株式会社関川産業 セキカワカナモノ【”フライパンで作れる炊き込みご飯” アウトドアの食体験を通じて災害時にも役立つ商品として提案】

2025年10月14日
NICOpress202号テストマーケティング新事業展開販路開拓(国内)

“フライパンで作れる炊き込みご飯”
アウトドアの食体験を通じて災害時にも役立つ商品として提案

明治時代に金物の卸小売業からスタートした関川産業は、6年程前から地域貢献のための新事業に挑戦し、グループ会社が生産するお米を使った炊き込みご飯を開発。アウトドアでの食体験が防災にも応用できると考え、調理体験を通じた商品提案や幅広い分野への販路開拓を進めている。

執行役員 新保裕也 氏
執行役員 新保裕也 氏

当社の商品は非常食というよりも、日常使いでのローリングストックを提案しています。この事業を始めたのは、自社ブランドを作って県外に商品を売り出し、買っていただいた方の数%でもいいから新潟に来てほしいという思いがあったから。10年後にはセキカワグループを支える柱の一つになればと考えています。(新保氏)

グループ企業と連携し
食品分野の商品開発に挑戦

家庭用金物を扱う関川銅鉄商店として1905年に創業した関川産業は、現在、建築資材卸販売やリフォーム業など幅広い事業を展開する。その一つとして、創業の地で調理器具などの家庭用金物を販売しているのがセキカワカナモノだ。

同社は「おいしくてしあわせな暮らしづくりプロジェクト」と題し、2019年から食品加工の研究をスタート。これまで経験がない事業に踏み出したのは、新潟県中小企業団体中央会主催の講演会を通して、東京の企画会社と「食の高付加価値化研究所」の椎葉所長と出会ったことがきっかけだった。「当社のグループ会社で生産しているお米を使い、当社扱いアイテムでもあるフライパン一つでできる炊き込みご飯を開発したら面白いのでは、というアイデアをいただいたのです。そこで新発田産コシヒカリと、フライパンでの調理を組み合わせた当社ならではの商品を作ることにしました」と新保氏。

商品化するうえでは、生産者の顔が見える高品質の原材料を使用することや、雑貨店等をターゲットに売場で目をひくように、パッケージデザインや中の具材をきれいに見せることにこだわった。「手作業で袋詰めしており、どうすればきれいに見えるかを加工場の皆さんが研究してくれました」。

「無洗米の炊き込みご飯」は、ひじき・根菜・打ち豆の3種類

「無洗米の炊き込みご飯」は、ひじき・根菜・打ち豆の3種類。無洗米なのでそのままフライパンや鍋に入れ、水200mlを入れて炊き上げれば完成。あえて調味料を加えていないので、好みの味付けができる。

ごはんにかけたり料理にも使える「おにぎり塩」

ごはんにかけたり料理にも使える「おにぎり塩」。

 

日常でも災害時でも役立つ
アウトドアの調理体験を紹介

具材の量や、美味しく炊ける水の量は何度も試作を重ねて研究し、「無洗米の炊き込みご飯」が完成。「おにぎり弁当」というブランドで2020年から販売を開始するが、新型コロナウイルスの影響で思うような営業活動ができなくなる。「2020年にリリースしたのは東京オリンピックに合わせたかったから。県外や海外をターゲットにしていたので、空港のお土産屋さんに置いてもらう計画でしたが全てストップしてしまいました。思案していた際に、この商品を見たNICOの方に“防災にも使えるのでは”と言っていただいたのです。また、同じ時期に燕三条のメーカーから、『おにぎり弁当』をキャンプ用の飯ごうに入れて持ち運びできるようにしたいと相談があり、パッケージを変えたものを『ハッピーキャンプ』というブランドで2021年から売り出しました」。防災向けに開発した商品ではないが、アウトドアで作って食べるという体験が、災害などの非常時に役立つのではないかと考え、セキカワカナモノで扱う調理器具とともに「フライパンで炊飯する」という体験を広める提案をしていきたいという。

同じく防災に特化した商品ではないものの、国産アルファ化米を使った「早炊きおにぎりご飯」は水だけでも調理可能で、お湯が沸かせない非常時でも食べられる。また、計量カップの代わりになるようにパッケージにウォーターラインを表示するなど、アウトドアでも非常時でも使いやすい仕様に工夫している。

