今年のニイガタIDSデザインコンペティションは、これまでとは、様相が全く異なるものになりました。出品数が98点と過去最高の点数だったことも一つの驚きでしたし、緊急事態宣言下の中、初めてのWeb審査ということで、実際に製品を手にした審査が出来ずに難しいものがありました。
世界が21世紀に入った後も、2000年代というのは、まだ20世紀の価値観を引きずっていた部分があったと思っています。ところが、2011年の東日本大震災、その後の異常気象などによる災害に日本が見舞われ、そして去年、世界中がコロナという一つの災害に見舞われたことで、私たちを取り巻くさまざまな価値観が大きく変わりました。数年前に国連が出したSDGsという指標は、このコロナを予見していたわけではないでしょうけれども、その後の時代の価値観の変化に合った指標だったのではないでしょうか。価値観が変わってくることで、その中で消費されるモノやコトというものも当然変わってきます。このような新しい価値観、新しい生活スタイルの世の中に対して、新潟県の企業は何を発信していくべきなのか、これが、今、皆さんに突き付けられている一つの問題だと思っています。ただ、新潟県の企業のみなさんは、新しく問題点が出てくる中でも、技術や伝統の力、そしてデザインを通して解決する力を持っていると、私は信じています。モノづくりの実力があり、素材に対する自信がある。つまり新潟県は、長い歴史によって裏打ちされた地場の経験と実力がある地域ということです。皆さんのモノづくりが、これからの時代でも必ず実力を発揮してくれることと信じています。
今回、大賞が「コミュニケーション」という新しいジャンル、新しい審査基準から選ばれました。このことは、これからのニイガタIDSデザインコンペティションが目指すべき未来へ、ひとつの指針を与える受賞だったと思っています。
審査委員長
(株)ワールドフォトプレス編集局長 土居 輝彦
生活市場へ向けた「新しい商品」、生活を支える「新しい仕組み」がニイガタにはたくさんあります。