NICOプレス Vol.155
3/12

特 集SSERPOC IN03 ひとつのデザインの金額を一括で払う、最初に3割払って成功したら残りを払う、ロイヤリティにする、コンサルタントとして通年契約するといったやり方もあります。JIDA&JAGDA(※2)が公表している平均的な料金体系を参考にするのもいいですし、複数のデザイナーに見積もりを取って比べるのもいいでしょう。デザイナーの仕事は造形だけに留まらない 最近は、デザイナーのファシリテーターとしての役割も注目されています。ファシリテーターとは、メンバーの意見を引き出したり、意見を統合したりする存在です。デザイナーは常に人の深層心理を読み解き、世の人が求めているものに想像を巡らせて発想し、問題を抽出、調整しています。そのデザイン思考からなる行動がファシリテーター能力を養っているわけです。 そして、デザイナーの大事な役割は、ビジョンを描く、可視化することです。経営者とデザイナーが一緒になって会社のビジョンを描いて提示し、見てもらうことで、それに関わる全ての人のベクトルが揃います。すると理解や進行が非常にスムーズになります。また、デザイナーポイントはプレゼンにも秀でている。経営者の皆さんにはそのことを理解していただき、デザイナーを経営のパートナーとしていくことで、より良いものが作り出せると思います。※1 デザインシンカーデザイナーが持つ「デザイン思考(Design Thinking)」の手法・発想などを学び、経営戦略の立案、商品開発のプロセスに活用する人員。デザイナーでなくても、デザイン思想をもとに課題解決に取り組む人を示す。※2 JIDA&JAGDA日本インダストリアルデザイナー協会並びに、日本グラフィックデザイナー協会いいモノをより魅力的にデザイナーと作り上げる商品イメージ各プロセスの検証を行き来することで、課題がより深く理解され、よりよい解決策が導き出される。STEP2STEP1STEP5STEP4STEP3DefineSTEP6デザイン思考の大切なポイントは、モノが使われる現場に行って、問題を抽出すること。生活者として入り込み、自分が体感し、その場の生活文化を探るエスノグラフィという問題発見の手法を用いる。アイデアを生み出す問題の解決に向けて柔軟で多様性に満ちたアイデアをできるだけ多く出し合い、創造的な解決策への幅を広げる。着眼点を定める共感の段階で明らかになったニーズや知見を整理・統合し、解決策への着眼点と具体的に取り組むべき課題を選び出す。深いニーズを知る観察・共感・洞察によって、人々が抱える本当の問題や本人も気づいていない欲求、価値観などを明らかにする。アイデアを試して評価するユーザーからのフィードバックによって、目標が達成できているかを検証し、解決策の再定義や改善などにつなげていく。アイデアを見える化するアイデアのイメージを共有化したり解決策に向けた対話を深めたりするために、見たり触ったりできるプロトタイプをつくる。解決策を生活に還元する解決策となるアイデアや知見を現実のものとするため、新たな価値を提供する製品、装備、サービス等として具現化する。Design Thinkingデザイナーやデザインの価値を正当に評価し、活用してほしい 経営者のなかには、デザインにかける費用対効果を疑っている人も多いでしょう。デザイン画一枚に、なぜこんな大金がかかるのかとおっしゃる方もいると思いますが、知の価値とはそういうものです。そのプランに至るまでに、いろいろな試行錯誤がある。その埋もれているところを見てほしい。デザイナーからの提示物はまさに氷山の一角なのです。 また、デザイナーにも得意分野があるので、依頼するときは過去の実績や評判を参考にし、一度会社等で話し合いを持ち、協力していけるかどうかを判断します。デザイナーに相談するときは、お互いに腹を割って、隠し事をしないこと。強み、弱み、歴史、理念など全てをさらけ出すことで、そこから良いものが導き出せます。 ダメなのはデザイナーに任せるという感覚です。デザイナーに決めてもらうのではない。デザイナーの仕事はあくまでもクライアントに選択肢を提案することで、決めるのは企業側です。  費用の支払い方もいろいろあります。■デザイナーに頼むのではなく、選択肢を提案してもらうという本質を忘れない。問題定義共 感Empathize試 作Prototype創 造Ideate実 装Implement検 証TestPOINT■商品開発は初期段階からデザイナーを加えて取り組む。■経営者はじめ、社員、エンジニアなどもデザイン思考を学ぶことは重要。デザインシンカーのチームとデザイナーでプロジェクトを検討する。デザイン思考6つのステップ

元のページ  ../index.html#3

このブックを見る