第34回 ニイガタIDSデザインコンペティション 2024
総評

第34回 ニイガタIDSデザインコンペティション 2024

第34回 ニイガタIDSデザインコンペティション 2024総評

【ニイガタIDSデザインコンペティションについて】

■前回を上回る数多くのエントリーと、大変完成度の高い商品で審査会を迎えることができましたことは、ひとえに常日頃からの企画・試作・実現化に向けての開発投資をしっかりとなされてきた所以だと感謝しております。このコンペは今回で34回目になりますが、継続していくことで次年度の商品開発計画を喚起すると同時に、専門家からアドバイスを受けて完成度を高めていく仕組みが自治体の中でも卓越していると思います。

 


【本年度の出品傾向は「革新」】

■本年度のニイガタIDSデザインコンペティションの傾向は、「革新」でした。コロナ禍に学びそこを超えた昨年度の「守りから攻め」の傾向から更に進んで、日常や既存の常識を一から考え直す「革新」的な志向が様々な提案の中に見て取れました。成熟した商品は安定した市場を形成しますが、同時にそこはレッドオーシャンとなるために、知財に縛られ、価格競争に巻き込まれます。その負のスパイラルを脱出する手立てが「革新」だと思います。具体的には、ダイソンの話が分かりやすいかもしれません。市場売価が停滞していたドライヤー市場にダイソンのドライヤーが参入したことで、様々な高機能ドライヤーが追随し、このマーケットは復活しました。今年のIDSデザインコンペでも同様にそれぞれの成熟市場をもう一度奮起させるようなこの「革新」が多く見られました。

 


【各賞の「革新」について】

■グランプリを受賞したwomen farmers japan株式会社は、家族経営農家で働く女性の自尊心の回復と自己実現を図る6次産業化事業収益のしくみを創りました。農家の典型的な体質が永年常識化していた状況を見直す「革新」として、同じ立場の女性たちが旗揚げしたことが評価されました。また、IDS準大賞の株式会社山谷産業の名栗加工は伝統的な建築技法ですが、これを包丁の柄に応用し、見慣れた柄にブレークスルーを起こしました。

■以下4つのIDS賞についても同様です。オークス株式会社のぬかどこボックスは、扱いにくさから敬遠されていたぬか漬けを見直し、水抜きの可視化で初心者でもできる新たなマーケットを築きました。また株式会社アイガーツールは、シャーペンに挿して使える芯の形状のやすりでやすり市場に風穴を開け、金井産業株式会社は職人が自分の手に合わせて後加工するのが常識だったハンマーのストレート柄をくびれた形状に先加工して、ハンマー市場の常識を覆しました。株式会社松井組の取り組みも同様に「革新」でした。一夜にして深い積雪になる新潟のドカ雪は、除雪する人に休息を与えることなく過酷な作業となり、それが目の前の状況から当たり前にされてきた負の常識がありました。これに対する勤務間インターバルを同業者たちに呼びかけていく動きは間違いなく「革新」でした。

 


【むすび】

このように、今年のIDSでは、常識化したしくみや市場をもう一度原点に戻って考え直してみる姿勢が伺えました。今回の審査を通じて、「ものづくり」、「ことづくり」に欠かせない「原点回帰による革新」を開発の指針としている皆さまを誇らしく感じました。

審査委員長
村田 智明

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