YouTubeでは社員自ら自社で取り扱う調理器具を使って屋外での食べ方やアレンジレシピなどを発信。小売店への販売戦略として、食品と調理器具をセットに様々なアレンジの売場提案ができることは同社の強みとなっている。「商品だけでなく調理方法まで提案している点が他の食品メーカーさんとは違うと言っていただきます」。

アウトドア向けに展開しているブランド「ハッピーキャンプ」

アウトドア向けに展開しているブランド「ハッピーキャンプ」。メスティンの中にすっぽり収まるサイズ感が持ち運びに便利。アウトドアや非常時に不足しがちな野菜や海藻が気軽に摂れる。

国産アルファ化米と乾燥具材をブレンドした「早炊きおにぎりご飯」

国産アルファ化米と乾燥具材をブレンドした「早炊きおにぎりご飯」は、レンジや鍋で10分加熱。水で戻すだけでも食べられる。パッケージも「かわいい」と好評。

 

非常食としては、袋に直接水を注ぎ、米と具材を混ぜて約60分で完成

中身を取り出し、水をウォーターラインまで入れれば200mlの計量カップの代わりに使えて便利。海外の方にもわかりやすい。非常食としては、袋に直接水を注ぎ、米と具材を混ぜて約60分で完成する。

 

アレンジレシピをYouTubeで積極的に配信

フライパンを使った調理方法や、パエリアなどのアレンジレシピをYouTubeで積極的に配信。

 

展示商談会で取引先を拡大
地域の事業者と連携した商品開発も

NICOのブースで共同出展したスーパーマーケット・トレードショーなど防災関連以外の各種展示会にも積極的に参加。「展示会によってバイヤーさんのニーズも変わるので、少ない商品群でも見せ方を変えながら、いろいろな提案ができるようにしています」。季節の催しに合わせた打ち出し方や、調理アレンジ方法を示すポップを取り入れるなど、売り場展開をイメージしやすい提案を行っている。最近はスーパーマーケット・トレードショーで紹介した新作の発酵調味料が、アパレルや雑貨を手掛ける企業のバイヤーの目に留まり、販売が始まった。「この事業を始めてから、今までお付き合いのなかった大企業と取引ができるようになりました。売上はそれほど大きくなくても、ネームバリューがあるので宣伝効果があります。また、東京のある食料品店に去年から商品を置いてもらっているのですが、店内の総菜コーナーなどで使う調理器具のご注文もいただくようになりました」と、既存事業の売上アップにもつながっている。

現在、新商品の販売にも力を入れる新保氏は「新潟市で漬物の製造販売をしている㈱ヤマキ食品が開発した発酵調味料をベースにする“はっこうじお”シリーズを、6月から販売しています。これは漬物の生産工程で廃棄される部位を乾燥させてパウダーにしたもので、原材料はオール新潟産です。当社が食品加工事業を始めた目的は、地域の事業者さんと連携しながら新しい商品を開発して世に送り出し、地域に貢献することなので、今後もこうした取組を展開できればと考えています」と話す。

東京のスーパーや関西圏の小売店、高速道路のサービスエリア、百貨店をはじめ、燕三条製の調理器具と同社の食品のセットが、新潟県のふるさと納税返礼品に採用されるなど、着実に販路を拡げている同社。創業120周年を迎え、今後もさまざまな可能性を模索しながら、防災をはじめ地域に貢献できる商品を提案していく。

はっこうじお

「はっこうじお」は漬物を原材料とし、ミネラルや野菜の食物繊維を摂取できる健康志向の調味料。

2025年2月開催のスーパーマーケット・トレードショー

2025年2月開催のスーパーマーケット・トレードショー(NICOブース共同出展)で「はっこうじお」「おにぎり塩」を提案。反響が大きく、今年度の参加も予定している。

 

POINT

  • 地域貢献を軸にグループ会社が持つ強みや商材を活かした食品事業に挑戦。
  • 商品の使用シーンを見つめ直し、普段使いの延長で災害時にも役立つ商品展開をアピール。
  • 食品事業をきっかけに販路拡大。調理器具をセットにした売場提案で取引先のニーズに応える。

 

企業情報NICOクラブ会員

株式会社関川産業 セキカワカナモノ

新発田市大手町1-1-1
TEL.0254-22-3781
URL https://www.sekikawa-pb.co.jp/

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