NICOPress159
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SSERPOC  INいごねり一筋︑製法を守りながら新しい楽しみ方を提案していく 佐渡市沢根で、佐渡の郷土食「いごねり」の製造販売を手掛けている株式会社早助屋。1950年に魚の一時加工業で創業し、1970年からいごねり専業となった。いごねりは、もともと秋から冬にかけて各家庭で作られてきたもので、人が集まる冠婚葬祭の場を中心に食べられていた。 製造業者が年間を通して作るようになってからは、通年食べられるようになり、日常食へと変化。また、涼味であるため、消費のピークは夏へと移った。「通常は1日3,000本ほどの製造が、お盆の時期は1万本にもなります。帰省してきた家族に食べさせよう、帰ってこれないなら送ってあげよう、というおなじみの故郷の味ですね」と四代目見習いの山内氏は話す。 同社の製品は、佐渡で販売する「巻いごねり」と、島外向けの「角いごねり」のみ。一般商品のほか、飲食店や旅館向けの業務用も製造している。販売割合は佐渡が6、島外の新潟県内が3、首都圏や直販が1。NICOの食の大商談会をはじめ展示会や首都圏での販売会にもコンスタントに参加を続けている。 島外への販路開拓にあたっては「チーム佐渡島」という連携組織を設立。佐渡産品の生産者や販売業者のノウハウを集積し、物流、在庫管理、販売の効率化を図っている。 山内氏はいごねりを「もっと楽しんで、遊んでもらいたい」と話す。「醤油をかけたり、酢味噌で食べるのが定番ですが、相川の海士町(あままち)では細く切ったいごねりにめんつゆをかけた“海士町そば”という食べ方がある。また、黒蜜ときなこをかけたり、バニラアイスを添えてスイーツとして楽しむこともできます。知り合った料理人の方々にも、新しいレシピを試してみてほしいとお願いしています」地域で親しまれている食べ方に加えて、新しい味わい方にも可能性を探っている。 また、今後期待しているのが介護食分野だ。「いごねりだけは食べられるという高齢者の方も多く、すでに佐渡では介護施設でも採用されています。柔らかいので嚥下食にもなる。栄養士の皆さんへ提案する機会があればと思っています」。 低カロリーで食物繊維が多いいごねりは、海外のヘルシー志向にもマッチするはずだと話す山内氏。「ネックは保存。もしも将来、冷凍技術が確立できたら海外進出、そこから日本へ逆輸入というのも夢じゃないと思っています」。究極にシンプルで、佐渡ならではのものだからこそ、その可能性が大きいことを作り手が信じている。〒952-1431 佐渡市沢根炭屋町37 TEL.0259-52-6577 FAX.0259-52-3477E-mail order@igoneri.com URL http://igoneri.com/ローターローター07特 集そこにしかできないものづくり“ここだけ”の価値を発信する佐渡では薄く伸ばしたいごねりをくるくると巻いた「巻いごねり」が伝統のスタイル。島外の新潟では角いごねりが主流だ。ちなみに佐渡では角いごねりは全く売れないそう。取り組み「佐渡でいごねりを島外にまで販売しているのは、現在は当社を含めて2社。他には漁協のお母さんたちが作って販売をしています。自分としては、作り手がこれ以上減ってほしくない。地元のお母さんたちが作るいごねりがあることで、佐渡の食文化として伝わり、残っていくものだと思うからです」と話す四代目見習い山内氏。ポイント■いご草と水だけという佐渡伝統の作り方を守る■商品は変えずに、新しい食べ方の提案で魅力を掘り起こし■佐渡ならではの特産物の価値を発信し、販路拡大に取り組むいご草を煮溶かし、よく練ったものを冷やし固めて作る。採れる場所や漁師によっていご草の質が異なるため、毎日配合を変えて作るという繊細な食品だ。「材料はいご草と水だけ。表示欄の原材料がひとつという食品はなかなかない。それは守っていきたい」と山内氏。黒蜜きなこを添えたものも商品化。抹茶スイーツのような味わいになる。株式会社早助屋 山内 三信 氏佐渡の食卓にいつもある島民が愛するソウルフード定番以外の食べ方も面白いいごねりをもっと楽しんでほしい介護食分野での可能性も大冷凍保存技術の進化に期待

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