本年1月に那覇空港物流施設の視察に行ってきました。目的は那覇空港の地理的優位性と24時間機能を活かした国際物流ハブ機能に関心があり、地方からの農水産品輸出拡大を考える参考にするためですが、この企画は真夜中のANA沖縄貨物ハブ視察に沖縄地区税関、那覇商工会議所、現地企業との交流会が盛り込まれた大変有意義なものでしたので、是非ご紹介したいと思います。
感想記
40年ぶりの沖縄訪問は、厳寒の雪国新潟から、外国路線並みの3時間というフライトでいきなり気温20℃超の那覇到着に始まり、「ゆいレール」の車窓から景観の変化に見とれているうちに市内到着。慌てて沖縄税関による説明会場に駆け込んでお聞きした内容は、地政学的影響による沖縄の特徴的な面にも言及した興味深いものでした。那覇商工会議所との交歓会の泡盛に酔う間もなく真夜中の視察へと結構ハードなスケジュールに多少疲れを感じた時、昼夜逆転したようなANAカーゴの業務現場には150名近い同社職員が慌ただしく業務にあたっておられ、時間との闘いに緊張感が漲っており、積込みを待って居並ぶB767型フレイター(貨物専用機)の雄姿に睡魔が吹き飛びます。
那覇空港の国際貨物取扱量は成田、関西、羽田に次ぐ国内第4位にありますが、アジア主要国へのドアー・ツー・ドアー輸送は、ANAカーゴの場合アジア主要都市との間で7路線(ソウル、上海、広州、香港、台北、バンコク、シンガポール)・週35便(※2017ウインターダイヤ)就航しており、従来2泊3日を要していたリードタイムが、那覇発深夜便利用により翌朝目的地到着の1泊2日に短縮できることが最大のメリットと言えます。
但し、積替え手数発生により輸送コストが1.5倍に膨らむこともあり、輸出貨物は半導体製造装置に使用する精密機器や電気機器等の高付加価値製品が主体であり、食品・日用品等には先ずコストと国内物流という課題が立ち塞がります。これは、沖縄ハブ深夜便ネットワークの活用には国内ネットワークとの接続が前提になりますが、現状では新潟県内で商品化された生鮮品を同日中に那覇空港まで持ち込む手段がほとんどないことと、旅客便の貨物スペースが限られていることや、首都圏の空港への寄り道工程を経ることの時間や経費要因を考えて頂ければ容易に理解できると思います。
一方で、地域性を最大活用することで飲食・ホテル・貿易等の国際事業を立ち上げられた地元企業㈱JCCの事業展開は、新規事業立上げと海外販路開拓を検討する上でも大変参考になり、「沖縄で海外販路開拓の予行演習を行っては!?」の言葉に乗せられ、私が期待する農水産品や生鮮食品の輸出を、この沖縄国際物流ハブを利用した「地産外消」により拡大し、新潟経済の活性化を図るという図式化できれば、双方の地域経済発展の後押しが可能になるのではという期待が大いに膨らみます。
無論、日本からの競合製品がひしめく海外市場で、容易に差別化を図ることが出来る付加価値の高い商材であることも必要条件になります。
このように、出発前は空港物流施設視察だけでも十分参考になるのではと思っていましたが、地域産品の海外向け販路開拓やインバウンド誘致を考える上でも大変参考になる視察となりました。
また、その後金沢を訪問する機会があり、小松空港の国際航空貨物便利用状況を聴取しました。現在、貨物専用機はカーゴルックス航空が週4便(ルクセンブルグ3便、シカゴ1便)、中東アゼルバイジャンのシルクウェイ・ウェスト航空がバクーへ週2便就航しています。地元石川県企業の貨物量は1割程度と低調でありながらも、「小松空港活性化プラン」に基づき近隣県である富山県、福井県に加え、中部圏からの貨物の取り込みを得て便数を減らされることなくその存在感を示し、地方空港ゆえの強みを如何なく発揮し、国際貨物取扱量は全国第7位にあります。
もし新潟空港で長野、福島、山形等近隣県から、鮮度が求められる食材も含め航空輸送に適した商材を受け入れることが出来るようになれば、日本海側における国内ハブ空港として航空輸送機能の飛躍的改善が期待できます。この記事をお読みになって自社製品のアジア主要国への短時間輸出にご興味を感じられた方には、より具体的且つ実務的なご相談に応じたいと思いますので、遠慮なくご連絡ください。
以下閑話休題になりますが、沖縄の人達はみなさん親切です。メインストリートの「国際通り」両岸はステーキ、焼肉、土産物の看板で埋め尽くされ、どこもかしこも中国語と韓国語がかまびすしく飛び交い、マイナーな日本人観光客は通りの端をすまなそうに歩いています。少し裏通りに鮨屋を見つけ、地魚を肴に泡盛を嗜むと板前さんも心を開き世間話が花開く嬉しいタイミングとなります。聞けば、外地人は泡盛を好み、内地人が日本酒を飲む、それも新潟清酒が圧倒的に人気の由。新潟を誇らしく感じる時でつい酒肴が進みます。〆のにぎりをお好みで適当につまむと、心身共に満腹となり、心からご馳走さまでそのまま幸せな気持ちで雪の待つ新潟への帰途につきました。
ANAカーゴ沖縄ハブ作業光景
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