NICOPress159
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SSERPOC■■■ IN伝統製法を守りながら味わいを進化させていく視点を忘れない 200年以上にわたって上越・高田で味噌づくりを手掛けている株式会社杉田味噌醸造場。上越地域伝統の「浮き糀みそ」を継承し、出来る限り添加物を使わない商品づくりを心がけている。その味は地元の人々、そして自社サイトの通販で購入する全国各地のお得意様に愛され続けている。 同社では味噌の製法や原材料へのこだわり、高田の町家に根付いている味噌と米糀の食文化についても情報発信している。杉田取締役は「私は15年前に入社して初めて、味噌汁にすると糀がふわりと浮く味噌がこの地域だけのものだと気づきました。浮き糀味噌は糀の作りがとても重要です。味噌の消費が減っている時代ですが、当社はこれだけ丁寧な味噌づくりをしている。それをPRしなければ、私共のような小さな蔵はさらに埋もれてしまうと感じ、力を入れるようになりました」と話す。 伝統の味を守りつつ、多様化するニーズにも応えるため、同社では糀の配合を多くした甘味噌、さっぱりとした淡麗な味噌、長期熟成の濃厚な味わいの味噌など、品目にバリエーションを持たせている。特に甘味噌は大手コンビニのおにぎりに採用されたり、うどんやラーメンなどの飲食店で使われるなど、業務用ニーズも広がっている。「この味噌を入れないと味が決まらない、と言っていただけることもあり、ありがたく思っています」。 また、直販の強みを活かした顧客へのアンケート結果では、新製品への期待も大きく、パウチ入りで使いやすい調味料や、鍋用などの用途別味噌、さらに味噌を使ったお菓子などの新しい商品が求められていることが分かった。 「新商品開発では上越・新潟の素材を活かすことを重視します。製品化は自社だけでは限界があるので、地域の食品メーカーさんとしっかりと連携しながら形にしています」。地元の菓子店の協力を得て、焼き菓子「雪の花スイーツ」を開発。他にも上越の粟飴を使った田楽味噌、雪室熟成味噌、佐渡産チーズの味噌漬けなども発売している。 最近、お客様から味噌や糀の使い方が知りたいという要望が増えてきたと話す杉田取締役。「地元のお客様に聞くと、皆さん上手な使い方をしていらっしゃいます。地域の皆さんが日ごろ何を召し上がっているのかを知り、上越・高田に伝わる食文化をヒントに活用法を提案することも大切だと感じています」。今後は味噌ソムリエ、発酵食エキスパートといった専門的視点からの提案も進めていく考えだ。■■定番の「雪の花みそ」のほか、味噌たまりを活用した新しい調味料も開発。スタッフが実際に活用している料理レシピも渡し、食卓利用を促している。■味噌の風味が上品に香る「雪の花スイーツ」は、クッキー、パイ、メレンゲの焼き菓子の3種類。北陸新幹線の開業に合わせて、上越市の菓心亭かまだと共同開発した。上越妙高駅では持ち運びやすさもありビジネスマンにも人気。「商品開発は、厳選した材料と確かな技術が良い味噌を醸す、という理念に沿って、できる限り添加物を使わない製品づくりを心がけています。商談会は勉強させていただく機会として参加しています。バイヤーさんに“商品はいいけれど棚がない”という話も伺います。それは一方で自分たちの主戦場はどこなのかを考える機会にもなります」と語る杉田取締役。町家の風情を残し、雁木の下に敷いていた石を配すなど、伝統を感じさせる店内。〒943-0832 上越市本町4丁目3-16 TEL.025-525-2512 FAX.025-523-6350URL http://www.sugita-miso.com/丁寧な仕込みによる糀作りから始まり、じっくり発酵熟成させる。ローターローター05特 集そこにしかできないものづくり“ここだけ”の価値を発信する取り組み株式会社杉田味噌醸造場 取締役 杉田 貴子 氏ポイント■手作り、無添加の伝統製法を守る ■多様な顧客ニーズを捉えて商品開発につなげる■地元地域の食習慣を掘り起こし、食文化を発信する上越独自の食文化という視点を大切に情報発信味噌のバリエーションを増やし一般客だけでなく業務用も拡大食品メーカーとのコラボで味噌の可能性を広げる

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