メーカーとして成長していくための人材強化・育成に注力
オールステンレスの洗練されたデザインと機能性が認められ、世界で愛されている包丁『GLOBAL』を展開する吉田金属工業。確固たるブランド力を身に着けながらも、足りていなかったのが間接部門のパワーだった。会社の次なる成長を目指し、コストもかけた戦略的な人材採用で社内に新たな風を吹き込んでいる。

「長﨑は前職でも総務部門を担当していた経験と、仕事に対してこうあるべきだ、という気持ちを持っていましたので、ぜひ当社でスキルを活かしてもらいたいと思って採用しました」と話す高野部長(写真左)。「当社には自分の能力を活かせる環境があると思っています。入社して良かったです」と話す長﨑係長(写真右)。
プロフェッショナル人材事業を活用し
間接部門の戦力をアップ
吉田金属工業では、この3~4年の間に主に間接部門を中心に10人以上の経験者を採用。その背景には、町工場からメーカーへのステップアップを図っていくという意思がある。高野総務部長が2017年に同社へ来た頃は、約100人の社員のうち9割弱が製造部門で、総務は4人、品質管理担当が1人、生産計画・技術担当が2人という体制だった。「メーカーとして今後も安定的に良いものを製造していくための体制や人事管理としては不十分でした。社長も、このままでは良くないから変えていこうという思いが強かったです。そこで、新潟県プロフェッショナル人材戦略拠点から紹介していただいた人材ビジネス事業者にニーズをお伝えし、経験者の採用を進めてきました。最初に品質管理部門の次長、次に総務部門の長﨑を採用しました」。
以前の総務部は、各担当者が自分の持ち分を、昔ながらのやり方を守ってこなしているという雰囲気だった。「事務の合理化、高度化を進めようとしても、新しいことをやろうという雰囲気がなかったので、変えるためには違う角度からものを見ることができる人が必要だと思いました。仕組みから変えていける総務の人材が欲しいというニーズを事業者に投げかけた中で、長﨑を紹介していただきました」。
オールステンレスの刀身と柄を一体化した構造の『GLOBAL』包丁は8割が海外への販売。世界各国の調理ニーズに対応し、150種類以上のラインナップがある。
日本国内限定モデルとしては、『GLOBAL』を日本の食文化に合わせ、使いやすさや切れ味にこだわり開発した『GLOBAL-IST』を展開。今後は国内マーケットに向けた新商品開発にも力を入れていく計画だ。
システム活用で総務まわりの業務を劇的に効率化
現在、総務部の中で人事・システム係を担当している長﨑係長は総務経験が豊富。前職の食品卸会社では幅広く業務を手掛け、システム運用にも携わっていた。入社後、まず取り組んだのは人事・給与部門の事務作業のシステム化だ。「手書きやエクセルを使うやり方をしていたものをシステムに乗せるというところから始めました。当時、総務担当者の間では、決められたものはしっかり守る、変えてはいけない、という意識が強かったように思います。それもあってか、実は管理システム自体は既に導入されていたのですが、使われていない状態でした。前職でも同じシステムを使っていたので、対応はスムーズにできました」。
以前の給与計算は一人の社員が担当し、残業もしながら対応していた。それがシステム化によって圧倒的にスピードアップ。ダブルチェックもできるようになり、正確性も向上した。また、良いものであれば変えていこうという方向に、社内の空気も変わっていったという。システムをより一層活用していくため、改めてインストラクターを呼んで研修も行った。「総務は、以前は4名で運営していたところを3名で無理なくやれているので、かなり効率化は図られていると思います」。
長﨑係長はシステムとともに、採用に関する業務も担当。以前は総務部で採用活動をする十分な余裕が持てなかったそうだが、総務業務の効率化によって体制が整った形だ。高野部長は「総務としては、もう少し業務を高度化できる部分がありますし、人事評価のシステム化も取り組み始めたところです」と話す。
前職で培ってきたシステム運用の知識で、それまで手作業が多かった給与計算や申請業務など、事務作業の労力を大幅に削減した。
生産管理や開発部門も強化
社員教育で意識向上も進める
生産管理や品質管理についても、町工場からメーカーに変わっていく過程において、その機能の充実は絶対に必要ということで、経験者を積極的に採用している。現状の業務進行で手一杯だった部門も、現在は管理も含めてしっかり機能するようになったと高野部長は話す。「品質面や生産性の管理については、大手企業からの受注であれば明確なルールや基準を求められます。当社は自社ブランドで販売してきたため、明確なものを確立させないまま進んでいた部分もありましたが、そういった部分が改善されました」。さらに、社内の体制を確立させていくためにISO認証を活用。認証手続きの経験者を採用し、その社員を中心に社内教育や体制づくりを進めて認証を取得した。
また、社員教育としては階層別にマネジメント研修を実施。論理的思考を学ぶなど、社会人としてのレベルを上げてもらうための学びを継続して行っている。「受講者は社員の過半数を超えているので、社員の意識も変わってきていると感じます」。
さらに、最近は新たな市場を企画検討し、攻めていく姿勢が必要として、製品企画担当の人材も採用。これまでは海外の代理店から希望を受けての開発が中心だったが、今後は自社でスピード感をもって企画、製品化に取り組む。「燕三条という産地で、当社は研磨、研削をし、最終製品にするという役を担っている。その体制を維持するためにも、社員に成長してもらうことが重要」と話す高野部長。「会社が変わっていく様子が見えて、仕事をしていても楽しいですね」と話す長﨑係長。新たな変革が加速していく吉田金属工業のこれからが楽しみだ。
階層別のマネジメント研修は月1回半年クールのものをすでに5~6回実施している。 製造部門に関しては、生産の高度化や、管理方法のレベル向上を図るため、原価計算などの基礎知識を学び、専門家を呼んでの研修や、現場指導を受けている。
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吉田金属工業株式会社
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