NICOPress159
3/12

SSERPOC IN ひとつの事例が、湯沢のかぐら南蛮味噌の「からいすけ」。魚沼地域は昔から各家庭でかぐら南蛮味噌を作っていますが、それが地元のお土産になっておらず、飲食店での提供もなかった。しかし、日常の食卓に並んでいるものを食べたいというのが今のニーズ。飲食店と宿の経営者が組んで商品化したことで、いまや代表的なお土産品に成長し、旅館でも活用が広がっています。 これからの商品開発の進め方は、「つなぐ、連携する、組み合わせる」というのがキーワードになります。地域の生産者、観光業、飲食店を巻き込み、各分野のステークホルダーが集まって、みんなが良くなるための戦略を立てていくことで、地域資源の魅力をもう一度引き出すことができると思います。地域をまきこんだ展開は発信力があるため注目されます。地域の商品が記事ネタにもなるでしょうし、SNSで拡散もする。観光と食がイコールになるということにつながります。 一方、地域で新しい商品・価値を育てていこうという場合にも、暮らしに根付かせていくストーリーを考え、時間をかけて宿も飲食店も一緒になって合意形成していくことが必要です。03生産者飲食店 事例として素晴らしいのは、糸魚川市の能生で誕生した鮭の魚醬の「最後の一滴」。海洋高校と水産加工業者さんが組んで生み出したものですが、消費者には糸魚川に鮭の文化があることが伝わり、地元ならではの調味料を高校生が作るということもロマンがあり応援したくなる。ジャンルで言えば、調味料はまだマーケットのニーズが高く、チャンスがある分野です。 今後の商品開発で気を付けなければいけない要素としては、まず安全・安心。NICOの「新潟うまいものセレクション会議」の審査のときも感じるのですが、食品添加物が多いものがあります。それでも随分減ってきましたが、保存期間を長くするためか、まだまだ添加物が多いと感じます。消費者の健康志向が高まる中で、食の安全を求めるようになり、流通関係者も添加物など原材料、生産者の栽培方法、クオリティ管理にも厳しくなってきています。 そして、これからの開発チャンスとしては、食事制限をしている人、アレルギーを持っている方に向けた商品があると思います。災害時、緊急時の避難所には赤ちゃん、老人、外国人が集まってきます。その方々に安心して提供できるメーカー製造者販売店商店街デザイナー・クリエイター観光業食事メニューや商品は、まだまだ市場性は高いといっていいでしょう。新潟は災害を乗り越えてきた経験があり、新潟ならではの提案、開発の可能性があると思います。 そして、販路開拓でアピールする際には、背景にあるストーリーや文化、歴史があってこその商品であることを伝えなければいけません。新潟うまいものセレクション会議でも、バイヤーは「この商品の新潟らしさは何ですか」と質問してきます。仕入れるバイヤーも、売る側として消費者に伝える“魅力”のことが一番知りたいのです。 一方で、地元の人以外には食べ方がわかりにくく、価値を伝えきれてないものもあります。販売においてはデザイナー、クリエイターと組んで、ビジュアルから食べ方まで発信方法を工夫することも必要です。 今の時代、単独で物を作って売り込むのはとても難しいです。その点でも、宿、飲食店、商店街、生産者がそれぞれの得意分野を活かしながら開発の段階から協力して、新しい食の提供を考える場を作るほうがいい。複数で知恵を絞り、連携することで“そこにしかないものづくり”が実現すると思います。特 集そこにしかできないものづくり食の安全・安心を求める声に応える地域の食卓を見直し、地域ならではのものを掘り起こすつなぐ連携する組み合わせる宿・飲食店で食べられるものと土産品に共通のコンセプトを持たせるそこにしかできない魅力を伝えていく価値を伝えるための発信方法を工夫する地域のステークホルダーが連携し地域資源を掘り起こしていくこと▶付加価値を 生み出すための視点より一層強くなってきている安全・安心な食を求める声

元のページ  ../index.html#3

このブックを見る