状の物の動きが分かるという簡単なシステムでしたが、現場が必要とする機能を徐々に付け加え、ブラッシュアップを続けています」。
システム開発の背景には、多品種少量生産を請け負う中で生じる、加工に必要な資料を探す際のタイムロスがあったという。「例えばリピート品の注文が来た時に、紙で保管された資料を見つけ出すのに毎回時間がかかることが課題となっていました」。
新工場には複雑な加工を得意とするDMG森精機の5軸加工機が並ぶ。切削加工で一定レベルまで精度を高める生産方式で高品質と効率化を追求している。
作業の見える化を進め
社内の情報共有をスムーズに
生産管理システムはマシンの稼働状況と加工の進捗度をリアルタイムで把握でき、工程別の作業完了時間も予測できるようになっている。製品の基本情報はマスター登録で一元管理し効率化を進めてきた。また、過去に手直しがあった製品には、管理リストを色分けして注意を喚起し、納期が迫っている加工品の項目に炎のアニメーションを加えるなど直感的にわかるよう工夫している。全ての機械の稼働状況を可視化することで、社員がより効率的な運用や段取りを意識できるようにしている。
「加工品のリストや機械の稼働状況は、工場やオフィス、会議室に設けた大型モニターに表示されますし、社員に支給しているタブレットでも見られます。製造に関する基本情報も確認できますので、書類を探す手間がなくなりました。過去の履歴から注意点も把握できますので、担当者が都度リーダーに質問し、作業の手を止めるというロスも抑えられます。全社員の作業状況が可視化されることでリーダーが部下の進捗状況を確認する時間も減らすことができています」。
また、加工に必要なエンドミルやドリルなどの工具を棚から探し出す手間を省くため、キャビネット型の工具管理システム「MATRIX」を導入。タッチパネルで必要な工具を検索すると、保管されている引き出しが自動で開く仕組みだ。使用時には指紋認証を行うため、誰がいつどの工具を使用したかも記録され、在庫状況も把握できる。「工具の使用を報告する手間がなくなり、棚卸しも一瞬でできます。工具を発注する適切な量やタイミングを見極めやすくなったこともメリットですね」。
社内各所に設置されている大型モニターには、機械の稼働状況と生産状況を表示。過去の稼働状況や生産量の分析もできるため、データに基づいた改善策も検討しやすくなっている。
白倉代表が自らメーカーを訪れ、2020年に県内で初めて導入したタンガロイ社の工具管理システム「MATRIX」。指紋認証をしてタッチパネルで情報を入力すると、加工に必要な工具の位置を教えてくれる。
高精度CNC三次元座標測定機を備えた検査室。最新の品質評価測定設備によって、高い精度が求められる品質検査に対応。測定時間を短縮し、複雑な形状の部品も測定できる。
福利厚生にもつながる効率化
社内周知も重要
ITやIoT技術を使った効率化に取り組んできた同社は、燕三条地域でいち早くDX認定を取得した。「地域のリーディングカンパニーとなるには他がやっていないことに挑戦しないといけない。DX認定の取得はISO認証と同様に、自社の企業イメージを高めるための手段になると考えました」。2023年にDX推進ビジョンを策定し、社内でITに強い3名の社員を集めてDX推進委員会を立ち上げ、委員会を中心に業務改善や社内周知を進めている。
白倉代表は、DXを推進する上で苦労することは、社員全員がシステムを十分に活用できるようになるまでに時間がかかることだという。「タブレットを導入し始めた頃は、全員に端末を支給していても持ってこない人もいました。次第に便利さを実感して使うようになるのですが、浸透するまで一定の時間がかかります。効率化によって、社員の年間休日を増やすこともできましたので、DXの推進は社員の生活にも恩恵があるということを周知していく必要があると感じています」。
現在、新たなDXの取組として、マシニングセンタで使うプログラムをAIで作る技術を他社と共同で研究している。「その研究が100%ものになるかは分かりませんが、30%でも得るものがあれば、それだけ前に進めます。DXはすぐに成果が出るものではありませんが、未来に芽を出す種のようなものとして投資し、今後も力を入れていきたいと思います」。
社員が気持ちよく、高いモチベーションで働けるように、工場内のデザインにも力を入れる。近未来的なデザインのブースは工具を交換するための専用スペースとなっている。
企業情報
株式会社ユーティエス
燕市分水あけぼの1-1-80
TEL.0256-97-0898
URL https://www.uts-ltd.co.jp