NICOプレス Vol.156
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「新潟の地酒を世界に」株式会社幻の酒事例インタビュー グローバルマーケットに挑戦する日本酒の輸出事業に挑戦創業時からの目標へ邁進するSSERPOC IN〒951-8131 新潟市中央区白山浦2-1-28TEL.025-378-2631 FAX.025-378-2632E-mail info@maboroshinosake.comURL https://maboroshinosake.org/ 松本 伸一 氏海外戦略室 執行役員 鶴巻 秀和 氏代表取締役 「最初にJETROの担当者から最低5年はかかると言われ、まだ全体売上の2%程度です。ようやく流れが生まれてきて、5年というのはその通りだなと感じています」と話す松本社長(写真右)と海外戦略室の鶴巻氏(写真左)。鶴巻氏は輸出業務の経験はなく、eラーニングなどを活用し独学で貿易実務を学んだ。06長岡の柏露酒造のスパークリング日本酒とのコラボで生まれた「HANABI」は、弾ける感覚と花火のイメージを重ねた、日本らしい商品として好評。5つの蔵の純米大吟醸を魚とのペアリングで提案した「GYOTAKU」。これまでEC事業で培ってきた蔵元との信頼関係で実現した商品。今年開催したベトナム・ハノイでの商談会の様子。海外での日本食ブームによって日本酒の需要も増加。アジア圏は甘め、欧州はドライなものも受け入れるなど、好みの傾向も分かってきたという。新潟の食品を求める声もあり、要望に合わせて手掛けていく予定。ポイント◆現地の市場調査や展示会に自ら足を運び、志向の傾向を把握◆地域に合わせた味、デザインを考慮したオリジナルブランドを展開◆公的支援を利用して展示会参加の機会を増やし、繰り返しアプローチする◆外国語の資料作成やSNSでの発信に留学生の力を活用中小規模の酒蔵の地酒を世界の市場へアピール 新潟県の地酒の魅力をより多くの人に広めようと、いち早くインターネット販売に特化し、蔵元とコラボした商品プロデュースで実績のある株式会社幻の酒。2014年から海外事業を開始し、現在は台湾、香港、イギリス、ベトナムと取引を行っている。 松本社長は、世界への挑戦は幻の酒の事業計画を作ったときからの目標だったと語る。「創業当初からキャッチフレーズは“新潟の地酒を世界に”。外貨を獲得し、新潟の経済に少しでも貢献していくことが、当社の使命です。また、大手は自力でも海外展開が可能ですが、中小規模の蔵元は難しい。その部分を当社がサポートしたいと考えています」。現地開催の展示会に参加し、より多くのバイヤーと交渉 まずは輸出の実績を作りたいと、展示会や商談会へ積極的に参加。2014年10月に新潟市が行った台湾での販売会をきっかけに、現地バイヤーへの間接輸出、2015年1月にはJETROの商談会でイギリスのバイヤーへ直接輸出を実現した。その後もNICOや銀行の支援制度を活用して、海外の展示会に次々と出展している。輸出取引が軌道に乗るまで資金面でも支援制度の利用が欠かせないという。 鶴巻氏は「現地に行った方がより多くのバイヤーと交渉できるし、市場調査もできるので効率がいいと感じます」と話す。貿易業務は未経験で勉強を続ける日々、最も苦労したのは価格の決め方。「最初の頃は、今考えるとありえないほど高い価格を付けていました。輸送費用などは、経験を重ねてみないと分からないことが多かったですね」。デザインやボトルの種類も海外向けを意識して改良 同社の戦略ポイントは、現地ニーズを調査し、訴求力を持ったオリジナル商品を展開していること。最近、評価が高いというスパークリング日本酒「HANABI」は、年内にも始まるシンガポールとの取引の決め手となった商品だ。また、ラベルデザインは日本らしさ、分かりやすさを意識。ボトルも欧州向けは青、中国では赤にするなど、各地域の好みに合わせている。 外国語資料の作成やSNSでの発信には、松本社長の母校でもある事業創造大学院大学の留学生の力を活用する。松本社長は「越境ECの準備も進めていて、2年後をめどにスタートさせる計画です。そのためにもブランド価値の向上のためのSNS発信などが重要になってくると考えています」と話す。今年中にはシンガポールのほか、ロシアとの取引も始まる見込みの同社。ここからの快進撃を期待したい。

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