NICOPress162
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SSERPOC IN02いま、企業の課題解決に大きな力を発揮することが期待されているIoT(Internet of Things)。モノを通信でつなぎ、さまざまなデータを収集・活用するIoTの導入は、実際にはどのようなメリットをもたらしてくれるのだろうか。多くの企業で現場指導にあたり、NICOのIoTコーディネータ育成研修の講師も務めている大久保氏に、IoT活用の効果や成功させるためのポイントなどについて話を伺った。 IoTを簡潔に説明すると「自動でデータを取り、データを見える化すること」になります。IoTの特長は自動でデータを取るという点。従来のIT化ではデータを取るために、従業員が作業の前後にバーコードを通すといった動作をします。それが現在は、センサーなどのツールが充実し、作業者も自然な行動をするなかで自動的にデータが取れるようになった訳です。 IoT活用には3つのステップがあります。最初のステップは「見える化」です。例えば製造現場で、ある作業の所要時間を計る場合、これまでならストップウォッチを使いました。しかし、それでは全ての作業は計られていません。一方、センサーなどの自動計測機器を付ければ、常に計測している状態になります。そうすると、5分だと思っていた作業時間が、4分30秒や5分10秒といったバラツキがあることが分かる。そこで、時間が長い原因を探り、それを改善することで効率化を図ります。5S活動などの生産性向上の取り組みもありますが、それらはアナログでやっています。そこをデジタル化するというのがIoTの最初の使い道です。株式会社アイ・コネクト 代表取締役 大久保 賢二氏PROFILE1987年に茨城日立情報サービス(株)(現(株)日立産業制御ソリューションズ)に入社し、製造業向けの生産管理システムの構築に従事。2003年から「企業経営に役立つITの導入」を実践し中小企業へのコンサルティング活動に従事する。2016年アイ・コネクトを独立開業。ITコーディネータ協会の研究員、ITコーディネータ茨城の副理事長、茨城県IT・IoTの専門家を務める。IT・IoT導入実績をもつITコーディネータとして中小企業のIT・IoT導入促進を牽引している。 次のステップは、「見える化したデータを分析し、生産活動全体の流れを改善する」ことです。製造工程であれば、初工程から最終の仕上げまでの全てを見える化して、流れを改善する。さらに会社の生産活動全体としては、受注から製造、出荷まで、ポイントごとにデータを取って、全てをつなげて改善を図る。中小の製造業であれば、そこまで出来れば素晴らしいでしょう。 最後のステップは「付加価値の創出」です。例えば、自社製品をお客様に納めた後、製品の稼動状況のデータを取り、それをもとにお客様に改善策を提案するという動きです。自社の生産性向上のためだけでなく、IoTのデータをお客様のために使う、という視点を企業が持っているかどうかは、非常に大きな違いを生みます。製造業も今後は、そうしたサービス的な発想を持たなければ、生き残っていけないと思います。 茨城県のスターエンジニアリング㈱という業務用の生ごみ処理機を作っている会社では、センサーで納入した機器の稼働状態を見られるようにして、ゴミの入れ過ぎや攪拌棒の動きの異常などをリモートで把握できるIoTの導入を進めています。使用状況をつかむことで故障の予防措置に効率よく対応でき、お客様へ夜間電力の利用など電気代節約等の新たな提案も行えます。 サービス業においても活用が増えています。茨城県で進めているのは、味噌屋や醤油屋といった小売店で、お客様をカメラで顔認証して、その人が何度目の来店で、前回はいつ来たかという情報をレジに表示しようという取り組みです。新人や曜日限定勤務のスタッフなど、共有したデータからすぐにお得意様が分かり、スタッフが代わっても「毎度ありがとうございます」と挨拶できる仕組みの構築に取り組んでいます。 また、水戸市の商店街ではIoTで人流解析をして、人やお金、モノの流れのデータを取ろうというプロジェクトも進んでいます。例えばイベント時に混雑する駐車場の空き状況が運営会社を越え現場の課題解決から付加価値創出へ。

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